共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

大きなお世話

2013年08月16日 13時30分10秒 | 日記
ここ最近、いろんな意味で話題のジブリ最新作《風立ちぬ》ですが、あるニュースサイトで『日本禁煙学会』なる団体が《風立ちぬ》の制作担当者宛てに要望書を送付したとありました。作品の中で喫煙シーンが多いことについて、かの団体から苦言が呈されたということです。

これによると、作品中で大学の教室内や就職後の職場内、高級リゾートホテルのレストラン等での様々なシーンでの喫煙場面が、日本を含めた世界177か国以上が批准している『タバコ規制枠組み条約』なるものの条項に違反しているとし、大学内のシーンで友人から「タバコくれ」といって喫煙する場面は未成年者の喫煙を助長し、惹いては未成年者喫煙防止法にも抵触するものであるから、法令を遵守した作品作りに留意せよ…というのです。特に、肺結核を患っている妻の菜穂子の手を握りながらの喫煙描写に至っては、明確に『問題です』と断罪しています。

一つだけはっきりと言えるのは、この映画を観に行ったこの会員さんは¥1,800払って、上映中ず~っと目を皿のようにして「どんな喫煙シーンがあるか」ということだけをチェックし続けて憤慨し続けていた…ということです。そんなことに2時間以上ず~っと目くじらをたてていた方が、よっぽど体に悪そうですが…御苦労様なことです((^皿^))。

私は筋金入りの嫌煙者ですが、敢えて意見させて頂けるなら「日本国民はお前さん方が勝手に憂慮するほどバカじゃないよ」ということです。

仮にこの人たちがこの考え方をもって過去のジブリ作品を洗い直したら、彼らは間違いなく「ジブリ作品を発禁にせよ!」と言い出しかねません。《天空の城ラピュタ》のドーラ、《耳をすませば》の主人公月島雫のお父さん、《千と千尋の神隠し》の湯婆婆、《ハウルの動く城》の荒地の魔女…作品内での喫煙シーンは、それこそ『枚挙にいとまがありません』。しかし、これらの作品が世に出た後で、未成年者の喫煙率が飛躍的に高まった事実でもあるというのでしょうか?少なくとも、あの映画に大学校内の喫煙シーンがあったからって、それで免罪符を得たかの如くこぞって喫煙しだすほど、今の子供たちはバカじゃありません。

第一、あの映画の舞台は第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時代が中心なのであって、そこに21世紀に降ってわいたような『喫煙悪』の概念を持ち込むこと自体がナンセンスです。

勿論体にいいことはありませんが、喫煙は古来より『文化』の一端として熟成されてきた歴史があります。日本でも、特に江戸時代に入ってからは『粋』を表現するアイテムとして、趣向の凝らされた煙管や煙草入れや根付等が作られて今でも国内外で高く評価されていますし、歌舞伎十八番の《助六由縁江戸櫻》では、花道から颯爽と三浦屋に登場した助六に居合わせた花魁衆から『吸い点け煙草』が次々と贈られ、その場にいたライバルの髭の意休がモテっぷりを見せつけられて内心歯噛みするというシーンは、劇中の名場面の一つです。その『文化』に、昨今声高に言われ始めた『グローバルスタンダート』などという薄っぺらい概念で切り込もうというのは、かつてこの薄っぺらな横文字を錦の御旗にして執拗に大相撲の土俵に登りたがった某女官房長官や某女大阪府知事と同レベルの愚行です。

とかく人間は「自分は正しい」と思い込むことで自己のアイデンティティーを確立しようとするものですが、自己主張するには一度深呼吸をして、言いたいことを胃の腑に落として「本当か?」と自問してからの方がいいようです。

まあ、そうはいっても、今後私自身が喫煙を容認する気もさらさら無いのに違いはありませんが…。


因みにこのニュースが配信されて以降、かの学会には非喫煙者からも「的外れ」「偏見」といった意見が殺到して、サイトが炎上状態になっているのだそうです。

日本禁煙学会
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