共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

オペラ鑑賞記 《エルナーニ》編

2012年04月30日 14時28分11秒 | 音楽
さて、今日はまた健全に引きこもろうと思います。

今日もヴェルディを選んでみました。ただ、今日は悲劇です。彼の5作目のオペラ《エルナーニ》です。例によってストーリー的なものはウィキペディア他でチェックして下さい。

それほどDVDは出ていないと思いますが、私が選んだのは1982年 ミラノ・スカラ座の公演を収録したものです。
(ワーナー・ミュージック・ジャパン WPBSー90094)


エルナーニ…プラシド・ドミンゴ

ドンナ・エルヴィーラ…ミレッラ・フレーニ

ドン・カルロ…レナート・ブルソン

ドン・ルイ・デ・シルヴァ…ニコライ・ギャウロフ

ヤーゴ…アルフレード・ジャコモッティ

ジョヴァンナ…ヨランダ・ミキエリ

ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団・合唱団

指揮…リッカルド・ムーティ

演出…ルカ・ロンコーニ

美術…フランカ・スカルチアピーノ

映像監督…プレベン・モンテル


こちらも豪華キャストです。今ではバリトンの役を歌うほどくたびれてしまっています(まあデビューはバリトンがったらしいので問題ないのかも知れませんが…)が、さすがに1982年当時、若さ溢れるエルナーニ役のドミンゴが登場します。第1幕第1場のアリア《色褪せた花の茂みの露のように》を歌いあげる場面は「カッコイイ!」の一言です。

ドンナ・エルヴィーラ役のフレーニはやっぱり可愛らしいです。エルナーニ、ドン・カルロ、シルヴァの3人から愛される役柄ですから、このくらい可愛くないと…。第1幕第2場のアリア《エルナーニ、私を奪って逃げて》から最終場面に至るまで、歌手としてピークを迎えたフレーニが美声を存分に聴かせてくれます。

ドン・カルロ役のブルソンは、《ファルスタッフ》とは全然違う(当たり前だろっ)存在感です。かつて《椿姫》のジェルモンを観たことがありますが、やっぱりヴェルディにはこういう深い声のバリトンが必要不可欠です。特に第3幕《若き日々よ》を深く歌い上げた後、神聖ローマ帝国皇帝の姿で再び登場した時の堂々たる佇まいは圧巻です。

シルヴァ役は敵ながらあくまでも貴族ですから、ただの嫌なオヤジではダメなわけですが、ギャウロフにその心配は無用です。私が初めて生で観たオペラのはヴェルディの《ドン・カルロ》で、その時にスペイン国王フィリッポ2世を歌ったのがギャウロフでした。その気品高い姿に感動しましたが、この映像でもその気品ある敵役を演じています。

そして、特に前半期のヴェルディのオペラで忘れてならないのが合唱の魅力です。ヴェルディの生きた時代、イタリアは今のような国ではなく多数の小国に分かれ、一部はオーストリアの支配下にありました(かの皇妃エリザベートもオーストリア統治下の北イタリアを訪れています)。そこから脱却して再統一と独立の気運が高まる中、ヴェルディのオペラが熱い支持を受けた要因の一つに、作品に挿入された愛国的な合唱曲の素晴らしさがありますが、この《エルナーニ》にも、第3幕でドン・カルロに反旗を翻す一党が歌う《カスティーリャの獅子よ、目を覚ませ》という男性合唱曲があります。日本ではあまり有名ではありませんが、イタリアでは高い人気を集める合唱曲の一つです。

ムーティはこの当時41歳、指揮者としてはまだ若手と言えるですが、その若さを遺憾無く発揮していて、情熱に溢れつつも、盛期イタリアオペラらしいすっきりとした音楽構築は、ムーティの面目躍如といったところでしょうか。

日本ではあまり上演されることのない演目ですが、卓越したメロディーメーカー、ヴェルディならではの音楽的魅力が満載のオペラです。

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