共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はリヒャルト・シュトラウスの誕生日〜アーリーン・オージェの美唱による《Morgen!》

2022年06月11日 16時00分35秒 | 音楽
今日は曇りがちなこともあって、そこそこ涼しい陽気となりました。今日は神奈川県では雨こそ降らなかったものの、それでもニュースで九州が梅雨入りしたという発表もありましたから、これから本格的な雨の季節となることは覚悟しなければいけないようです。

ところで、今日6月11日はリヒャルト・シュトラウスの誕生日です。



リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)はドイツ後期ロマン派を代表する作曲家・指揮者です。

1864年の今日ミュンヘンに生まれたリヒャルト・シュトラウスは、ミュンヘン宮廷歌劇場のホルン奏者である父の影響で幼い頃から音楽の英才教育を受けて育ちました。ヴァーグナーに心酔し、20歳代から実験的な作品を次々と発表したリヒャルト・シュトラウスでしたが、当時はそのテーマや手法の斬新さから聴衆から批判を浴びることも少なくありませんでした。

しかしリヒャルト・シュトラウス自身は

「真の芸術ほど最初は理解されないものだ」

と語り、

「音楽で表現できないものはない」

と、管弦楽の音だけによって日常から哲学の世界までをも描くことに挑戦し続けました。代表作の一つである交響曲《ツァラトゥストラはこう語った(かく語りき)》(1896年初演)は自身の持つ作曲技法を駆使し、哲学者ニーチェの思想の表現に挑んだ作品です(この曲は映画『2001年宇宙の旅』のテーマにも使われていますから、ご存知の方も多いかと思います)。

その後、オペラや交響詩、歌曲など多くの分野で傑作を生み出し、ヴァーグナーの後継者としてドイツ音楽界の頂点に君臨しました。その中でも歌劇《サロメ》(1905年初演)や《エレクトラ》(1909年初演)は斬新なストーリーと不協和音を使った音楽による過激な作品であり、一方で《薔薇の騎士》(1911年初演)や《ナクソス島のアリアドネ》(1912年初演)は後期ロマン派の様式で、オペラを総合芸術にまで高めた作品といわれています。

1920年代に『時事オペラ』と呼ばれる普通の市民の日常生活を描くジャンルが生まれると、他愛ない夫婦げんかをテーマにした《インテルメッツォ》(1924年初演)を作曲しました。また、無声映画時代の始まりと共に多くのオペラ映画が作られるようになると、1926年に製作された映画《薔薇の騎士》に合わせて映画用の編曲を行うなど、時代の変化にも柔軟かつ巧みに応じてきました。

また、リヒャルト・シュトラウスは同時代の作曲家グスタフ・マーラー(1860〜1911)と同様に指揮者としても、当時のドイツ最大のカリスマの一人として活躍しました。バイエルン国立歌劇場音楽総監督(1894~1896年)、ベルリン国立歌劇場音楽総監督(1899~1913年)、ウィーン国立歌劇場芸術最高監督(1919~1924年)などの要職を務め、その音楽性は指揮者を務めたベルリン・フィルやウィーン・フィルなど名門オーケストラを通じて現代にまで受け継がれています。

リヒャルト・シュトラウスと第1次世界大戦後のナチス政権との関わりについては様々な見方がありますが、第2次世界大戦終結後の非ナチ化裁判では最終的に無罪となりました。晩年はドイツのガルミッシュ・パルテンキルヒェンで過ごし、歌劇《カプリッチョ》(1942年初演)や《四つの最後の歌》(1950年初演)などの作品を残しました。

さて、歌曲の分野に多くの名曲を遺したリヒャルト・シュトラウスですが、中でも私が個人的に好きなのが《Morgen!》(明日)という曲です。

《Morgen!》は、新婚の妻パウリーネのために書かれたと伝えられる《4つの歌曲》作品27の締めくくりに位置する曲です。リヒャルト・シュトラウスの歌曲の中でも特にロマンティックなものの一つとされ、知名度も高い作品となっています。



Morgen!(明日!)

Und morgen wird die Sonne wieder scheinen,
und auf dem Wege, den ich gehen werde,
wird uns, die Glücklichen, sie wieder einen
inmitten dieser sonnenatmenden Erde…

そして明日、太陽はまた輝くだろう
僕が行く道で、再び僕たちは出会い
幸せになる
この太陽の輝きにみちた大地で…

Und zu dem Strand, dem weiten, wogenblauen,
werden wir still und langsam niedersteigen,
Stumm werden wir uns in die Augen schauen,
und auf uns sinkt des Glückes stummes Schweigen…

そして広く、青い岸辺に
僕たちはしずかにゆっくりと降りていく
僕たちは沈黙のなかで
お互いの目を見つめる
そして、ただ幸せだけが僕たちをつつみこむ…



というジョン・ヘンリー・マッケイ (1864〜1933)によるテクストは、希望に満ちた愛の詩です。他のいくつかの歌曲同様、この曲にも作曲者自身による管弦楽編曲版があり、そこでは一貫してアルペジオをハープが、主旋律を独奏ヴァイオリンが受け持っています。

そんなわけで、リヒャルト・シュトラウスの誕生日である今日はその《Morgen!》の演奏動画を載せてみました。アーリーン・オージェによる、この上なく美しいソプラノ独唱で御堪能ください。




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