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共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

クルディスタン・タンブールワークショップ

2020年02月01日 23時58分00秒 | 音楽

今日から2月です。

そんなわけで(?)今日は笹塚まで来ました。こちらで、先日高円寺での口琴とドゥタールのライブ会場でお知り合いになった方がクルディスタン・タンブールのワークショップを開催されるということで、大変興味深かったので参加させて頂くことにしました。
タンブールと称される弦楽器は、現在のトルコ、イラン、イラク、シリアといった地域から、広く中央アジア各地に分布しています。今回演奏するクルディスタン・タンブールは、先日高円寺で聴いた


タジキスタンのパミール・タンブールとはまた違ったタンブールです。



スマホのカメラでは遂に写しきれなかったのですが弦は3本で、上の写真でネックの右寄りに辛うじて写った白い2本の筋のようなものが1コース(同じ音程で張られた並行するニ本一組の弦)の鋼鉄弦で、ドレミファソラシドで言うところのソの音にチューニングされています。そして写真には全く写せなかったのですが、実はネックの左寄りにも1本、大変細いブロンズ弦が張られていて、こちらはドレミのドの音にチューニングされています。このチューニングはドとソの他に、曲によってはレとラにチューニングされることもあるそうです。

ネックには弦を巻き付けて着けられたフレットがあり、この近くを指で押さえて音を変えます。このあたりはギターとよく似たシステムです。

これを膝に置いて横向きに構え、



右手で掻き鳴らします。上から弾き降ろすダウンストロークが基本的で、その際には右手の小指から人差し指までを使って鳴らします。弾き上げるアップストロークもありますが、その際には人差し指の爪横の腹を使って柔しく鳴らすのが基本です。

左手は基本的にネックに親指を添えて、人差し指から薬指を使って鋼鉄弦を押さえます。ブロンズ弦は基本的にはドローン(執拗低音)弦の役割ですが、状況に応じて親指で上から押さえて音高を変える場合もあります。

構造としては比較的シンプルなこの楽器は4000年からの歴史を誇り、クルド人の文化圏では主に宗教的儀式や神秘道場といったところで演奏されることが多いそうです。今回のワークショップの講師である北川修一氏は2007年から2018年までをイランで過ごされ、テヘラン大学を卒業後、現地の巨匠と呼ばれる奏者の元で研鑽を積まれ、マカームと呼ばれる古い儀礼的な音楽体型を学んで来られた方です。
今回は2部形式でのワークショップとなり、第1部では神秘道場等に古くから伝わる古曲が課題となりました。

講師の参考演奏による短いフレーズを参加者が続けて模倣するという、伝統芸能によくある口伝的な方法での習得となりました。個人的にはネックがギターよりも圧倒的に細目なのと弦のテンションがとても柔らかいのとで、手が小さく指がチンチクリンな私でも比較的楽に演奏することができます。メロディもシンプルなものでしたので、口伝でもどうにか耳で聴きながらついていくことができました。

フレーズ毎に参加者一人ずつ実演するのですが、ここでちょっと意外なことに気づきました。

今回のワークショップにはギターやドゥタールの心得のある方が何人かいらっしゃいました。私はギターは弾けないので苦戦するだろうと覚悟していたのですが、いざ始めてみると、実はギターやドゥタールの心得のある方たちの方が苦戦しておられたのです。

タンブールの実器を演奏してみて分かったのですが、特に左手の親指の置き方やポジション移動のやり方がヴァイオリンと全く同じではないものの近いものがあり、それが腑に落ちてからは割とスムーズに演奏することが出来ました。対してギターの心得のある方はどこかギター的な弾き方になってしまい、その癖ゆえになかなか苦心されていたように見受けられたのです。これは意外なことでした。

ただ、親指でドローン弦を押さえるという段になるとヴァイオリンにはそんな技が無いためかなりアタフタしてしまったのですが、逆にこうした技はギターの心得のある方たちの方がお上手でした(汗)。

休憩を挟んで第2部では、クルド人文化圏では有名な『Yavaran』という民謡をテキストに採り上げてのワークショップとなりました。こちらのメロディも至ってシンプルなもので、一部フレーズの長いところはちょっと大変でしたが、それでも北川氏による分かりやすい解説もあって、最終的には全員一通り曲をなぞれるようになりました。

第2部には



ワークショップにも参加された青木賢治氏によるイランの打楽器トンバクも入って、かなり本格的な雰囲気に包まれました。

ワークショップの最後には北川氏と青木氏による『Yavaran』の即興演奏が行われ、大いに盛り上がって終了となりました。

イランは現在、アメリカとの関係悪化やシリア情勢等も絡んで、渡航禁止令が発令されてしまうような状況下にあります。それでも、こうした美しい音楽文化が育まれてきた彼等の社会に、一日も早く平和で安定した状況が訪れることを願って止みません。タンブールという楽器を手にしたことによって、そんな思いも新たにしたのでありました。

最後に、デモンストレーションとして北川修一氏のクルディスタン・タンブールと青木賢治氏のトンバクとで演奏された《Yavaran》の動画を載せました。本格的なセッションをお楽しみください。



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