今日も神奈川県は、なかなかの暑さとなりました。昨今は朝晩に秋の気配を感じるようになっているものの、それでも日中は暑いことに違いはありません。
ところで、今日8月31日はヨハン・シュトラウス1世作曲の《ラデツキー行進曲》が初演された日です。
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(ピアノリダクション版の初版表紙)
《ラデツキー行進曲》作品228はヨハン・シュトラウス1世の最高作といわれるだけでなく、クラシック音楽全体でみても有数の人気曲です。1848年革命の最中に、当時オーストリア帝国領であった北イタリアの独立運動を鎮圧したヨーゼフ・ラデツキー将軍(1766〜1858)を称えて作曲されました。
この当時イタリア半島では民族統一運動が盛んで、オーストリア帝国領であった北イタリアでは「ドイツ民族からの独立」を目指して激しい闘争が繰り広げられていました。しかし1848年7月、ヨーゼフ・ラデツキー将軍の率いるオーストリア陸軍がその闘争の鎮圧に成功しました。
この勝利を記念するために、「イタリアで戦った勇敢なる将兵の賞賛と傷病兵への募金を兼ね、寓意的、象徴的表現と格別な啓蒙を意図した大勝利感謝祭」が8月31日に開かれることとなりました。この祝典のために新曲を依頼されて
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作曲に取りかかったヨハン・シュトラウス1世(1804〜1849)は、ウィーンの民謡を2つ採り入れて、わずか2時間でこの名曲を完成させたといわれています。
初演は大変な好評を博し、この行進曲のおかげで政府軍の士気は大いに高揚したことで、のちに政府側の人々から
「 1848年革命からウィーンを救ったのは、間違いなくヨハン・シュトラウスである。 」
とまで言われました。そして、それまではワルツ《ローレライ=ラインの調べ》(作品154)がシュトラウスの代表作とみられていましたが、この《ラデツキー行進曲》が初演されるや、それまでの既存のシュトラウス作品の影をことごとく薄くしてしまったのでした。
以降この曲は、様々なコンサートでのアンコールピースとして演奏されるようになりました。その中でも特に有名なのが、毎年元日に開催されるウィーンフィル・ニューイヤーコンサートのアンコールでの演奏です。
ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでは、毎年様々な指揮者が登壇してワルツやポルカが演奏されます。そして毎年大トリとして《ラデツキー行進曲》が演奏され、観客たちの手拍子とともに盛り上がってコンサートを締めくくります。
この手拍子は作曲当初からあった習慣ではなく、かつてウィーン・フィルのコンサートマスターも務めながら指揮活動もしていたウィリー・ボスコフスキー(1909〜1991)が始めたものといわれています。今や観客たちの手拍子はこの名曲の演奏の一部として欠かせないものとなっていて、指揮者が率先して観客の方を向いて指揮して手拍子を促したりもしています。
そんなわけで、今日はヨハン・シュトラウス1世の代表作《ラデツキー行進曲》をお聴きいただきたいと思います。コロナ禍中の2019年に他界してしまったマリス・ヤンソンス指揮による、2006年のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートのアンコールでの演奏でお楽しみください。