ヨハン・バプティスト・ヨーゼフ・マクシミリアン・レーガー(1873〜1916)は、ドイツの作曲家・オルガン奏者・ピアニスト・指揮者・音楽教師です。とりわけオルガン曲、歌曲、合唱曲、ピアノ曲、室内楽曲の分野で多くの作品を残していて、後期ロマン派の代表的な作曲家の一人として位置づけられています。
そんなレーガーの祥月命日である今日は《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》をご紹介しようと思います。
《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ 作品132》は、マックス・レーガーが作曲した管弦楽曲です。後の1915年にレーガー自身の手によって四手ピアノ曲、あるいは二台ピアノ曲(作品132a)に編曲もされました。
この作品は
モーツァルトの《ピアノソナタ第11番(トルコ行進曲付き)》の第1楽章から主題を取った変奏曲で、1914年4月から7月にかけて書かれました。初演は同年10月に行われる予定でしたが、第一次世界大戦の勃発のために延期になってしまい、翌1915年1月8日にヴィースバーデンでレーガーの指揮によって行われました。
レーガーは作品の性格を
「気品に満ちて、俗世の苦しみから解き放たれている」
と述べていて、作曲にあたっては当時の音楽界の「混乱」、同時代人たちの作品の「不自然さ、奇妙さ、奇抜さ」への対抗の宣言という意図があったといいます。おびただしいレーガーの作品のなかでも、明快さと高い完成度を持つ代表作とされています。
初演直後から様々なオーケストラのプログラムに取り上げられ、現在でも演奏機会の多いレーガー作品となっています。日本でも早くから紹介され、1929年(昭和4年)に近衞秀麿(1898〜1973)の指揮する新交響楽団(NHK交響楽団の前身)で初演されています。
聴いてみると分かるのですが、始めのうちはモーツァルトのメロディに基づいた曲であることが分かります。しかし第2変奏になったあたりから、20世紀に足を突っ込んだレーガーらしい音楽が展開されていきます。
マックス・レーガーは自身をドイツ3大B〜バッハ、ベートーヴェン ブラームス〜の系譜にある作曲家だと豪語していました。しかし実際にはどちらかと言うとリストやヴァーグナー、リヒャルト・シュトラウスといった20世紀の作曲家のような楽曲展開が特徴的で、この作品の最後のフーガの主題に至ってはマーラーの角笛交響曲のようなコケティッシュさすら感じさせます。