共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

稲城市民オペラ『オペラティックコンサート』

2021年12月23日 22時45分10秒 | 音楽
今日は午後から東京都稲城市に出かけました。今日は、夏に歌劇《愛の妙薬》を上演した稲城市民オペラによる



ヴェルディの歌劇《椿姫》とプッチーニの歌劇《蝶々夫人》をとり上げた『オペラティックコンサート』という公演がありました。

今回の公演は、小説が原作となっている歌劇である《椿姫》と《蝶々夫人》から名場面をピックアップして上演するというものですが、ただ演奏するだけではなく衣装を身に着けたり舞台上にセットを置いたりといった、本編さながらの本格的なものでした。しかも今回は



稲城市民オペラとしては初のフルオーケストラでの公演という、なかなかの豪華版となりました。

開演に先立って、稲城市民オペラのこれまでの活動に対して『小さな親切運動』という組織から表彰されることとなり、





代表者に表彰状が授与されました。その後、先ず《椿姫》のための準備が進められ



舞台上にパリのサロンの描き割と椅子が一脚用意されました。至ってシンプルな舞台ですが、ここに照明が当たって衣装を着けたソリストや合唱が登場すると一気にオペラの世界観が広がるから不思議です。

華やかな『乾杯の歌』から始まった《椿姫》の舞台は、演出家による解説を交えながら

●第1幕のヴィオレッタのアリア『ああ、そはかの人か〜花から花へ』
●アルフレードの父ジェルモンのアリア『プロヴァンスの海と陸を』
●第3幕のクライマックス
●終幕の二重唱『パリを離れて』
●ヴィオレッタとジェルモンとの再会からヴィオレッタの死までを描くフィナーレ

と進んでいきました。かなりの摘み食い状態なのにもかかわらず、照明を駆使した演出とオーケストラサウンドとが相俟ってまるで本編を観ているような充実した舞台で、カーテンコールでは







会場から惜しみない拍手が贈られていました。

その後20分間の休憩の間に、次の《蝶々夫人》の舞台の準備が進められました。先程パリのサロンが設えられていた舞台には



二張りの障子が登場し、そこに青い照明が当てられて、長崎の海を臨む蝶々さんの高台の家の雰囲気をかもし出していました。

《蝶々夫人》の舞台は第1幕のピンカートンとシャープレスの二重唱から蝶々さんたちの登場までの場面から始まって、演出家による解説を交えながら

●第1幕の蝶々さんとピンカートンの『愛の二重唱』
●第2幕の蝶々さんのアリア『ある晴れた日に』
●終幕のピンカートンのアリア『さらば愛の家よ』
●蝶々さんのアリア『かわいい坊や』からのフィナーレ

と進んでいきました。最後に蝶々さんが子どもを残して自害する場面では障子の向こうへ蝶々さんが進んで暗幕の向こう側へ消えていき、誰もいなくなった舞台上に蝶々さんの死を暗示するように桜の花弁が散り落ちてくる中、ピンカートンの

「バタフライ!バタフライ!バタフライ!」

という悲痛な叫びが響くという哀しくも美しい演出がなされ、中には涙を流している観客もいました。

カーテンコールでは



蝶々さんをはじめとしたキャストたちに、会場から暖かな拍手が贈られました。

その後《椿姫》のキャストたちも舞台上に登場すると、アンコールとしてイタリア第2の国歌とも言われるヴェルディの歌劇《ナブッコ》の『行け我が思いよ、金色の翼にのって』が演奏され、



感動的な雰囲気が会場を包みました。更に喜歌劇《こうもり》のご陽気な『シャンパンの歌』が歌われて



大いに盛り上がって終演となり、最後には



指揮者や演出家も舞台上に登場し、会場は拍手に包まれていました。

今までの少人数アンサンブルでのオペラ公演も素晴らしかったのですが、やはりフルオーケストラサウンドでのオペラは格別です。聴いているうちに、かつて自分も身を置いていたオペラのオーケストラの響きが羨ましくて涙が溢れてきてしまいました。

因みに、今回の公演が《椿姫》と《蝶々夫人》ということで、プログラムには



椿の花に留まる蝶々がデザインされていました。こうしたお洒落な工夫も、心憎い演出のひとつとして効いています。

次回以降も、稲城市民オペラは様々な企画を用意しているようです。どんな舞台が観られるのか、今から楽しみです。

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