曽我清臣さんと広川明人さんの描く時間と空間の妙に魅せられて

曽我清臣さんの「ある日の情景」。

縁の下には、大きな木片が顔を出しています。
軒下には、玉葱がいくつも吊されています。
左手前に大きく描かれた坊やはしゃがみこんで、一心にバケツの水の中を覗き込んでいます。
右手奥には、この家の玄関に入ろうかというお母さんが乳飲み子を背負って立っています。
坊やはおそらく画家自身の幼いころなのでしょう、幻想的な時間がゆっくりと回る音がなんとも言いえぬ感覚を見る者に与えます。

広川明人さんの「向日葵」。

まだ幼さが残る女の子が、脚を投げ出し立派な肘掛が付いた椅子に座っています。
読みかけの頁を開いて、肘掛にうつぶせに置かれた本。
窓辺の白いカーテン越しの光が作り出す世界。
女の子の手足の血管に凝縮された細密な描写が紡ぐ時と空気は、どこまでも優しく柔らかです。

第７７回一水会名古屋展は、今日まで愛知県美術館で開催されました。