のしてんてん ハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

意識を砥ぐ

2016-08-26 | 5次元宇宙に生きる(一人旅通信)

目覚めとともに、意識が動き出す

その意識を、どれだけ真剣に眺めていられるだろう。

次の眠りが来るまで

意識はいっときも途切れることなく私の中を照らし続けている。

人には言えない恥ずかしいことや、自分で見たくないようなことですら、

意識は容赦なく照らし出して私に見せるのだ。

つまり意識は

自分の思い通りにはならない。

これは一体何を意味するのだろう。

 

それを理解するための実験がある。

自らの身体を実験台にして

意識を探求する

その結果は次回に報告しましょう。

 

意識に気付くこと、

これが第一のステップだ。

 

 

 

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この宇宙、なにを知りうる?想像力の果て

2016-08-25 | 5次元宇宙に生きる(一人旅通信)

想像力は尊く、唯一の知る力だ

想像力がなければ、誰もけっして人を理解することは出来ない。

愛は想像力だ

そして己もまた想像力なのだ。

なぜ?私が私に問いかける

理由は単純だ。

なぜなら、吾は空だから。

それ以外のいかなる理由も、説明も見当たらない。

 

もので愛を語れない

ものでしあわせを語れない

ものでいのちは語れない

 

しかし哀れにも、ものに幻想を持つかつての私は

いつかしあわせになろうと考えた。

正しいもののあり方があって、そうなろうと努力してきた。

だがその努力は必ず破綻する。

世界中に知れ渡る成功者とて破たんはまぬかれない。

死はすべてを消し去る。

もので死さえ語れない。

 

それでもお前は、ものにしがみつくか

それでも空に己を開け渡せないのか

己を知らず苦悩を味わい尽くすか

空に主人公の座を明け渡すか

その答えは、意識を砥ぎ澄ませるものにしか見えない。

 

吾は空なり

五次元宇宙の一人旅はつづく

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現代美術の視点(美術展)台風の中オープン

2016-08-24 | 展覧会

(現代美術作家31名の競演)

全国各地に散らばっている、ほぼ同年代の作家たち。作風も、所属(身の置き方)もまちまちの中で、もの作りというたった一本の糸だけでつながった、集団です。

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やっと私の行動日程が決まりました。強行軍です。

8月21日、出品作品を携え、夜行バスにて東京入り

8月22日、早朝着。会場に直行。展示作業に参加。午前中に会場を整え、午後一時オープン。

その後、接客。オープニングパーティ参加して、新幹線に飛び乗り、その日に帰宅。

ということで、私は22日だけ、会場におります。

参加作品。F10号二枚組作品   のしてんてん「歩む」

東京の方、気が向いたらお越し下さい。私の作品は写真写りが悪いので、是非実物をご覧ください。きっと写真にはない気を感じて頂けるのではと思っております。 北籔和 拝

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22日、夜行バスの私が一番乗り。

ところが台風のため、飛行機が軒並み運休、作品搬送の業者も遅れ、人、作品、共に昼過ぎまでそろわないという幕開け。

結局、オープンの時間を割り込んで作品展示完了となりました。

 

 

この日集まった作家集団(私はカメラの後ろ)。

次回は四年後、東京オリンピックに合わせ、文化部門として参加するという提案も発表され、ました。パーティには、シャンソン歌手の黒川泰子さんも来られ、アカペラ二曲生で歌ってもらいました。

 

台風情報が飛び交う中、パーティも終わるころには、空も静かになり。私は予定通り、二次会の誘いを断って、東京駅に直行。

午前様で帰宅。

23日、午前中、妻とボーリング講習に参加(アベレージ70のお粗末)して、午後大阪上六、シャンソン喫茶ガットネロでの個展(小品展)の飾り付けのため車で市内入り。

22日の30人の作家作品を展示する煩雑さに比べ、何ともスムーズに、完了しました。

 

 

帰宅後、なんだか荒波を超えてきたスケール号の隊員のようにぐったり、至福の惰眠を楽しみました。

 

 

  

 

 

 

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スケール号の冒険(ご愛読ありがとうございました)

2016-08-23 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

7月7日七夕の日から、連載してまいりました、スケール号の冒険第4話は、38回で終了となりました。

長いあいだご愛読いただきましてありがとうございました。深く御礼申し上げます。

 

スケール号の冒険は、のしてんてん系宇宙(五次元)の解説として、書いたものです。全4話からなり、3話、4話を公開いたしました。

(1話、2話は、物語の舞台を設定するための作品で、特に五次元を正面からとらえたものではありませんので、割愛しております。)

 

今回ひと月あまりの連載でしたが、旧作(10年ほど前)をそのまま転用するつもりで気軽に始めたのですが、私の思考が変化しており、随分書き換えを要することになりました。

PCの前で、一日―時間は費やすことになってしまい、とにかくスケール号を地球に帰還させることが出来てホットしております。

私の思索の大きな変化は、「吾は空なり」という意識の到達でした。

これは、スケール号連載のあいだに起こった覚醒でした。

童話(作り話)という意識で書き進めましたが、私の意識はいつの間にかスケール号の一員となって、己の苦悩を見つめていたのだと、今あらためて気づきました。

この心の領域は、五次元という新たな概念がもたらすもので、新たな世界認識の基礎となるだろうと、今は確信しております。

スケール号の冒険、エピローグは、そのために新たに書きくわえた部分として、お読みくだされば幸いです。

物語でもお気付きのように、五次元は四次元から飛躍的に認識世界を広げてくれます。そしてこの度、より強く思いましたのは、五次元は、空間に対する意識を、根底から変えてくれる効用があるということです。

五次元は元より宗教ではありません。

時間軸と同じ座標にあるスケール軸という純粋な世界認識の概念(道具)なのです。

 

スケール号の冒険は、このスケール軸を、タイムマシンならぬスケール号で旅し、スケール軸から見た世界を可視的に描いたものです。

そしてそこから見えてきたのは、実のところそこは、宗教の提案する世界に等しいのではないかという思いでした。

私は宗教に詳しくはありませんが、己を生きるという、ただそれだけの思いから行き着いた五次元が、どうやら釈迦の生きた世界と相似ではないかと思えるのです。

もしかすると釈迦は、今ある宗教を想定していたのではないのではないか。不遜にもそんなことを想ったりします。

釈迦はただ真実を見出した人であった。

私が期待するのは、釈迦の見出した真実を、五次元は、科学的な目で万人に提供できる可能性があるのではないかということです。

スケールの概念を使えば、物理学でよく聞く4つの力などは簡単に説明がつくのではと思いますし、観測問題にしても、スケール軸の概念は有用ではないかと思うのです。

五次元の概念を用いた、新たな空間の研究が始まりますことを心から願っております。

その向う地点には、心(宗教)と哲学、そして科学の融合もありうるのではないかと期待します。

こころの問題では、認識の基礎が大きく変わります。

己という認識主体は、自由に変動します。時間概念だけの世界は認識主体は不動で孤独ですが、そこにスケールの概念が加わりますと、当然のごとく人の身になって考えることが自然となるのです。

そして何より、「吾は空なり」という、認識の反転が可能となります。

「吾は空なり」という認識は、孤独感にさいなまれ、あすなろを背負わされた苦悩から、心を解放され深い癒しを体験します。

そればかりか、「吾は空なり」という達観には死は存在しないのです。始まりも、終わりもない空間こそ自分の正体だと見抜く意識は、宇宙の唯一無二である存在を己として生まれ変わることでもあるのです。ただ意識を物から空に反転させるだけで得られる達観です。

五次元の人間は、時間で社会を動かし、スケールの中で心を癒す。必要以上の欲はばからしくなり、欲から来る苦悩は消え、よろこびの中で己を生かす生き方が出来るようになる。そんな希望もあります。

   

スケール号の冒険、および五次元の概念について、ご意見ご感想、寄せて頂ければしあわせです。

今後も、五次元の概念を発信し続けますので、よろしくお願いいたします。

出来ますれば、五次元研究の徒として、これからも共に新世界の旅に同行いただければ幸いです。

 

 

 

 

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二十、エピローグ(博士の回想)

2016-08-22 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(スケール号の冒険は無事に終わった。話しは宴たけなわの頃。)

 

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      二十 エピローグ(博士の回想)

 

 宴たけなわの頃、スケール号の隊員たちは、神ひと様の街を案内してもらうことになった。すっかり打ち解けた神ひと様の子供たちと隊員たちは、大はしゃぎで、案内の奥様について行った。

 偶然、あの岸辺の足跡の謎が解き明かされた。

 湖から続いていた足跡が、立ち止まったまま消えていたのだが、奥様に従って付いてきた隊員たちは、そこから奇妙な乗り物に乗せられたのだ。

 透明の乗り物と言ったらいいのだろうか。まっすぐ見つめたら何も見えないのに、ちょっと目をそらせるとそこに絨毯のようなものが見える。

 子供たちは躊躇なくその上に乗って、手招きをしている。

 「さあ、乗ってください。みなさん。」

 「でも、よく見えないでヤす。」

 「どこからどうすればいいのだスか。」

 「何なら、私は自分で飛んでいけますが。」

 「どこに足を乗せていいのかわからないのです。」

 隊員たちの口はひっきりなしに動いても、足が出ないのだった。

 「さあ、ここに足を。」

 そう言って奥様は皆の足をとって、やっとのことで乗り込ませることが出来た。不思議な乗り心地で、皆興奮して舞い上がっているのだ。最後にスケール号が飛び乗った。気の毒にスケール号は、神ひと様の子供達の引っ張りだこになっている。

 「さあ、行きますよ。」

 透明の絨毯は音もなく飛び上がった。座っているその座席は完全に透明で、もこりんなどは、遊園地の乗り物に乗った気分になって、いつの間にか大はしゃぎだった。

 皆が去った後に、足跡と静寂だけが残っていた。

 

 ☆ ☆ ☆ ☆

 「やっと静かになったようじゃな、博士。」

 「神ひと様。まるで夢のようですが、私たちの思いが本当に実願したのですね。」

 「実に喜ばしいことじゃ。」

 神ひと様は新しい茶を入れて博士にわたし、自分も一口含んで目を閉じた。しばらく意識を舌の上に集めて、茶の味を味わい尽くしているようだ。

 博士も同じように、そのオレンジの液体を口に流し込んだ。一瞬渋みが口の中を支配したが、意識を集中させると、その渋みが己の苦悩とつながるように思えた。

 神ゆえの苦悩。口の中の渋みが、先ほどの神ひと様の言葉に融合していく。博士も同じことを考えていた。それは一言一句たがわないもののように思われた。何も目的を持たされていないものの苦悩。完全なる自由が生み出す苦悩。それがすべての原因だと博士は思うのだった。

 舌の上の渋みから逃げないでさらに深く、味孔にある微繊毛を刺激して、その一本一本の感覚をながめた。まるでそれは、意識の塊だった。肉体は消えて、味孔そのものが博士の苦悩を癒すように微繊毛を揺らせているのがわかった。

 神ひと様が、深い呼吸をして、再び茶を口に入れた。その味覚を博士の味孔がとらえているのだ。博士は感じるままに意識をとぎ澄ませる。不思議という思いはなかった。受け入れないから不思議なのだと、はじけるような理解が沸き起こった。

 博士は深く息を吸い、その味覚を神ひと様に送るように気を吐き出した。今度は博士がオレンジの茶を口に流し込んだ。

 神ひと様が顎を突き出すようにして、茶を味わい尽くそうとしているのがわかる。その感覚は博士の感覚であり、同時に神ひと様の意識でもあるのだ。

 神ゆえの苦悩が、喜びに変わる瞬間を、博士は自分の味覚の中に見ていた。神ひと様がゆっくりと目を開け、二人は見つめ合った。神ひと様の顔に歓喜の色が見えた。

 「私たちは二つではなかったのですな。」

 「いかにも。」

 二人の間に言葉はいらなかった。二つのこの身体は、ひとつの意識でつながっていたのだ。

 「空は我等をひとつにしてくれるのじゃ。」

 「スケールの世界は、この、たった一つの空間が生み出しているのですね。」

 「我らは一つなのじゃ。」

 「あるのは、スケールの隔たりだけです。スケールのために互いの目に見えないだけで、こうして意識をつなげばひとつだということがよくわかります。」

 「ひとつという事が、これほど至福を与えてくれようとはの。」

 長い沈黙があった。

 茶を味わう二人の姿は、美しい風景の中に溶け込んでいる。

 博士の味孔が渋味を味わい尽くすと、無尽蔵に広がる味覚の世界が見えた。どんな小さな一点でも、神とつながっている。そう思ったら、まとわりついていた苦悩の色が消えた。

 「今苦悩が消えてゆきました。」

 「わしもじゃ。」

 二人はしばらく無言のままでいたが、互いをねぎらうように、誰からともなく肩を抱き合った。

 「私が神ひと様に会いたいと思ったのは、なぜこの世から戦いがなくならないのかを知りたいと思ったからでしたが。」

 博士が自然に湧き上がる思いを口にした。

 「神であるゆえの、苦悩を消せばいいのじゃの。」

 「そうです、神ひと様、苦悩を消す方法さえ見つければ、我々ヒト族は、争いをやめるでしょう。そのためにヒト族が見失った生きる目的を手に入れねばならないのです。」

 「空であるという意識がそれを実現させてくれるのじゃな。」

 「吾は空なり。意識をひっくり返せばよかったのです。神ひと様と、お茶を御一緒させていただいて、はっきり理解できました。」

 「わしとて同じじゃ、博士。吾は物だという思い込みからヒト族を解放しようではないか。空こそ己と理解すれば、わしらはは一つじゃ。」

 博士と神ひと様は、もはや対話という域を超えていた。言葉が意識の中に埋没して、意識だけが研ぎ澄まされ、共有が始まっていた。

 「つながりとはなんとよきものじゃのう。我らに目的がなかったのではない。」

 「そうです。大いなる神としてつながらねばならないという、この尊い目的があったのですね。」

 「太陽族が黙々と定めをこなすように、我らヒト族はスケールを超えてひとつの神とならねばならぬ。そこに我らに与えられた目的があったのじゃの。めでたいことじゃ。」

 「どう生きねばならないのか。それがわかれば苦悩は消える。」

 「そうじゃ。」

 「始まりも終わりもない存在に。」

 そう言って博士は、コップを空にかざし、残りの茶を飲み干した。神ひと様が共にその茶を味わい尽くすように瞑目した。

 「空として生きる我らのために。」

 神ひと様がコップを天にかざして茶を飲み干した。その味わいが博士の意識に流れ込んでくる。その余韻はスケールの軸に沿って、どこまでも続いて行くようだった。

 

 静かな時間が流れた。

 

 観光に出た子供たちが帰ってくるまでの至福の時だった。それが一時間だったのか数時間だったのかは定かではない。

  

              完

 

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、

スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

 

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十九、帰還

2016-08-21 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

 

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       一九、帰還     

 

 今回の旅で、スケール号を操る艦長の腕はずいぶん上達した。博士に言わせれば、ほとんど満点に近い出来だそうだ。

  だから、もちろん一気に地球に戻ることも出来そうだったが、無理をしないで、少しずつスケールを戻して行くことに決めた。

  もう一度世界をしっかり見ておきたいと言う思いがみんなの気持ちの中にあったのも事実だ。

 スケール号はまず、ピンクの川まで瞬間移動をした。それでも一気に百億分の一の大きさに縮んだのだ。

 そこは神ひと様の心の世界なのだ。緑の海の中にピンクの川が輝いていた。そしてその奥の方には相変わらず黒い海域が広がっている。しかしそこにはもう、相反する矛盾したものの戦いはなかった。生も死も同じ一つの生命体だったのだ。黒い海域は邪悪なものではなく、生と死をつなげて一つの生命体のリングをつなぐとても大事な場所だったのである。それは言わば、生命の母体なのだった。

  スケール号はそこからメルシアまで縮小した。ぴょんたがメルシアにあいさつをして行きたいと言ったのだ。 メルシアはスケール号を見ると、優しい女神の姿になってスケール号を迎えた。

  「神ひと様に会えましたよ。メルシア。」

  「よかったですね、神ひと様は元気でしたか。」

  「神ひと様のお嫁さんも、子供たちも、みな友達になったんだスよ。街の見学も楽しかっただス。」

 「そうですか。本当に良かった。」

 「ねえねえ、メルシア。神ひと様のお嫁さん。メルシアにそっくりなんでヤすよ。ビックリでヤす。みなもそう言っていたでヤす。」

 「そうだったのですか。うれしいですね。」

 メルシアは本当にうれしそうな顔をしていた。 

 「それよりメルシア、身体の調子はいかがですか。もう大丈夫ですか。」

 ぴょんたが聞いた。

 「ありがとう、もうすっかり元通り。あなたたちのおかげで元気になりましたよ。みなさんはどうですか?」

 「神ひと様が治してくれました。お医者様だったのですよ。」

 「そうでしたか。良かったです。気をつけて帰るのですよ。」

 「ありがとう。さようなら、メルシア。」みんなが一斉に叫んだ。

  「さようなら、元気でね。」

  メルシアは手を振り、スケール号は三回宙返りをしてメルシアの中に入って行った。

 暗黒星雲の中はすやすやと、星の赤ちゃんが眠っていた。チュウスケが大爆発を起こした場所も、すっかり回復して、赤ちゃんの数も増えているようだった。

  「はははははははははは」

  「はっはっはっはっはっは」

  「はははっはははっはははっはははっっはははっ」

  赤ちゃんたちがスケール号にお礼を言っているように聞こえた。

 

  ねんねんころころ

 ねんころりん

 ねんねんころんで

 ねころんで

 ねんねこねこねこ

 ねんねしな

 

  だれからともなく、スケール号の中から子守歌が聞こえて来た。

  「元気で育つんだぞ。」ぴょんたが言った。

 

  ねんねんころころ

 ねんころりん

 ねんねんころんで

 ねころんで

 ねんねこねこねこ

 ねんねしな

  もう一度みんなで子守歌を歌うと、スケール号は一気に長老シリウスに向かった。

 シリウスは相変わらず青い大気をなびかせて居眠りをしていた。ぽこぽこと、巨大な鼻ちょうちんが出ているので、それと分かる。

 「博士、起こしたらかわいそうですね。」艦長が言った。

  「そうだな、そっとしておこう。」

  スケール号はシリウスの周りを月のように周回して、煙のように消えた。次の瞬間、スケール号は太陽の前に姿を現していたのだ。

 「おお、スケール号か。」太陽が真っ赤なフレアを吹き上げながら話しかけて来た。

  「おひさま、ただいまでヤす。」

  「無事帰って来たのだな、よかった。」

  「おひさま、私達は神ひと様に会いましたよ。」

  「おお、そうか、目的を果たしたのだな。」太陽の表面からたくさんのフレアが踊るように身をくねらせた。

 「お日さまが、すべてのいのちのみなもとだと教わりました。」

 「うれしいことを言ってくれる。我らの伝説は正しかったのだな。」

 「はい!それに、太陽族の紋章をありがとうございました。」

  「役にたったかな。」

  「おかげで、助かっただス。」

  「それはよかった。早く地球に戻るがいい。」

  「さようなら、おひさま。」

  スケール号は太陽から離れた。遠くに、懐かしい青い地球の姿が見えている。ついに帰って来たのだ。あの青い地球、何億もの命を支えている天体。その命は、神ひと様からはもとひとの民と呼ばれていることも分かった。

 太陽族の原子が、地球のいのちをつくりあげ、太陽がその命の上にさんさんと光を注いでくれている。地球の青さは、この太陽族がスケールを超えて支え合ってくれている証しなのだ。

 

 ぴょんたやもこりん、ぐうすかや艦長、それに博士達のふるさと地球、そこにはみんなの家があり、家族が待っているのだ。

 スケール号は地球の上空を飛びながら、その美しい姿を心いくまで眺めていた。

 この地球は、自分たちの命を支えているだけの天体ではなかった。この地球こそ神ひと様の体だったのである。人はただ単独で孤独なのではない。スケールによって無限につながっているのだ。

  ここにあって、

  しかもはるか彼方にあるもの。

  我ら、

  太陽族の生まれた理由がそこにある。

  太陽族に伝わる神ひと様の伝説が説き明かされたのだ。その伝説は今、スケール号の乗組員達の体験となって実を結んだだ。ふと目に入った光に目を向けると。スケール号のテーブルにおかれた太陽の紋章がその内側から光を放っているのだった。

  「宇宙の勇者達よ、今こそ、本当に礼を言うぞ。よくやってくれた。本当にありがとう。」太陽の声がみんなの体の全身に響いて来た。

  「宇宙の勇者達よ、地球に戻ったのだね。」それは小さな、しかし確かに神ひと様の声だった。

 「博士、神ひと様の声が聞こえます。」ぴょんたが言った。

  「神ひと様の声でヤす。」

  「神ひと様の声だス。」

  「神ひと様、私達は神ひと様の体を傷つけないように、きっと守って見せます。」艦長が心の中で呼びかけた。

 「さあ、我々の地球に帰るぞ。」博士が言った。

  「スケール号、地球に戻るぞ。」

  「ゴロニャーン」

  地球の上空からスケール号の姿が消えた。

  次の瞬間スケール号は世界探査同盟の基地に降り立っていた。

 

  ぐうすかがしきりにせがむので、博士は仕方なくみんなを食堂に連れて行った。

  「あら、お兄さんたち、どこに行ってたんだい。しばらく見なかったね。」食堂のおばさんが声をかけた。

  「神ひと様に会って来たのだス。」

  「そりゃ、よかったね。それで元気だったかい、そのかみなんとか言う人は。」

  「何でもいいから、クリームソーダー五つ。大急ぎでほしいだス。」

  「はいはい、クリームソーダー五つだね。」

 「おいしいクリームたっぷりだスよ。」

  「それに、サクランボは二つでヤす。」

  「おいおい、欲張りはいけないよ。」博士が笑いながらたしなめた。

 「みんな、よく頑張ってくれた。」艦長がみんなに礼を言った。

  「でも、いい旅でしたね。」ぴょんたが言った。みんなは本当にいい顔をしていて、一回り大人になったような気がした。

  「はいお待ち。」

  おばさんがクリームソーダーを五つ運んで来た。

 クリームの上にサクランボが二つ乗っていた。

 

  今回の宝物は太陽の紋章一つ、あなたは心の中の宝箱に太陽の紋章を入れた。

 

 

 (エピローグに続きます)

 

 

                           エピローグにつづく

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、

スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

 

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十八、神ひと様(6)

2016-08-19 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(神ひと様の国に朝が来た。) 

 

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 「きれいだス」

 「こんなにきれいなことろだったのでヤすね。墓場だなんて言って、すまなかったでヤす」

 皆は一様にこの美しい風景に魅了されていた。

 湖の中州に、神ひと様のいる病院があった。といっても建物が在るわけではない。青々とした木々が茂り、そこからまっすぐに向こう岸まで歩道が伸びていた。皆が歩いてきた道だ。

 その道を女性らしき人が歩いてくる。手に何かを持っていた。

 「わしの妻じゃよ。」

 「神ひと様に奥さんがいるのでヤすか。隅に置けないでヤすな。」 

 皆はわらいながらも、信じられないものを見るような顔をした。盆を持って現れた奥様は、メルシアそっくりだったのだ。

 「メルシアは奥様だったのですか。」

 ぴょんたが皆の思いを口にした。

 「何の話しじゃ?」

 「いえ、神ひと様、我らがピンクの銀河を訪れたとき、姿現しをした面立ちが奥様そっくりだったものですから、皆はちょっと混乱しているようです。なに、私にはわかりますよ。神ひと様がそれほど奥様を想っていらっしゃるということですからね。」

 博士が片目を瞑って、いたずらっぽく笑て見せた。神ひと様も黙って苦笑する。

 神ひと様の食事を運んできた奥様はきょとんとして、成り行きを見ていた。

 「この方たちは地球からやってきた、もとひとの民じゃ。地球から命がけでやって来てくれたのじゃよ。ありがたいことじゃ。おもてなしをしたいのじゃがの。」

 「それでしたら、喜んで。」

 ほどなく、御馳走が運ばれ、神ひと様の二人の子供たちまで集まってきて美しい湖の中州は大宴会になった。

 「神ひと様、ひとつ気になったことを聞いていいですか。」

 艦長が思い出したように質問した。

 「何だね」

 「ヒト族は神として生きねばならぬと言われましたよね。しかもそれが苦悩だと、・・・あれはどんな意味なのですか。それに、私たちもヒト族なのなら、つまりこの私も神として生きなければいけないということなのですか。」

 「よく覚えていたの。大事なことじゃ。よく聞くがいい。」

 そう言って神ひと様は遠い目をした。その一瞬間をおいてから静かに話し始めた。

 「この世界は物と空間で成り立っておるのじゃ。」

 神ひと様は最初に自分を指し、そして自分の周りの空間を指さした。

 「そこで物の一番小さな形はなんだかわかるかの?」

 「この身体は原子が集まってできていると、博士から聞いただス。」

 「そうじゃ。この身体はその小さな粒でできておる。それが太陽族なのじゃ。太陽族にはそなたたちをつくる原子もいるし、このわしの身体を造っている天の星もいる。皆仲間なのじゃ。

 大きさは違うが皆同じ心を持っているのじゃ。大きさの違う場所で、協力し合って、細胞を造ったり銀河をつくる。太陽族はみな、同じ目的を持って心をひとつにして生きているのじゃ。」

 「ピンクの銀河メルシアも、同じようなことを言ってました。」艦長が言った。

 「そうじゃろう、その銀河族も同じなのじゃ。わしの手足は、銀河が集まってできておる。そなたたちの手足はたくさんの分子が協力してつくっているのじゃ。銀河も分子も皆おなじ仲間という訳なのじゃ。

 銀河族もまた、おなじ目標を持って皆で力を合わせて我らヒト族をつくってくれておるのじゃよ。誰一人誰も悩むものはおらぬ。銀河族は正しいことしか知らないのじゃからの。」

 「そうだスか」

 ぐうすかがすかさず合いの手を入れる。言うまでもない。見かけ倒しの業だ。

 「ところが、ここからが大事なことなのじゃが、我ら、ヒト族はどうじゃ。ぐうすか。」

 見かけ倒しの業は時として、己を窮地に追い込むことがある。今のぐうすかがそれだった。

 「ヒト族だスか。ヒト族が何かするのだスか。・・・・」

 「ま、そんなことじゃろう。分かったかの。我らヒト族には、共通の目的を持たされていないのじゃよ。太陽族や銀河族のように、皆が一つの目標に向かおうと思う心があるわけではないのじゃ。なぜかわかるかの?艦長。」

 「そうか!完成したからですよ。積み上げていく間は、皆仲間で完成させる目標があるのですけど、完成したら、その完成品が一つだけあって、誰と力を合わせることもないですよね。積み木と同じです。」

 「その通りじゃ。我らヒト族はみな完成された存在なのじゃ。我らが支え合ってさらに大きな生き物をつくり出すというような目標がないのじゃよ。

 それは逆から見ると、我らは完全なる自由を与えられているということじゃ。我らは完成された神として生きねばならぬのじゃ。すべて己で決め、己で考え、己で生きてゆかねばならぬ。これは苦悩じゃ。神ゆえに我らは苦悩を持たされているのじゃよ。」

 「神ひと様、私たちヒト族に目標はないと言われましたが、皆でしあわせになるという目標は持てるじゃないですか。みんなで楽しい学校をつくると決めたら、いいのでしょう。」

 ぴょんたが張り切って言った。今度の学級委員長に立候補するつもりなのだ。

 「だけどぴょんた、皆が同じ考えを持つとは限らないぞ。チュウスケのようなものをどうするんだ。」

 艦長が茶々を入れた。

 「神ひと様、よくわかりました。だからこそ、私たちヒト族は、互いに手を携えながら生きていかねばならないということですね」

 博士が取り留めのない話にけりをつけるようにまとめてくれた。

 「スケールこそ違え、我らの意識はこの空間の中にある。」

 「そして空間はただ一つなのですね。神ひと様。」

 「そうなのじゃ、そしてスケールは空間の力なのじゃ。」

 「わかります。その力を理解さえすれば、私たちはいつもひとつになれる。」

 「苦悩は喜びに変わるのじゃ。」

 「神ひと様、会えてよかった。」

 「もとひとの民よ。わしもこの日を忘れぬ。」

 こうして、長い対談は終わった。

 いつの間にか、お腹のふくれたスケール号の乗組員たちは、子供たちと遊びに興じていた。難しい話は博士と神ひと様に任せておけばいい。

 奥様の発案で、街の見学に出かけた子供たちだったが、お土産を手に持って帰ってくると再び、昼寝から覚めた幼稚園のようになった。

 「さあ、もう帰りましょう。」

 陽が西に傾くころ、母親が子供たちの手をひいて、帰っていった。楽しい宴会も終わったのだ。

 「どうします、博士。」艦長は博士にこれからどうするかを聞いた。

 「帰りたいだス。」

 「帰りたいです。」

 「帰りたいでヤす。」

  隊員達はみな、地球に帰りたがった。神ひと様の家族を見て、家のことを思い出したのだ。

  「今回の旅はここまでだな、艦長、地球に帰るとしよう。」

 「やったー。」みんなは喜んだ。

 「神ひと様、どうかお元気で。」

 「そなたたちも、無事で帰るのじゃぞ。」

 「ありがとうでヤす」

 帰れると分かって、乗組員たちは元気はつらつ。挨拶を交わし、我先にスケール号に乗り込んだ。

 「ゴロニャーン!」

 最後にスケール号がお別れの挨拶をすると、

  夕暮れのお花畑の世界を蹴って跳び上がった。神ひと様の姿がオレンジ色に輝いて見えた。その一瞬、神ひと様の目にはスケール号は煙のように消えた。いよいよ地球に帰るのだ。スケール号は神ひと様の汗腺に飛び込んだ。

つづく

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、

スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

 

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十八、神ひと様(5)

2016-08-18 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(地球から銀河を渡り、何を観てきたのかと、神ひと様は詰め寄った)

 

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 「神ひと様、こういうことですね」

 博士が口を挿んだ。

 「私たちの身体は、原子でできています。皆もそれは知っています。それと同じように、神ひと様の身体は、太陽でできているということもこの目で見てきました。つまり原子と太陽は、大きさこそ違え、おなじ一族だと分かったのです。太陽族はものの単位として存在しているのだと。」

 「そうじゃ、博士。知っての通り、我らの起原はともに太陽族から始まるのじゃ。」

 「ここに来る途中、太陽族の伝説を聴きました。ここにありて、はるか彼方にありしもの。その同じ言葉を、ここでも目にしました。驚いたことに、地球で私が発明した金属と同じプレートに刻まれていたのです。これです。」

 博士はプレートを神ひと様に差し出した。博士の真剣な眼差しを、乗組員たちははじめて見たような気がする。何か重大なことが起こっているのだ。

 そんな緊迫感の中、皆はただぽかんと口をあけたまま、自分が立っているのも忘れている。

 「その銘板を見つけたのじゃな。」

 「疑問ばかりです。これは私が発明した金属です。しかしこの金属がここにあるというのは、スケールメタルはすでに誰かが創っていたのですね。」

 「驚くのも無理はない。博士。説明が必要じゃの。」

 一息入れて、神ひと様は話し始めた。

 「見ての通り、わしの身体は衰えてこの病院を続けていくのも辛くなってきたのじゃ。わしの体内にある気が病んでおる。病気という意味を分かってもらえるじゃろうな?」

 博士は無言でうなずいた。

 「偶然、わしはのこの身体の中に、もとひとの民がいることをに気付いた。わしの身体の一番小さな粒の上に、我らと同じ命が生きている。それがもとひとの民だったのじゃ。」

 「わしは、もとひとの民の存在を信じた。そこで我らと、もとひとの関係を研究し続けてきたのじゃ。もとひとの民は、自ら地球と呼ぶ天体の上に棲んでいることも分かった。研究が進むうちに、我らと、もとひとは、相似生命であることが分かったのじゃ。」

 「神ひと様、それは私も同じです。違うのは、我らの棲む地球と相似の巨大天体が存在している。その上に神ひと様がおられると考えたことです。」

 「偶然とはいえ、我らは互いに見つめ合っていたということじゃの。この宇宙はスケールに支配されている。そして永遠に相似生命が生まれているのじゃ。互いに見えないが、我らはヒト族として皆同じ仲間なのじゃ。」

 「太陽族、銀河族、そしてヒト族。この命の輪がスケールの中で、螺旋を描いて存在している。それが私の結論です。」

 「そういうことじゃ。」

 「わからないでヤす。」

 もこりんが不満そうに言った。

 「もこりん、お前の身体の中の仲には<もとひと>が棲んでいるということなんだよ。」

 博士がもこりんの手を取って、機嫌を取るように優しく言った。

 「すると博士、私の中の、<もとひと>から見たら、私は神ひと様ということですか。」

 ぴょんたが耳をくるくる巻きにして言った。

 「よくわかったね。そういうことなんだよ。」

 「わスが神ひと様なんて、はずかしいだス。へんだスよ。」

 「ぐうすか、今はわからなくていいんだよ。」

 博士がなだめるように言った。皆の気持ちが落ち着くと、神ひと様が再び話し始めた。

 「ある日、わしはどうしても、もとひとの民に会ってみたくなったのじゃ。そなたたちが見ている宇宙はわしの意識じゃ。その意識を空間のように眺め暮らすそなたたちなら、わしの弱った気を、浄化してくれるやも知れぬという思いもあった。しかし同族として手を取り合うことが出来れば、我らヒト族の、神として生きなければならぬ苦悩を救いに変えることが出来ると考えたのじゃ。」

 博士に言葉はない。ぐうすかはそろそろ眠くなって座りこんでしまった。皆も腰を下ろして、神ひとの様前に扇形にすわった。

 「あの金属のことじゃの。我が同族の間を行き来するには、どうしても必要なものじゃった。伸縮自在の金属。それが不可欠なのじゃ。博士の発明か、わしの発想か、それはわからぬ。しかし、わしはそれを自らの意識の中で強く念じたのじゃ。もとひとの民よ、どうか、この金属を手に入れ、わしに会いに来てほしいと、の。」

 博士の頬が赤い色に染まった。

 「私がスケールメタルを思いついたとき、それは神ひと様の思念が届いていたということですね。このスケールメタルをつくる前から、スケール号の設計図はすでに完成していました。

 五次元という、スケールの世界を旅する夢の乗り物のを完成させるために、どうしても必要な伸縮自在の金属のことを、日々考え暮らしていたのです。

 夜、考え疲れて眠りこんでいました。不思議なことにその日、夢の中で答えが見つかったのです。興奮して目覚めました。目覚めてもそのアイデアはしっかり残っています。急いでそれを書きとめ、ついにスケールメタルを創り出すことが出来たのです。」

 神ひと様の顔にも驚きの表情が現れた。

 「なるほど、この金属は、我らが共鳴してつくりあげたのかも知れんの。期せずしてわれらは同じものを創った。しかしわしは、わし自身の中に棲んでいる、もとひとの民、つまりそなた達に、わし自身から会いに行くことが出来ないという、簡単な事実に初めて気付いたのじゃ。」

 「スケール号と云えども、自分が操縦して自分の中には入っていけないですからね。」

 「そこでわしはその金属をパネルにして銘板を作った。そこに宇宙の伝説を刻み、我ら宇宙の民すべての種族に届けていったのじゃ。太陽族の伝説もその一枚じゃ。そしてひたすら、もとひとの民に向かって発信しておった。会いたいと。」

 「神ひと様、我々はやっと会えましたね。」

 博士は感慨深げに言った。

 「そうじゃ、これもすべて、このスケール号のおかげじゃの。」

 神ひと様は、艦長の横にうずくまっている銀色のネコを自分の胸にすくい上げた。

 「ゴロニャーン」

 スケール号は、今まで聞いたことのない甘声で鳴いた。そして神ひと様の腕の中でぺろぺろとその手を舐めた。

 「かわいいものじゃ。」

 神ひと様はスケール号を治療台に乗せ、三度スケール号の背中を撫でた。すると、不思議なことに、スケール号の背中に貼られた絆創膏がはらりと落ちて、スケール号は元のきれいな背中に戻っていた。

 それを見て一番驚いたのがぴょんただった。なぜかぴょんたは、黒い海で身体を溶かされた時、救ってくれた天使ムカエルの手の温かさを思い出していたのだ。

 「さあ、もとひとの民よ、わしのそばに来なさい。元気づけてくれて本当にありがとう。さぞ大変な目にあったのだね。皆のその傷はどうしたのじゃ。」

 神ひと様が、扇形にすわっている全員に向かって右手を差し出した。左の腕にはスケール号が気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らして抱かれている。

 「神ひと様、お願いがあります。」

 突然ぴょんたが立ち上がった。

 「何だね?」

 「重傷者がいます。チュウスケの手下に、お腹を刺されました。このもこりんです。何とか治療していますが、思うように傷が治らないのです。神ひと様の手でなおしていただくことは出来ないでしょうか。」

 ぴょんたはお腹に包帯を巻いたもこりんを指さして言った。

 「もとよりそのつもりじゃが、ではもこりん、先に来るがいい。この治療台に乗ってご覧。」

 もこりんはもじもじしながら、神ひと様の前に進み出た。そして治療台によじ登り、横になった。

 「もこりん、痛いのによく頑張ってくれたの。礼を言うぞ。わしからの感謝のしるしじゃ。」

 神ひと様はもこりんの包帯にそっと手を当てた。治療台と同化しているココロサワリのつたがかすかに光を放ちはじめた。つるの中を血球のようなものが流れているのだ。

 「気持ちがいいでヤす。」

 うっとりとするうちに、もこりんの包帯がはらりと落ちた。傷は跡形もなく癒されているのだった。

 「神ひと様、もう痛くないでヤす。ありがとうございヤす。」

 もこりんはうれしさのあまり、神ひと様に抱きついた。

 「これこれ、もこりん。今のわしにはお前を抱き上げる力がないのじゃ。」

 神ひと様はうれしそうに言った。

 「ぐうすかの頭の傷もお願いします。」

 ぐうすかは治療台の上で、三度頭をなぜなぜされた。

 そしてぴょんたはそっと右手を包まれた。すると光線銃で撃たれた傷はみるみる癒されていくのだ。

 「ぴょんた、そなたは良き医者じゃ。ぐうすかの傷をよく手当したの。なに、診ればわかる。わしも医者の端くれじゃからの。」

 神ひと様は、まるで見ていたように言ってぴょんたをねぎらった。

 ぴょんたの目に赤い涙が浮かんだ。

 艦長はほっぺを。博士は、握手をするふりをして、自分でたたいた指を治してもらった。

 「ありがとうございます。」

 全員神ひと様に向かってお礼の頭を下げるのだった。 

 「でも、神ひと様、こんなに上手に怪我を治してくれるのに、自分の病気は治せないのでヤすか?」

 すっかり打ち解けたもこりんが、言い出した。

 「自分の気は、治せなくもないがの、なかなか難しいことなのじゃ。じゃが、そなたたちがわしの気の中を旅してきてくれたおかげで、随分元気を取り戻したのじゃ。これでおあいこじゃの。」

 皆は初めて、神ひと様の笑う姿を見た。つられて全員が笑い出した。その笑い声に押されたのか、あたりを取り巻いていた霧が晴れてきた。朝が来たのだ。

 不思議なことに、真っ白だった隊員たちの姿も、もとの色に戻っていた。それもしっかり洗濯したように、新調された色になっていた。長旅の汚れはすっかり消えていたのだ。

 「不思議でヤすな。ぐうすかのこぼしたソースの後もなくなっているでヤすよ。」

 「もこりんのシャツもだス。」

 「本当だ。血の汚れも、それに穴までなくなっている。」

 「艦長の服も博士の服も、新品だス。」

 皆はぴょんたを見て、やっぱりという顔をした。白いままで変わり映えしないのだ。

 「しいて言えば、すっきりしたような。」

 艦長が慰めるように言った。

  ところがぴょんたはなんだかうれしそうだった。朝を迎えた島の中で、神ひと様と同じ白い色は。ぴょんただけだったのだから。そして間違いなく二人は病院のお医者様なのだ。

 いつの間にか、白一色に見えた世界が、きれいな花園に一変していた。神ひと様の座っていた台座には見事な花の彫刻が施されていた。湖はコバルト色に澄み渡り、魚らしき生き物がのんびり泳いでいるのだ。もこりんが湖に近寄り、なんとなくココロサワリの水の妖精を探したが、見当たらなかった。

 つづく

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、

スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

 

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シャンソン喫茶ガットネロで小品展開催します

2016-08-17 | 展覧会

近鉄「大阪上本町」駅、地下鉄「谷町九丁目」駅(11号出口から徒歩3分))

 

シャンソン歌手松浦由美子さん主宰の喫茶ガットネロは、若手ピアニストや、コーラス、シャンソンなど、アーチィストたちの行きかう交差点のような場所です。2007年からのしてんてん絵画とのジョイントが開始され、ちょうど10年目となります。その様子は

シャンソン喫茶ガットネロジョイント展  ガットネロHP

でご覧ください。10年に及ぶ音楽とのしてんてんのジョイントです。

10年目の今年、2日間だけの小品展をすることになりました。

のしてんてん絵画は、音楽とよくなじむと好評ですが、それは鉛筆一本だけで描くモノトーンの精神世界が音楽と似ているからなのかと勝手に思っています。

今回そんなことも意識しながら、私の現在の到達点を表現する世界を小品に込めて展示いたしますので、お立ち寄りください。

コーヒーでも飲みながら、ゆっくりのしてんてんの世界を楽しんでいただけます。気に入った作品があれば、買っていただくことも出来ます。

今、じっくりと、絵を描いております。

 

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十八、神ひと様(4)

2016-08-17 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

 ( ここにありて、 はるか彼方にありしもの  プレートに刻まれた文字の意味が解読された)

 

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 「博士、これは。」

 「スケール号が、このプレートの文字を解読したのだ。」

 「この言葉、聞いたことがあります。」ぴょんたが言った。

 「そうでヤすね。えっと、どこでヤしたかね。」

 「確か、ここにありて、はるか彼方にありしもの、我ら、太陽族の生まれた理由がそこにある。お日様がそう言っていただス。」

 「そうそう、お日様が言っていましたね。」

 「太陽族の伝説だと、確かそう言っていたな。」艦長も思い出した。

  「何か関係があるのでしょうか。」

 「世界はすべてつながっていると言うことなのかもしれん。あるいは、・・・」

 最後の言葉は博士の頭から出て来なかった。言葉に置き換えられない思いが博士をとらえていた。

 「そうだ、石棺の中、」

 艦長が思い出したように叫んだ。

 石の蓋を動かしていて途中だった。わずかに中が見えていた。再び石の蓋にとりつき、少しずつ蓋を移動させていった。ついに白い光に照らし出された石棺の中は何だったのか。

 「これは、」

 皆は息を飲んだ。

 「博士、これは何です。」

 「不気味だスな。」

 「気味が悪いでヤす。」

 石棺の中にあったのは、花をつけていた植物の根の塊だった。ぐるぐるに巻き、もつれた植物の白い根が横たわっていたのだ。根の塊は人の形をしていた。まるで人の抜け殻のように、空になった根の塊。それはあたかも、横たわった人の上に、植物の根が網の目のように巻き付いた後で、人だけが消えてしまったような不気味な印象を与えた。

 「一体、何がどうなったのかさっぱり分かりません。」ぴょんたは呆然として頭を振った。

 「神ひと様はどうなってしまったのですか。」艦長は博士に聞いた。

 その時、

 「わしはここにいるぞ。」

 柔らかく丸い声が、皆の頭の中に小さく響くように聞こえた。

 「神ひと様!」

 全員が声を上げてあたりを見回した。しかし石棺の周辺は深い霧がかかって見通せないのだ。

 「神ひと様!どこにおられるのですか。」

 「わしはここにいるではないか。」

 今度は声のする方向がわかった。皆は声の方を向いた。石棺の奥に立ち込めた霧が動いて、台座に横たわる人影がかすかに見えた。

 「神ひと様ですね?神ひと様ですね。」

 艦長が歩み寄った。霧の中で身を起こす人の姿がおぼろに見えた。

 「そなたたちは?」

 「申し遅れました。私たちは神ひと様に会いに来たものです。」

 「神ひと様、心からお会いしたいと思っておりました。我らは地球の人間です。神ひと様の中を旅してまいりました。お会いあできて、本当に良かった。」

 博士は感動のあまり、眼に涙をためていた。

 「何、地球と申したか。では、そなたたちは、もとひとの民と申すのじゃな?」

 神ひと様は目を見開いて、整列したスケール号の面々を見た。

 皆はその前に立ったまま、台座にすわった神ひと様の姿とはじめて対面したのだ。神ひと様も全身真っ白だった。白い髪が肩まで達し、くぼんだ眼窩に深いまなざしが宿っている。

 「よかったでヤす。死んだとおもったでヤすよ。神ひと様。」

 「でもどうしてこんな墓場にいるのです?」 

 「怖かっただス。でも生きていてよかっただス。」

 皆は矢継ぎ早に口を継いだ。

 「ここは墓場ではない。病院なのじゃよ。」

 「病院ですって?」ぴょんたが真っ先に反応した。

 「でも、これは石棺でヤすよね。」

 「いやいや、それは治療台なのじゃよ。この上に横たわって、身体を癒すのじゃ。」

 そう言われて見れば、石棺と思っていた蓋は、中ほどに、人が寝転がるたびに削られたような跡がある。人型に石の表面が変色して光沢がある。

 「でも、この中は・・・」

 ぴょんたが人型の空が出来た、木の根のかたまりを指さした。

 「何、わしが眠っている間に、これを開けたのじゃな。」

 「申し訳ありません。いるはずの神ひと様に会えずに、必死で捜索しておりました。神ひと様のものを荒らすつもりはありませんでした。すぐに直します。」

 「いや、よいよい。」

 そう言って神ひと様は、ゆっくり立ち上がって、石の治療台に歩いてきた。

 「この中のものは、気を整える装置でな。このつたの根の力を使わせてもらっておるのじゃ。」

 「大きな花が咲いていて、石の蓋を動かそうとしたら、花びらが落ちて、みんな逃げて行っちゃいました。」

 「最後に、ぷかぷか風船みたいなのがとんでいったでヤす。」

 「それは驚かせてしまったの。このつたは、ココロサワリと言っての、夜の内に心の養分を集めてくれるのじゃ。大きな赤い花が見えたじゃろ。心の養分があの花に誘われて集まり、この根に蓄えられるというわけじゃ。」

 「心の養分って、なんですか。」

 ぴょんたが興味を持って聞いた。

 「気じゃよ。この世界をつくっておる意識のことじゃ。それに、そなたらを驚かせた花じゃが、あれは水の精と空の精なのじゃ。毎夜やって来て、気を集めてくれておるのじゃ。夜明け前になると自分の世界に帰っていく。そなた達のせいで散ったのではない。分かってくれるかの。」

 「そうだったのでヤすか。」

 「私たちは、たまたま夜に着いてしまったのですね。」

 「そういうことじゃの。もうすぐ夜が明けるじゃろう。」

 「よし、みんな、台を元に戻すぞ。」

 艦長が号令をかけて、診察台の石の蓋が元に戻された。

 「神ひと様は、どこか悪いのだスか。」

 「身体の気が乱れておったのじゃが、そなたたちのおかげで随分良くなったようじゃ。礼を言わねばなるまいの。もっともわしは、医者でもあるのじゃがの。」

 神ひと様は胸に両手を置いて、ゆっくり頭を下げた。

 「私たちのおかげですって」

 「神ひと様はお医者様だったのですか。」

 「病気はもうなおったのでヤすか」

 「だスか」

 みな一斉に口を開いた。もっともぐうすかは見かけ倒しの業を使っただけなのだが。

 「わしはこの不調を治そうと、瞑想して同族に助けを求めておったのじゃ。だが本当に同族のそなたたちがやってくるとは思いもしなかったのじゃが。まさか夢ではあるまいの?本当に実現してしまうとは。」

 神ひと様は驚きと喜びを重ねあわせたような表情を、穏やかな身のこなしの上に現わした。

 「神ひと様、何から聞いていいのか、・・・・分からないことがたくさんありすぎて。」

 艦長がつんのめるような言い方をした。

 「何なりと、わが同族、もとひとの民よ。」

 神ひとが静かに答え、全員を見回しながら穏やかに言った。

 「えっ、なんでヤす、さっきからもとひとの民って言ってるでヤすよ。」

 「なんだス?もとひとの民っで、聞いたことないだスよ。」

 「私たちのことらしいですね。艦長。博士、分かります?」

 神ひと様の前で、スケール号の面々は互いに顔を見合わせ、おどおどしながら輪をつくった。その輪の中から艦長が顔を上げた。

 「神ひと様、もとひとの民というのは、その、私たちのことなのですか。はじめて聞くのですが。」

 「その通りじゃ、もとひとの民よ。そなたたちは、わが同族なのじゃ。」

 「神ひと様と同族?神ひと様は私たちの神様なのでしょう?」

 艦長が目を丸くして聞いた。

 「この身体を見るがよい。」

 神ひと様は、おもむろに体を広げ、自分の胸に両手をあてた。

 「この身体は、どうしてできているか、そなたたちはそれを見ながらここにやって来てくれたのではないのかな?」

 「もちろん、私たちは地球からやってきました。ですが、私たちはただの人間(モグラやウサギもいますけど)です。」

 「そなたたちは何を観てきたのじゃ。」

 神ひと様は少し顔をひきつらせた。

 つづく

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

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十八、神ひと様(3)

2016-08-16 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(この花でヤす!と叫んだもこりん。いったい何を思い出したのか。) 

 

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 「この花がどうしたんだ。」艦長はもこりんに聞いた。

 「ほら、覚えがないでヤすか。スケール号が巨大化していく間、ずっと窓から外を見ていたでヤしょう。」 

  「それで?」

  「そのとき、一瞬、確かにこの花を見たでヤす。」

  「そう言われれば、そんな気もするだスなぁ」

 ぐうすかも、なんとなく、そんな気がして同意した。

  「気づかなかったがなあ。」

 ぴょんたは首を傾げた。

 「もこりんの言うことが本当なら、我々はこの辺りから出て来た事になる。」

 「博士、神ひと様は死んでしまったのですか。」

 「もしかしたら、この中に神ひと様が入っているのではないでヤすか。」

 「ひえーっ、ここは神ひと様のお墓だスか。」

 「やっぱりここはお墓なのですか、博士。神ひと様は死んでしまったのですか??」

 ぴょんたは怖いものを見るように辺りを見渡した。島の周りは霧に包まれて何も見えなかった。霧がさらに深まっているような気がする。

 やって来た岸辺がどの方向にあるのか、横たえられた石棺を目印にしなければ見当もつかなかった。

  「博士、ここは本当に神ひと様のお墓なのでしょうか。それなら、スケール号は死体の中を飛んできたと言うことになりますよね。」

 艦長は自分の思い付を、恐るおそる覗くような感じで尋ねた。

 「分からない。しかし我々がここから出て来たというのなら、この中に神ひと様の体があることになる。」

 「もし、神ひと様が死んでしまったのだとしたら、地球も死ぬのですか博士。」

 「地球はどうなるのでヤすか。」

 「地球はなくなるのだスか。そんなの嫌だスよ。」

 ぐうすかは泣き出しそうになった。

 「地球がなくなったら、私達はどうなるのです。やっぱり死ぬのですよね。」

 ぴょんたの耳はくねくねに折れ曲がった。

 「まあ待ちなさい。そうと決まった訳ではない。」

 「でも、神ひと様に何かが起こったのだけは間違いないですよね。」

 「神ひと様の身に何かの異変が起こったのかも知れない。しかしここにはそれを説き明かすものがない。すべては謎のままだ。何も分からない。」

 博士も追い詰められて、投げやり的な言い回しをした。それが皆の心に不安をうえつけた。

 「博士、この石の蓋を開けてみるだス。」

 ぐうすかが勇気を出して言った。

 その言葉が、行き詰った不安に力を与えた。本人もまわりのものもその変化に気付かなかったのだが。そこから展開が始まったのだ。

 「しかし、それは、」

 博士はぐうすかの思い付きに戸惑った。

 「博士、やってみましょう。」

 艦長がぐうすかに共鳴して、たたみかけた。

 「しかし、危険な気がする。何が入っているのか分からないんだ。もっとよく調べてみなくては何とも言えない。」

 分からないものに対する不安は、博士を慎重にさせるようだ。

 「でも、やってみる価値はありますよ。」

 艦長は博士に食い下がった。

 「そうでヤす。中を見なければ、何もわからないのでヤすからね。」

 「私も、手伝いますよ。」ぴょんたも加わった。

 「よし、みんな力を貸すんだ。」

 艦長は博士の返事を待たずに、皆に命令した。

  石の蓋は重かったが、四人が力を合わせると、わずかに動いた。そこに腹を決めかねていた博士も加わって、石の蓋はごろごろと音を立てて動き出した。

 するとその上で咲いていた花が、はらはらと大きな花びらを四方に散らせた。落ちた花びらは、まるで生き物のようにくねくねと動き、這い回った。そして一斉に湖面の方を目指して走り始めた。オレンジ色の花びらはそのまま島から湖の中に入り、魚のように泳ぎ去った。

  花びらが散って、残った花芯が、ぐるぐると回転し始めた。辺りをオレンジ色に染めながら、花芯はふわふわと空を飛び出したのだ。

  驚きを通り越して、誰もがただ茫然と、花の出来事を見つめていた。

 首が折れ曲がるほど、もこりんが上を向いて二三歩足動いたとき、なにかにつまずいて石棺の横に尻餅をついた。

 そのとき、手をついたもこりんの指が地面の白い土を払ったのだ。

 そこに銀色に光るプレートがあった。

 「博士、こ、これは何だスか。」

 「どうした。」

 「何だスか。」

 「何ですか。」

 「何があったのだ。」

 皆がぐうすかの周りに集まった。ぐうすかは注意深く、プレートの上の土を払った。それは長方形の銀色に輝く金属板だった。そこには二行の文字らしきものがが刻まれていた。

 「何か文字のようだスな。」

 「見たこともない文字でヤす。」

 「これは、何ということだ。」

 博士はプレートを二本の指で撫でながらつぶやいた。それは博士の最上級の驚きを表しているのだった。

 「どうしたのですか、博士。」

 「信じられない事だ、どうしてこんな事があるのだ!?この金属は間違いなくスケールメタルだ。私が発明したものだ。」

 「ゴロニャーン」

 スケール号が博士のわきから身を寄せて、そのプレートに鼻を近づけ、喉を鳴らして頬ずりをした。

 「これは、スケール号の船体をつくっている金属と同じものだ。間違いない。見ろ、スケール号も反応している。分かるんだ。」

 「でもどうしてそれがここに?」

 「スケールメタルは私が発明したものだ。自在に伸び縮みする金属はこの宇宙に二つとない物質なのだ。考えられない。何かの間違いなのか。」

 博士は、艦長の質問も耳に入らないらしい。

 「ゴロニャーン」

 スケール号が横から博士の足に顔をこすり付けた。博士の腕に抱えあげられると、銀色の猫はキラリと光を放った。それはまさに、プレートと同じ光だった。

 「スケール号確かめられるか。」

 艦長がスケール号に話しかけた。

 「ゴロニャーン」

 スケール号は博士の腕から飛び降り、プレートにもう一度鼻を近づけ、艦長を見た。

 「どうだスケール号。」

 「艦長、スケール号の背中にプレートを置いてみるんだ」

 「どうするんです?」

 艦長は聞いてみたが、博士が答える前にプレートをスケール号の背中に乗せた。なんとなく博士の考えがわかったのだ。

 艦長がネズミの大きさを想像するとスケール号が瞬間にネズミの大きさになった。同時に背中置いたパネルも同じように縮んだのだ。一様に驚きの声があがる。

 間違いなくこれは、博士の言うスケールメタルに違いなかった。

 「あっ、でも博士、チュウスケに引っ付けられた爆弾も同じでヤしたよ。」

 もこりんが大声を上げた。スケール号の背中に取り付けられた素粒子爆弾を思い出したのだ。

 「そうだス。あの爆弾も、スケール号がどんな大きさになっても同じように大きさをかえただスね。」

 「それでは、ここもチュウスケと関係があるのでしょうか。・・・もしや、神ひと様はチュウスケに連れていかれたのではないでしょうか。艦長。」

 ぴょんたがとげに触るような言い方をした。お蔭で一気に不安の空気が膨れ上がる。何もかも分からないことだらけ、それが不安を一層大きなものにしていく。

 「一体どうなっているのだろう。・・・・・スケール号、ここに書かれた文字を翻訳してくれないか。」

 行き詰った艦長の目に、プレートに刻まれた文字が止まったのだ。文字ならスケール号が翻訳してくれるだろう。そう思ってのことだった。

 猫の大きさに戻ったスケール号の背中からプレートを取り上げて、艦長はそれを鼻先に持って行った。

スケール号は、プレートに刻まれた文字の上をペロペロとなめた。同時にスケール号の目が光り、白い石棺の壁に文字が映し出された。 

 

 ここにありて、

 はるか彼方にありしもの

 

 石棺にくっきりと文字が浮かび上がった。

  つづく

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

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十八、神ひと様(2)

2016-08-15 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(霧の中に島影が現れた。その島に見えたものは・・・)

 

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 「あっ、花だス。」

 「ほんとでヤす。ほら、あの島のまんなかに見えるでヤす。」

 霧で隠されていた島が現れたとき、その中央に咲く一輪の花が初めてみんなの目に止まったのだ。花は幾分オレンジがかった色味を帯びて、白い風景の中で浮かび上がるような光を放っているのだった。ここから見えるのだから、かなり大きな花に違いない。

 「博士、あれは何でしょう。」

 「もしかしたら神ひと様と関係があるのではないだスか。」

 「きれいですね。」

 ぴょんたの耳が揺れていた。

  その島を、再び霧が包み始じめた。すべてが白い風景の中に隠れてしまった。それでも意識を持った隊員たちの眼には、霧を通してオレンジ色の光がかすかに見えているのだ。意識を持たなければけっして気付かないほのかな光だった。

 「あそこに行って見ましょう。」艦長が博士に言った。

 「渡れるでヤすか。」もこりんが心配そうに聞いた。

 「とにかく池の周りを歩いて見よう。」

 博士はそう言って歩き始めた。湖をしばらく歩いた時だった。

 「博士、艦長!足跡があります!」

 ぴょんたの興奮した声が聞こえた。みんなは一斉に、声の方に駆け寄った。白い砂の上に、確かに人の足跡が残されていたのだ。

 「でかした、ぴょんた。」博士は興奮してその足跡に見入った。

 足跡は真っすぐ続いて湖に消えていた。その向こうに、小島がうっすらと湖に浮かんでいるように見える。見ようとしなければわからないが、確かにオレンジの光もその方向に見えるのだ。

 「これは神ひと様の足跡に違いありませんよ、博士。神ひと様はあの島にわたったんですよ。」

 「すると、ここから歩いて行けるのでしょうか。」ぴょんたが島を見ながら言った。

 「ちょっと待って欲しいだス。」

 「どうした、ぐうすか。」

 艦長が、ぐうすかの方に目を向けた。ぐうすかは、しゃがみこんで足跡を調べていた。

 「艦長、これを見るだス。」ぐうすかは足跡を指さした。

 「この足跡は、湖の方に向いているのではないだス。湖の方から来たのだスよ。」

 「何だって。」

 「ほら、この足跡、湖に近い方が深く沈んでいるだス。ほら、ぴょんたの足跡を見ればよく分かるだスよ。」

 ぴょんたは湖にお尻を向けて立っていた。その足跡を比較すると、確かにぐうすかの言うとおりだと、皆は納得した。

 「なるほど、」

 「ぐうすか、探偵みたいでヤすね。」

 「それ程でもないだス」

 ぐうすかは得意げに胸を張った。見かけ倒しの業に頼らないぐうすかは、自信に満ちあふれているのだ。

 「ではまず、この足跡をたどってみよう。」博士が言った。

 足跡は乱れなく、一直線に続いている。艦長達は注意深く足跡を追って行った。すると足跡は湖から幾らも離れないところで消えていたのだ。交互についていた左右の足跡が、そこで両足が揃って止まり、それから先に足跡は無い。つまり消えているのだ。

 「神ひと様はここで立ち止まったのですね。」

 ぴょんたが、ぐうすかをまねて言った。

 「そしてここで突然消えたのでヤすか。」

 もこりんも探偵気分だ。

 「なんだか気味が悪いですね。」

 遊び心が消えると、ぴょんたは心細そうに言った。

 神ひと様の手掛かりはそこから完全に消えてしまっているのだ。本当に神ひと様は消えてしまったのだろうか。

 仕方なく皆は湖に戻った。その一直線上にぼんやりと島が見えている。

 「あそこに行けるだろうか。」

 「わたしに任せて下さい。」

 艦長は博士に向かって言った。艦長は空を飛ぶブーツを履いているのだ。

 「私も行きます。」

 ぴょんたが言った。ぴょんたは耳を羽ばたかせて空を飛ぶことが出来る。

 「気を付けてな。」

 「分かりました。」

 艦長とぴょんたは、同時に空を飛んだ。空から見下ろすと、湖の形がよく分かった。ほぼ円に近い形をして、その真ん中に島がひとつ浮かんでいる。よく見ると、その島まで、一本の道が通っていた。その道は博士達が立っている岸辺まで続いているのだ。足を少し濡らすだけで、岸から中島まで歩いて行けるらしい。

 艦長は博士達にそのことを伝えた。

 スケール号の仲間たちは、空と陸から湖の中心に浮かぶ小さな島に渡った。そこは一周しても数分で回れるような円形で、底の浅いお椀をかぶせたような丘になっていた。それは自然に出来たものと言うよりむしろ、人工の遺跡のようにも見える。つまり円形の古墳といえばいいだろうか。口には出さなかったが、皆がそんなイメージを持っていた。

 その丘の中央に、白い矩形の箱が横たえられている。恐るおそる近づけば、それは石棺そのものだった。石棺は石の蓋で閉ざされている。石棺の側面はつたのような植物が寄生するように石と同化して這いめぐっているのだ。不気味と思えば、ぞっとする光景だった。

 そのつたが、石棺の頭の側で何本ももつれるように固まって、一抱えもあるような編上げの幹をつくり、それが天に向かって伸びあがっている。

 幹は隊員達の目を自然に白い天に向けさせた。するとそこに、オレンジ鮮やかに咲く大輪の花がああった。白一色の世界に、その花は目に染み入るように鮮やかだった。

 「岸から見えたのは、あの花でヤすな。」

 「きっとそうだス。」

 「それにしても、これは何でしょうか。なんだかひつぎのように見えますが。」

 艦長は博士に聞いた。

 「まさにこれはひつぎだな。」

 博士は白い石造りの箱に近づき、ていねいに調べながら言った。博士の意見を聞いて、隊員たちはうろたえたようだ。

 「やっぱりここは墓なんでヤすかぁ~。なんだか怖いでヤすよ。」

 「ひえっ!何かが動いただス。」

 ぐうすかがもこりんに抱き着いた。つられてぴょんたも艦長とくっついた。

 「大丈夫だよ。何も出てこないよ。ご覧、動いたのは木の葉だ。」

 博士は、真っ白な木の葉を拾い上げて皆に見せた。島の周りに木立があるのだろう。風が木の葉を一枚、石棺の上に舞い落としたのだ。

 博士の言葉に一同は、その手に揺れている葉っぱを見た。そして視線を周囲に泳がせた。

 その時だった。

 もこりんの素っ頓狂な声が島中に響いた。

  「あっ、この花、この花でヤす。思い出した!思い出したでヤすよ!!艦長。」

  つづく

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

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十八、神ひと様(1)

2016-08-14 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(スケール号はついに神ひと様の国に降り立った。)

 

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               一八、神ひと様

 

  ついにやって来たのだ。みんなは窓の外の光景に釘付けになった。

 初めて見る神ひと様。長い旅の果てにようやく巡り会う事が出来るのだ、その姿の一部始終を見逃さないようにと、誰の心も踊っていた。

  だが、どうした訳か、次第にあらわになってくる光景は、乗組員達の心を裏切り始めたのだ。

  人肌を接写したカメラが対象を捕らえながら、スーッと後ろに引いて行くと、やがて人物の全体像が現れ、たとえば芝生の上に寝転がっている人物の姿が映しだされるだろう。ところが、意外にも、スケール号の前に現れて来たのはただの風景だけだった。そこには神ひと様の姿はどこにもなかったのである。

 スケール号の乗組員達が体験した光景は、まさにそのような不可思議なものだったのだ。どこを見回しても、人物らしい姿は見えなかったのである。

  神ひと様の大きさまで拡大したスケール号が降り立った所は、見たこともない植物が生い茂った世界だったのだ。

 一瞬誰もが、「雪」と思った。

  周辺の森も、遠くの山も、一面真っ白だった。

  スケール号の足元の草や地面も一様に白く輝いている。

 目の前に、白い湖が霧に包まれるように広がっていた。霧の中に、すべてが閉ざされている。そんな感じだった。

  よく見ると、それは雪ではなかった。世界から色が抜け落ちたとしか言いようのない光景だったのだ。どこを見ても色彩に染められたものは見当たらなかった。

  岩も、草も、木も、すべてのものが、脱色したような無色の世界が広がっている。それは雪景色とは違った、ドキッとする光景だった。

 博士も艦長も、ぴょんたも、もこりんも、ぐうすかも、皆、黙ったままだった。誰もが一瞬、神ひと様の事を忘れて、その異様な光景に圧倒されていた。

  「まるで夢に出て来る天国のようだス」

 ぐうすかが放心したようにつぶやいた。

 「ここはどこでヤすか」

 もこりんがつられるように口を開いた。

 「ここは本当に天国なんでしょうか。」

 ぴょんたの耳はくの字に折れ曲がっている。

  「博士、ここは神ひと様の世界なのですよね」

 艦長が不安そうに聞いた。

  「その筈なのだが・・・」

 博士は考え込んでいる。 どこを見回しても神ひと様の姿は見えなかった。

 「神ひと様はどうしたのでヤすか。」

 「どうしてここに神ひと様がいないんですか。」

 「神ひと様はどこにいるのだスか。」

 もこりんも、ぴょんたも、ぐうすかも、思いつくままの言葉を口に出した。不安なのだ。スケール号の前に現れた光景は、想像していた世界と、あまりにも掛け離れていた。ここに優しい神ひと様の姿が在るはずだったのだ。そして、そのことに一番戸惑っているのは博士だった。

 「一体我々はどこから出て来たのだ。・・・」

 博士は必死で考えていた。確かにスケール号は、神ひと様の体内からやって来た。そこから外に出たのだから、すぐそこに神ひと様がいるはずなのだ。それは博士の揺るぎない確信だった。しかし実際にここには神ひと様の姿はなかったのだ。では、我々はどこから来たのか。この光景の中のどこから、スケール号は飛び出して来たのだろう。

 「外は安全のようです。まず、外に出て調べてみましょう。」

 船外の環境を示すデーターを見ながら、艦長が提案した。

 「そうするしかあるまい。」博士が賛成した。

 「行くだス。」

 「行きましょう。」

 「行くでヤす。」

 こうして、スケール号の乗組員達は初めて神ひと様の世界に足を踏み入れたのだ。

 白一色の世界は、思ったよりも穏やかな空気が流れていた。梢を渡る風の音と、小鳥の声がみんなの心に落ち着きを与えてくれた。しっとりした霧の粒子がみんなの体にまとわりついて来た。すると不思議なことが起こった。霧が色を吸い取るかのように、皆の色を消していくのだ。博士も艦長も、にぎやか3人組も、皆真っ白になってしまったのだ。

 「もこりん、お前真っ白だスよ。」

 「ぐーすかだって、怠け者のシロクマみたでヤす。」

 「艦長も、博士も、真っ白です。」

 色が変わらなかったのはぴょんただけだった。というより、もともとぴょんたは白色だったので、変わったのかどうかわからない。それが皆のちょっとした話題になった。

 突然おしろいを振り掛けられたようになって、その上、神ひと様はどこにも見当たらない。

 「せっかく楽しみにしていたのに、留守なのだスか。」

 ぐうすかがつまらなそうに言った。

 「とにかく調べてみるのだ。」博士は辺りを見渡した。

 「あの湖の方に行って見ましょう。」

 そう言って艦長は歩きだした。その後にみんなが続いた。 

 白い湖はそんなに大きなものではなかった。水面には霧が立ち込め、まるでドライアイスの煙が溜まったようにうごめいている。この白い世界は、この霧がつくり出しているのかもしれない。そのおかげでスケール号の面々もみな白くなってしまった。きっと神ひと様もこの霧の中に隠されているのだろう。

 「神ひと様!」

 もこりんが湖に向かって叫んだ。すると、水面の霧がその声に応ずるようにもこもこと揺れた。まるでモグラが畑の土を押しのけて進むように、、声の方向に霧の道が出来るのだ。

 「神ひと様!」

 今度はぴょんたが叫んだ。また霧が揺れた。

  「神ひと様!」

 ぐうすかが叫んだ。誰よりも大きな声だった。ぐうすかの声が水面を通って行くように、霧がもこもこと動いて踊った。

 「これはどうした訳でしょう。博士、もしかしたら、・・・・」

 艦長は最後の言葉を言わずに博士を見た。

 「声の波が霧を動かしているのだろう。地球では見られない現象だが、声がまるで光線銃のように、拡散しないでまっすぐ進んでいるようだな。」

 博士は自分のあごを手でしごきながら言った。

 「でも、なんだか霧が生きているように見えますね。」

 「よし、今度はみんなで呼んで見るだス。」

 「じゃあ、せーの、」

 「神ひと様―!」

 「神ひと様ー!」

 最後は博士も加わって、呼び声は白い世界にこだました。湖面の霧が大きく動いてその向こうに島影が見えた。

 

  つづく

 

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

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十七、最後の道程

2016-08-13 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(チュウスケの秘密を知ったスケール号は、いよいよ神ひと様に会う最後の旅に出発した。その道程はすでに経験したコースなのだが・・・)

 

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         一七、最後の道程

 

 スケール号は再びピンクの川の上空に戻って来た。緑の海の中に渦を巻くようにピンクの川が流れている。

 以前に見た光景そのものだった。おばあさんの心の世界では、このピンクの川は、途中で流れが止められて、紫色に変色していたが、ここは健康そのもののようだった。

  ただ見ているだけでは気づかないが、目前のピンクの川は、前に見たものよりはるかに大きいのだ。

  おばあさんの心の世界にあったピンクの川は、原子という目に見えない小さな世界にあったが、このピンクの川は、銀河よりも大きな世界なのだ。

  つまり、原子という微小な粒で作られた川と、太陽のような巨大な星の粒で作られた川の違いだ。 スケール号は、今はもう銀河の宇宙よりも大きな体になって、ピンクの川を見下ろしているのだ。

  「スケール号、ピンクの川から離れながら、体を大きくするんだ。」

  「ゴロニャーン」

  スケール号はさらに大きくなり始めた。ピンクの川は見る間に小さくなって行き、緑の海が次第にその全体を見せるようになって来た。

  スケール号が大きくなりながら遠くに引いて行くと、緑の海は球体になっていたことが分かった。

 地球を出発する時、真っすぐな地平線が、次第に丸く見え始め、最後には宇宙空間に浮かんでいる星になって行く様子をスケール号の乗組員達は何度も体験している。今度も、それと同じように、緑の海は、宇宙に浮かぶ緑の星になったのだ。

 「地球みたいでヤすね。」

 「艦長、外にもいろんな星が見えます。」

 「DNAの遺伝子だろう。」

 緑の星の外にも、オレンジ色や青色、黄色といった星が並ぶように浮かんでいるのだ。星達はマリモのように輪郭線がぼやけて、エネルギーの塊のように見える。

 「スケール号、あの星達を避けながら進め。」

 「ゴロゴロニャーン」

 スケール号はすこぶる調子がいい。色とりどりの星達は螺旋を描いて長くどこまでも続いて行く。機械的だった宇宙が、どこか生身の体の一部のような、有機的な感じが生まれ始めている。

 「なんだか生き物の中という感じがしてきただす。」

 「ここは確かに、神ひと様の体の中なのだ。」

 艦長が緊張した顔を外の光景に向けながら言った。

 スケール号が大きくなるにつれて、星の数が多くなって来ている。密集している所や、ぽっかり空間ができている所がはっきりして来た。螺旋を描いて並んでいた星達は、細長いチュウブのようになり、空間はガスのような気体から液体に変わって来た。

 「何とも不思議でヤす。」

 「なにがだい、もこりん。」ぴょんたが聞いた。

 「何もなかった空間が、どうしていつの間にか液体になってしまうんでヤすかね。」

 「そんなもの、分かるはずないじゃないか。」

 「スケール号が大きくなることで、星が目に見えないほど小さくなったためだよ。スケール号が自由に飛ぶ事ができた空間も、小さくなって、星と星の間に入り込めなくなってしまったんだ。」

 「なるほど、分かっただス。」

 ぐうすかが大きくうなずいた。見かけ倒しの技だった。

 みんなが分かったのだと博士は思ったんだろう。それ以上難しい話はしなかった。みんなはほっとした。

 「艦長、何か動いて来ます。」

  細長いミミズのような生き物が身をくねらせながら泳いで来るのが見えた。

 「艦長、ここは細胞の中だ、急いでここを通り抜けるのだ。」博士が言った。

  「分かりました。」

 艦長はスケール号に命令して、猛スピードで細胞の壁を抜けた。その時だった、突然アメーバーのようなものが飛び掛かって来てスケール号に取り付いた。

 「な、何だこれは。」艦長が叫んだ。

 アメーバーは次々とやって来て、スケール号に張り付くのだった。

 「これは抗体だ、マクロファージ―と呼ばれている、身体の防衛軍なんだよ。我々を敵だと思っているらしい。」

 「テキ、テキ、やっつけるのだ、やっつけるのだ。」

 「こちらスケール号、我々は敵ではない。攻撃をやめてくれ。」

 「テキ、テキ、やっつけるのだ、やっつけるのだ。」

 「話が通じないでヤす、艦長。」

 「テキ、テキ、やっつけるのだ、やっつけるのだ。」

 「艦長、かまわずスケール号を大きくするんだ。しかし大きくなりすぎてはだめだぞ。」博士が言った。

 「分かってます。神ひと様の身体を壊してはいけませんからね。スケール号、ちょっと大きくなってアメーバ―を脅かしてやれ。」

 「ゴロニャーン」

 スケール号がぐんと大きくなった。アメーバー達は驚いて急に小さく丸まってしまった。

 「テキ、テキ、こわい、こわい。」

 「テキ、テキ、ばけもの、ばけもの。」

 「テキ、テキ、にげろ、にげろ。」

 アメーバー達は丸まったまま、ころころ転がって行った。

 「よかっただス」

 「一時はどうなるかと思いましたよ。」ぴょんたがホッとして胸をなでおろした。

 「スケール号、このまま進むのだ。」

 「ニヤンゴー」

  スケール号は壁を通り抜けた。ところがそこは赤い川だった。スケール号は川に押され、洞窟の中を猛スピードで流されていく。

 「たいへんだス、このままだと、どこに連れて行かれるかわからないだスよ。」

  「艦長、この川は何でヤすか!」

 「もこりん、これは血液だよ!きっと。」

 ぴょんたが横から口を挿んだ。お医者さんのプライドで胸が膨らんでいる。

 「博士、そうですか?」艦長が博士に確認した。

  「間違いない。ぴょんたの言うとおり、これは血液だ、艦長、我々は血管の中に入ったんだ。」

 「そうでしょう、博士。」ぴょんたは耳を羽ばたかせて今にも飛び上がりそうだ。

 「どうします。逃げますか。」艦長が緊張した眼差しで博士を見た。

 「これはおそらく動脈のようだ、しばらくこの流れに乗ろう。」

 「分かりました。」

 どき、どき、どき、血液は一定のリズムで流れて行く。そのリズムに乗ってスケール号も血管のトンネルをくぐって行く。そのトンネルがいくつにも枝分かれして、だんだん狭くなっているようだった。

 「博士、まだ進みますか。」

 「血管は体の表面に向かっているはずだ。血管が一番細くなる先端までこのまま行こう。」

 血管は枝が次第に細かく別れるようになって、ついにその先端までやって来た。

 「スケール号、血管から抜け出すんだ。」

 「ニャゴー」

 スケール号は血管の透き間をかき分けるようにして抜けた。そして細胞の透き間を這いながら進んで行った。だんだん窮屈になって来ている。果たして外に抜けることができるのだろうか。

 「艦長、少し大きくなり過ぎている。小さくなるんだ。そして細胞の透き間を一気に通り抜けよう。外まで後わずかだ。」博士が言った。

 「分かりました。」

 一度通った道とはいえ、体内はひとつの宇宙だ。無限の奇跡が作り上げた、物の世界の最高の構造物なのだ。物の世界にこれ以上大きな組織体はない。それが生命なのだ。当然スケール号の通る道は無限に存在する。

 間違いなく外に出るためには、臨機に応じて様々な変化が要求される。博士の知識が必要だった。博士の指示に従って艦長はスケール号を操る。この旅のもっとも緊張する瞬間だった。

 スケール号は再び小さくなって、細胞をくぐり抜けられる大きさになった。そして全速力で外に向かって移動し始めた。細胞の膜をくぐり、液体の中を泳ぎ切り、抗体や細菌の攻撃を避けながら、いくつも細胞を通り抜けて行った。

 やがて細胞の水分が少なくなり、干からびた細胞の層が現れた。ひび割れた細胞の透き間を潜り、洞窟のような空間を飛び、大きな地底湖の中にたどり着いた。

 「艦長、こんなところに大きな地底湖でヤすよ。」

 もこりんがびっくりしていった。モグラのもこりんにとって、地底湖は珍しくない。よく知っている場所だけに、なぜこんなとこりにやってきたのか、頭がパニックになってしまったのだ。

 「外はすぐそこだということだよ、もこりん。」博士が代わりに答えた。

 「だけど、地底湖は、地下の深いところにあるでヤすよ。それにこの水は、海のようでヤす。博士。見てほしいでヤす。塩水でヤすよ、これは。」

 もこりんは、スケール号の船外観測のデーターを示して言った。

 「ここをどこだと思うかね?」博士は笑いながら皆を見回しながら言った。

 「汗腺です!」

 さすがぴょんたは鋭い。お医者さんの知識が豊富なのだ。

 「その通り。この湖の上には外に開く扉がついているのだ。行くぞ艦長。一気に水面に浮かびあがれ。」

 「了解」

 スケール号は忙しくねこかきをして浮上していく。そしてついに水面に浮かび上がったのだ。しかし頭上の扉は閉ざされていた。

 「あの扉の外が神ひと様の棲む世界なのですね。」

 「そうだ、ついに来たんだよ、艦長、そしてもこりん、ぐうすか、ぴょんた。そして、スケール号、みんなよくやった。」

 博士はもう成功したような口ぶりだ。

 「しかし博士、閉じられた扉をどうします。スケール号なら無理やり出ることも出来ますが。」

 「少し待ってご覧。扉は自然に開く。その時一気に跳びだすのだ。」

 「わかりました。」

 「全員配置に着け。これより神ひと様の世界に跳びだすぞ。合図は、頭上の扉、開くと同時だ。」

 いまや艦長の命令には一抹の迷いもない。

 「アイアイサー!」

 乗組員の声もまるで勝鬨の合唱となった。そしてついに、スケール号は大きな空間の中に飛び出したのだ。

 「博士、ついに外に出ました。」

 「よくやった艦長。」博士は嬉しそうに言った。

 「やっただス。」

 「よかったでヤす。」

 「息がつけて、ほっとしました。やりましたね艦長。」

  スケール号はどこまでも広い空間の中で伸び伸びと飛行を続けた。眼下に広大な荒野が広がっている。神ひと様の身体の表面、皮膚に違いなかった。

  「スケール号、大きくなるんだ。」

  「ゴロニャーン」

  スケール号は飛びながら徐々に体を拡大し始めた。ここから神ひと様の大きさになれば、ついに神ひと様と対面することが出来るのだ。

 博士も艦長も、ぴょんたも、もこりんも、ぐうすかも、スケール号の乗組員は全員一様に緊張していた。

 神ひと様はどんな姿をしているのだろうか。

 スケール号が大きくなって行くと、荒れ果てた大地のように、延々と広がっていた神ひと様の表皮が見る見る縮んでいった。

 地上から宇宙に飛び立つ時に経験する地上の変化と同じように、スケール号の乗組員達は、やがて神ひと様の全体像を目にするはずだった。

 つづく

※おばあさんの心の中のピンクの川を冒険するお話は、「スケール号の冒険(第3話)」をお読みください。

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

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十六、チュウスケの秘密(2)

2016-08-12 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

(黒い海にパステルの箱をひっくり返したような色とりどりの雨がふる)

 

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 「雨でヤす。」

 「こんな雨、見たことないだス。」

 雨は海面に落ちると。瞬間に黒い雲がもこりと立ちのぼり、それがしっぽの形になったり、魚や小鳥や、指や耳の形になって消えた。

 雨が一粒落ちる度に海面にぽこりと小さなものの形が生まれて消えるのだった。

 「何ですかあれは、気持ち悪いような、おもしろいような。」

 「あの雨は、役目を終えて、目的を失ってしまったもの達なんだ。海に落ちた瞬間に物の形が生まれているのは、そのものの前の記憶が形になったものだろう。」

 雨は次々と落ちて来て、それまで持っていた目的の形を海面に残して海の中に消えるのだった。

 スケール号はポコポコと揺れる海面を分けて進み、ときおりネズミの形が生まれている場所に近づいた。

あそこには何があるのだろう。

 「チュウ」

 小さなネズミがスケール号に這い上って来た。

 「大丈夫ですか艦長。」

 「大丈夫だ、ここのネズミはチュウスケのような邪悪な強い力をもっていないようだ。」

 ネズミが何匹も集まって来た。チョロチョロ走り回り、スケール号をなめたりかじったりし始めた、もちろんその度にスケール号のシールドに阻まれて弾き飛ばされている。

 「スケール号、一匹捕らえるのだ。」艦長が命令した。

 「ゴロニャーン」

 スケール号はチョロチョロ這い回るネズミの一匹をパクリと口に入れた。するとネズミのエネルギーがスクリーンに映像になって変換されるのだった。 

 スクリーンには半透明の壁に仕切られた、蜂の巣のような部屋が画面一杯に映し出された。それぞれの部屋の中にはマリモのような緑色の生き物が動いている。

 それを取り囲むように、アメーバ―のように不規則な部屋が広がっていて、その中には小判型をしたオレンジ色の生き物が棲んでいた。

 「これは細胞だスね。」

 「おそらく、何かの動物の細胞だろう。」博士が言った。

 その時、緑の細胞がひとつ弾けて小さくなってしまった。すると隣にいたオレンジ色の細胞が小さくなった緑色の細胞を食べ始めたのだ。

 「あっ」ぴょんたが声を出した。

 見ると、緑の細胞が次々と弾けて潰れ始めた。緑の細胞が小さな粒のような形になってしまうと、オレンジ色の細胞が群がって行く。やがて緑の細胞は跡形もなく消え去ってしまったのだ。

 「博士、これは何なのですか。」

 「細胞の自殺だ。」

 「自殺でやスか。どうしてそんなことが起こるんでヤす。邪悪なもののしわざでヤすか。」

 「お玉ジャクシを知っているね。」

 「はい、知っています。」

 「もちろん知っているでヤす。」

 「お玉ジャクシがカエルになって行くのを、順番に言えるかな、もこりん。」博士がもこりんに質問した。

 「えーっと、足が出て、手が出て、えーっとえーっと、あっ!尻尾を食べちゃうんでヤす!」 もこりんが自信満々に答えた。

 「うーん、ちょっと違うね。食べるんではなく消えてしまうんだよ。」

 「えっ、じゃあ尻尾はどこに消えるんでヤすか。」

  「尻尾の細胞が自殺するんだ。そして体に吸収される。」

 「細胞が自殺するんですか。」

 「一つの命が生まれるとき、生きるものと死ぬものがあるんだ。尻尾が死ななければカエルは生まれない。命と言うのはそういうものなんだよ。命はたくさんの犠牲によって生まれて来るんだ。」

 「私の体もそうですか。」艦長が聞いた。

 「生きるものはみなそうだよ。一つの細胞の死によって新たな成長が約束されているんだ。食べ物だってそうだよ。」

 「食べ物だスか?」

 「みんなが飲んだカカオジュースを思い出してごらん。カカオは死んだけれど、みんなのお腹の中で新しい命を支えているのだよ。」

 「みんなを生かすために自分は死ななければならないなんて、かわいそうだス。」

 「そうして死んでしまったものが、目的を失ってここに落ちて来たんだ。その悲しみの記憶が黒い海にネズミの姿を作り上げているのだ。おそらくね。」

 博士の話は、いつになく悲しく、重苦しい雰囲気をもっていた。スケール号の中は、まるでお葬式の夜のように、悲しみが支配していた。知らないうちに、小ネズミのエネルギーがスケール号の乗組員の心を動かしていたのだ。

 「どうしてネズミなんでヤすか。」

 「それは分からないが、おそらくチュウスケ魔法の影響だろう。」

  「誰だって、自分が死ぬのはいやだス。その怒りがチュウスケの正体だスね。」

 「いや、そうではないよ。全体を生かすために死んで行く細胞達は、皆自然の定めを理解しているんだ。自分の目的は生まれてそして死ぬことだとね。」

 「ではどうして、邪悪なチュウスケになって、世界を滅ぼそうとするのですか。」

 「チュウスケは、この死の悲しみを利用しているんだ。悲しみの心に邪悪な自我の心を吹き込み、憎しみと怒りを作り出しているんだよ。」

 「邪悪な自我の心と言うとどんな心だスか。」

 「世界は自分一人のためにあると思う心の事だよ。邪悪な心から見ると、自分の思い通りにならないことは、絶対に許せないんだ。だから激しい怒りと憎しみが生まれる。それがチュウスケの正体なんだ。」

 「このネズミ達は、チュウスケの邪悪な魔法をかけられていない。きれいな心を持っているようですね。」ぴょんたが優しく言った。

 「ぴょんた、君はおばあさんの心の世界を旅したとき、自分の体を犠牲にしてピピを助けたことがあったね。だからぴょんたにはここのネズミの心がよく分かるんだよ。」博士がぴょんたを見た。

 ぴょんたは少し恥ずかしそうにして、ほほを赤らめた。

 「命あるものは皆、このネズミ達のおかげで、こうして生きているんですね。」艦長がしみじみとした口調で言った。

 「そう言うことだね。メルシアはきっと、これを見せたかったに違いない。」

 「この黒い海は悪魔の海ではないんだスね。」

 「ここに落ちて来たものは、一瞬、今までの記憶を海面に解き放ち、海の深みに沈んで行く。そこはカオスの世界なのだ。役目を果たしたもの達が深い眠りにつく所だよ。」

 「悪魔どころか、世界の母体なんだスね。」

 「よく分かったね、ぐうすか。」

 博士にほめられて、ぐうすかは嬉しそうに頭をかいた。

 「いててて」思わず声を出した。 頭の傷に触ったのだ。

  「ばかだな、ぐうすかは。」

 ぴょんたが笑いながら言った。それにつられて、もこりんも艦長も笑った。顔をしかめながらぐうすかも笑い出した。

  いつの間にか、黒い海にそそぐ雨は止んでいた。そしてどこまでも静かなカオスの眠りが広々と黒い海域を作り出しているのだった。

  「さあ、行こうか。」博士が艦長に言った。

  「そうですね、いよいよ、神ひと様に会えますね。」

  「この先は、心の世界を旅した時の道程とそう変わることはないだろう。しかし、何があるか分からない。気を許してはだめだぞ。」

  「分かりました。」

  スケール号は黒い海から飛び立った。眼下に黒い海域がずっと奥まで続いている。果てしないほど広い世界だった。また再び、役目を与えられるまで、安らかな眠りについているカオスの世界、このカオスこそ世界の正体なのかもしれない。

  話しかけても、言葉が帰って来るわけではないが、無限の深みが全身に伝わって来る。理解すればカオスはそのような海だった。

  スケール号は、音もなく飛んで、黒い海域を離れた。

 つづく

※おばあさんの心の中のピンクの川を冒険するお話は、「スケール号の冒険(第3話)」をお読みください。

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初めての方へご案内。この物語は、のしてんてん系宇宙(五次元)の概念をイメージしていただくために書いたものです。

また、2016年正月から半年をかけて、皆様とともに五次元の世界を旅してまいりました。いわばスケール号の実写版です。

お時間の許す範囲で、そちらも合わせ読んでいただけましたら幸いです。

カテゴリー5次元宇宙に生きる(空間) から初めて、5次元宇宙に生きる(心)、そして5次元宇宙に生きる(神) へと読み進めて頂ければ、スケール号の冒険をより楽しんでいただけるものと思います。)

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