【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

【郷愁を肴に】 

2009年01月11日 02時44分12秒 | 店の妓 ツネ嬢
  
(画像はイメージ 無関係)



あの頃のことを時々想いだします。

夜中に、独りで酒ぇ呑んでる時に懐かしく想いだす、古い物事。
其の郷愁の味が、ケッコウ、えぇ酒の肴になりますねん。


嫉妬からの、痴情な縺れる出来事は、
トコトン突き詰め裏切られるまではぁ、治まらんもんやと。
今になって想い返しても、つくづくとそんな風に感じます。
そやけど、もぉいちどあの時に戻れゝば、あの時と同じように繰り返せと言われゝば。

タブン、もぉいちど繰り返すと想う。

タブンやけどな。 タブン。



【心寒々(ココロサムザム)】


ツネ、ボン、ワイらの足元の雪解け泥水に、
物好きにも躯ぁ丸め無様に寝ッ転んだ、不始末男。
泥水の冷たさに凍え、顔面蒼白にし躯と色ない唇小刻みに震えさせていた。

自分、男の後頭部近くで蹲踞し言いました。


「コラっ!もぉ判ったやろ、ダボが!」

下目がけて吐く、自分の言葉息が白っぽく視えた。

「ナッナンがや、ワイがナンしたちゅうねんっ!」

ワイの白息、消える間もなく地面からの、絶え絶えな息言葉と交差した。


男が後ろのワイに、無理にと首をひねり顔を向けようとしたら、
鼻血が止まらず顎先から血球ぉ滴らせるボンに、濡れた髪の毛ぇ掴まれた。

ボン、男の逆訊き無視し、泥水塗れの髪の毛ぇ毟り採る勢いで頭ぁ揺すった。
ツネ、細めた眼ぇで無表情な顔し、見下ろしてました。

「ツネ、どないや、コンくらいで堪えたったら?」

ツネ、応えないで大きく肩で息をし、腰を捻りながら右脚を後ろに。
ゴール目指しサッカーボール蹴る勢いで右足の爪先、男の股間に減り込ませた。

男の躯、痙攣しながら尚更丸まった。

悲鳴なんか出んくらい、痛いんやろなぁ。

ット、ワイが想像してたらツネ、返す尖がった靴先、髪を掴まれモガク男の顔面にと。
男の唇が内側にと隠れ、靴先銜えさせたままにし、暫く動かなかった。


「どぉなん、アンタが好きな口に突っ込んでしゃぶらされる気持ちぃ?」


聴きたくもない言葉だったので自分、雪を降ろす雲を見上げた。
濃い灰色の雲から、小粒な黒い影がイッパイ降ってきていた。


ツネの細い足首、男の濡れて震える指が這い、掴んだ。
掴まれた黒色ストッキングに泥水が染み込み、黒の色に深みが増した。

自分、眺めながら煙草を吸いたいと。

ワイ、煙草を求めて無意識にコートのポケット弄った。
ボン、男の髪のけ掴んだ右手を、左手に持ち替え、
顔を上向け顎先と、鼻の下を擦り、鼻血塗れの手ぉ懐に突っ込んだ。
潰れかけて捩れた煙草のパッケ取り出し、ワイの方に向けてきた。

パッケに付いた血ぃ気にせず、縒れた煙草を引き抜こうとしてたらツネに言われた。

「○○チャンぅ、ウチもおくれんかぁ 」

ナニかに (タブン血の匂い) 酩酊してるような、囁き声やった。


三本、ナンとか折れないようにと抜き採り、
一本づつ真っ直ぐにしながら銜えさせてやった。
ワイ、ボン、ツネの順で、ジッポで火を点けた。

ツネ、長いこと一本足で上手に立っていました。
薄く口を開き、煙を吐いてました。


「ぁんたがコウテ(買って)くれたコレ(ヒール)、美味しいやろ?」


恐ろしいほどの静かな物言いやったけど、隠し憎しみ物言いでした。
だがら容赦なく減り込ませた靴先。揺すってました。
口を塞がれた男、泣きながらツネの足首掴み鼻の穴で呻いてた。
ワイ涙ぁは、あないにギョウサン溢れ出るもんかぁ。ット、少しぃ関心して観てました。

靴先、引き抜くと、赤い歯茎肉がクッ付いた前歯が幾本か出てきた。


門の辺りから人の気配がしたので振り向いた。
誰かがブロック塀の向こうの地面蹴りながら走る音がし、遠のいてゆく。
冬の日暮は素早くて、薄暗さの中、重たそうな雪雲が空を覆っていた。
次第にぃ粉雪、ギョウサン音なく舞だしてきた。


あの場を支配してた、其々の遣る瀬ない人の気持ち。
観る白っぽい降るものでナカナカにと。隠しようがなく、なかなかにと。

自分、此の侭何処かに逝ってしまいたかたん、今でも憶えてます。


遠くから聴こえてくる踏み切り警鐘の乱打音と混じり、
幾つもの近づく警察車両のサイレン音。


ブロック塀の上から、パトの回転灯が突き出て観えたら、門から勢いよく侵入してきた。
急ブレーキで回転止めたタイヤが、濡れた地面削りながら急停止。

警察車両、後から後から何台も湧いてきていました。


パトの回転灯、フラッシュライトみたいに粉雪照らしてた。
照らされた粉雪、空中で静止し、赤い粒に為って浮かんでた。
ワイ、あないな綺麗な赤い色の粉雪観たん初めてやった。

ワイらさんにん、互いの赤い光が舐める顔、見合いました。
三つの覚悟し燻らす紫煙、舞う白い粉雪で地面にと降りました。


自分、両腕を警官に抑えられ、膝の後ろを蹴られ脚を折られた。
濡れた地面に膝まづかされると、背中を踏まれ前屈みで泥の中にと。
背中の痛みを奥歯噛みしめ堪えるとき、泥を噛む歯応えがした。

冷たい泥水の味が舌の上に広がった。


終わったなぁ。 漸くぅ・・・・・・・ッチ!






【店の妓ツネ嬢】(8)