【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

知らぬまの 憤り

2008年12月16日 01時22分12秒 | 店の妓 ツネ嬢
 
(画像はイメージ 無関係)
  



【肴は嘆き】


ツネ。呷って空になったファッション(グラス)。
ジュラルミン天板に、乾いた金属音鳴らさせ、置いた。

グラスの底で氷の塊が転げ、クリスタルの音、小さく鳴らした。


自分。店の入口扉横、客の手荷物やコートを預かるクロークカウンター内の、
煙草引き出しから一箱失敬し、封帯を切りながらカウンター席に戻る。
ツネの隣に煙草を銜えながら座るとき、横目で盗み見るようにツネの顔を。

上向いた顔、細く引き結んだ紅い唇の端から、琥珀の滴が垂れてた。
ツネが白っぽい手の甲で、濡れを拭う手つきは慣れ切った仕草だった。
優しい形の喉仏、ユックリと上下し、ウイスキーが嚥下される微かな音が聴こえた。


ナニかを堪えるようにキツク閉じられた、青ポイ縁取り化粧の瞼。
白粉の小粒なラメが光に微かに輝き、ユックリト引き締まる顎付け根の筋肉。
そぉッと顔を前にと戻し俯き加減になった顎先から、琥珀の球に為りかけた雫が滴ろうとしていた。

唇が少し開き、咳のような吐息がひとつ。

上唇薄く捲れるかとな感じになり、静かすぎるくらいに耐へながらの吐息した。
微かに唸る様な呟き喋りが、顎をキツク喰い縛り咬み合せた奥歯の隙間から洩れ聴こえ。

キツク閉じられた瞼から溢れだすは、ライトで煌めき輝く透きとおった雫。
数え切れぬ幾粒もで、黒い夜会服の太腿辺りに墜ちはじめた。


自分、眼ぇ逸らしました。なんかぁ、イケンもんぉ視たような気ぃに陥りましたわ。


「ナぁ注ぅいでぇ・・・・・なぁんぼでもぉ!」

首がグラグラと揺れながらやった。少しロレツも怪しくなり始めていた。


自分、呑んでも如何にもならんやろも。

ッテ心で言いながら、ダルマ(サントリーオールド)のアルミのキャップ廻した。
空のファションにダルマを傾け注ぐとき、ダルマの底をツネが押し上げるようにした。


「ァホッ!止めんかッ!」

「イッパイっ!」


グラスの周りが琥珀で塗れるように濡れ、ライトニ照らされると、
ジュラルミンの金色も雑じり綺麗な濡れ輝きしてた。


アイスペールの氷をトングで挟んで足そうとしたら、ファション掠めるように白い指が持っていった。
挟んだ氷、カウンター向こう側の流し(シンク)、当てズッポウで落とした。
直ぐにステンレス金属の薄さに、氷の塊が落ち転がる音がした。



「ウチがぁわるいんやろかぁ、ちぃふぅ?」

焼け酒なヨッパライにしては、軽やかな物言いやった。


「判らん 」

「ウチもぉ判らんとよぉ・・・・ 」


判らんもん、人任せで訊くなっ!ダボっ!



自分、怒鳴り散らしたかった。

溜まったワイの心、凶暴さを求めて蠢いていました。





【店の妓ツネ嬢】(5)