(画像はイメージ 無関係)
戯言語り (タワゴトカタリ)
「ちぃふ、飲ませたり 」
今夜の売り上げ伝票を集計していたママぁの声が聞こえてきた。
厨房横、事務所兼着替え室(ロッカー部屋)、営業時間外にはいつも開けっぱなしの入り口扉の向こうから。
「ママァ、おぉきにぃ!」
「ツネちゃん、逝く(死ぬ)までキッチリ呑むんやでぇ 」
自分この時、コナイナヤツにぃ甘いんや、ボケっ! っと、心の中で微か呟きやった。
「ァンタが、隙だらけなんやちぃふ 」
地獄耳め。 クソババァ~! って心でやで。
声に出して呟きもせず、ナニも喋ってもいないかったから、絶対聴こえる筈もなかった。
ワイ、ナンも言わんと流しに山積みの汚れたグラスやオードブルの皿ぁ、洗いはじめました。
全部の食器を洗い終え、ギョウサンの生ゴミ詰め込んだ業務用ナイロン、
公園横の集積場まで持っていき、ヤットあと片づけが終わった。
一息ついて煙草を銜えながらツネの隣に座るまで、ママぁもツネも自分も、何も喋らんかった。
けどぅ、ナンかを想い煩いながらの重たい時間だけが、
如何にもならずに過ぎて逝ってたような気がしていました。
「ちぃふぅ、ウチが作ったるよぉぅ 」
店の燐寸擦って、ワイが銜えた煙草に火を点けながらやった。
ツネ。片手だけで、左掌の燐寸の箱から、指を巧みに動かしてマッチの軸を取り出し、火を点すのが巧かった。
「ぅん。ぉおきにな 」
天井めがけて吹き出した紫煙。円錐形のライトの明かりの中を登って行ってた。
「お疲れさんやわぁ、濃いぃんがエェのぉ?」
「並みや 」
ヨッパライが目を眇めながら息を詰め、真面目腐った顔しながらダルマの蓋を回します。
グラスの淵から溢しもしないで、上手にカチ割り(コオリ)入れたハチオンスグラスに○徳ブレンド酒を、
キッチリスリーフインガー注ぎ、欧州銘柄のミネラル申し訳程度に垂らした。
バースプーン手渡すと、中指と人差し指の間に挟みグラスの琥珀を優しく攪拌してた。
チリチリリリリ・・・・・ッテ、薄造りのクリスタル硝子が鈴の音発てた。
冷やっこい氷が唇に、前歯の歯茎に当たるのもかまわず、酒を流し込んでグラスを置いた。
立ち上がったツネ、躯をワイの太腿に押しつけるようにしながら、左手をワイの肩に置き、
右片手だけで掴んだダルマを、ワイのハチオンスに傾けてきた。
溶けかけたカチ割りの頭が、グラスの淵と同じまで浮かぶと、ダルマをワイの目の前に静かに置きよりました。
ツネ、ワイの太腿を躯で押すようにしてミネラルも足さず、攪拌もしないで席に戻りました。
「ワイぉ酔わしてドナイする心算や?」
「〇〇チャン、酔わへんわ 」
ワイが駆け出しのころに呼ばれていた実名呼びしました。
目の前の灰皿で半分になって燻ってた煙草、指で摘まんで銜えよった。
暫くは、静かな時間が流れていました。
奥からママぁが算盤弾く五月雨みたいな音と、
ナンぼやっても合わへんなぁ、っとか呟くのが聴こえてた。
ワイ、旧式エアコンのファンの音が耳にツキダシ、気分が苛々し始めてた。
「ちぃふぅ、アイツぅ戻ってくるやろかぁ?」
「知らん 」
「・・・・・なぁ、優しゅぅできませんのぉ 」
「なんでや?」
「シランッ!」
時間はトックに、ッテやねん。ダボ~!
戻らんもんは戻りよらんもんやねん。
ボケがっ!
【店の妓ツネ嬢】(3)
戯言語り (タワゴトカタリ)
「ちぃふ、飲ませたり 」
今夜の売り上げ伝票を集計していたママぁの声が聞こえてきた。
厨房横、事務所兼着替え室(ロッカー部屋)、営業時間外にはいつも開けっぱなしの入り口扉の向こうから。
「ママァ、おぉきにぃ!」
「ツネちゃん、逝く(死ぬ)までキッチリ呑むんやでぇ 」
自分この時、コナイナヤツにぃ甘いんや、ボケっ! っと、心の中で微か呟きやった。
「ァンタが、隙だらけなんやちぃふ 」
地獄耳め。 クソババァ~! って心でやで。
声に出して呟きもせず、ナニも喋ってもいないかったから、絶対聴こえる筈もなかった。
ワイ、ナンも言わんと流しに山積みの汚れたグラスやオードブルの皿ぁ、洗いはじめました。
全部の食器を洗い終え、ギョウサンの生ゴミ詰め込んだ業務用ナイロン、
公園横の集積場まで持っていき、ヤットあと片づけが終わった。
一息ついて煙草を銜えながらツネの隣に座るまで、ママぁもツネも自分も、何も喋らんかった。
けどぅ、ナンかを想い煩いながらの重たい時間だけが、
如何にもならずに過ぎて逝ってたような気がしていました。
「ちぃふぅ、ウチが作ったるよぉぅ 」
店の燐寸擦って、ワイが銜えた煙草に火を点けながらやった。
ツネ。片手だけで、左掌の燐寸の箱から、指を巧みに動かしてマッチの軸を取り出し、火を点すのが巧かった。
「ぅん。ぉおきにな 」
天井めがけて吹き出した紫煙。円錐形のライトの明かりの中を登って行ってた。
「お疲れさんやわぁ、濃いぃんがエェのぉ?」
「並みや 」
ヨッパライが目を眇めながら息を詰め、真面目腐った顔しながらダルマの蓋を回します。
グラスの淵から溢しもしないで、上手にカチ割り(コオリ)入れたハチオンスグラスに○徳ブレンド酒を、
キッチリスリーフインガー注ぎ、欧州銘柄のミネラル申し訳程度に垂らした。
バースプーン手渡すと、中指と人差し指の間に挟みグラスの琥珀を優しく攪拌してた。
チリチリリリリ・・・・・ッテ、薄造りのクリスタル硝子が鈴の音発てた。
冷やっこい氷が唇に、前歯の歯茎に当たるのもかまわず、酒を流し込んでグラスを置いた。
立ち上がったツネ、躯をワイの太腿に押しつけるようにしながら、左手をワイの肩に置き、
右片手だけで掴んだダルマを、ワイのハチオンスに傾けてきた。
溶けかけたカチ割りの頭が、グラスの淵と同じまで浮かぶと、ダルマをワイの目の前に静かに置きよりました。
ツネ、ワイの太腿を躯で押すようにしてミネラルも足さず、攪拌もしないで席に戻りました。
「ワイぉ酔わしてドナイする心算や?」
「〇〇チャン、酔わへんわ 」
ワイが駆け出しのころに呼ばれていた実名呼びしました。
目の前の灰皿で半分になって燻ってた煙草、指で摘まんで銜えよった。
暫くは、静かな時間が流れていました。
奥からママぁが算盤弾く五月雨みたいな音と、
ナンぼやっても合わへんなぁ、っとか呟くのが聴こえてた。
ワイ、旧式エアコンのファンの音が耳にツキダシ、気分が苛々し始めてた。
「ちぃふぅ、アイツぅ戻ってくるやろかぁ?」
「知らん 」
「・・・・・なぁ、優しゅぅできませんのぉ 」
「なんでや?」
「シランッ!」
時間はトックに、ッテやねん。ダボ~!
戻らんもんは戻りよらんもんやねん。
ボケがっ!
【店の妓ツネ嬢】(3)