【 ハグレタ ヨルクモ 】
あの日の晩は頭上に、暗さな闇が覆いかぶさり、蓋をした夜だった。
だから、星の明りだけの暗さナ夜やった
暗い夜の向こうで、銀色に光輝いているはずの月はぁ
今ぁ、何処にぃ・・・・
寒い夜は真っ黒で、冷たく深まっていました。
遥かな山、視えましょうかと、黒色を透かし視れば
動かぬ夜の向こうにぃ 仄かな黒い山影が。
其の山の峰に浮かんだ、月を隠した雲
背中の満月の光で、淵が灰銀色に輝き縁取り。
暫く眺め観れば、ユルリッとな動きで流れています。
闇の重さをナンだか感じさせ、夜の空中に浮かんで流れていました。
月、視えない冬の空、天イッパイに瞬く星々。
雲、暗さナ何かを覆い隠し、忍足で ユックリッ と流れすぎようと。
だから黒雲が浮かぶ天、其処だけが雲の形に模られ
星々消え去り、黒く穿った大穴の如くに為っていました
わたくしが、あの時に見上げた
真上の宙とは違って観えていました。
走り去った夜汽車見送れば 耳に轟音の余韻残ります
余韻消えれば 静かさなで寒さが在った踏切
月はぁ・・・・
何処か遠くで鳴ってる、パトカーのサイレン聴き
静かさに為った踏み切りで、耳を欹てて立ち竦んでました。
今動けば、ナにかと聴こえるの音、何処かに逝ってしまうかと。
【 踏切 】
自分、踏切手前で女物の自転車に跨っていました。
夜汽車が走り去って遮断機揚がたけど
躯凍ったようになって、固まっていました。
ぇ~! 虫の鳴き声ぇ?今冬やでぇ・・・?
っと自分思いました。 何処で鳴いてるんやッ?とも。
もしやッ! まさかぁ?
早くバイトにっ!と気が急いてましたけど
ナニがッ? っと強く興味を引く、冬の暗闇の向こうから
季節はずれなぁ・・・と、耳に微か聴こへし虫の鳴き声。
っの、聞こえてきたかなぁ?の方角を観ると、
線路の柵伝いに、外と内側から柵を挟むように
背高い、枯れた細い茎だけになって群がる、雑草が。
虫の鳴きぃ、あそこら辺りからかぁ?
自分 チッ! っと舌打。
それがキッカケでした、自転車押してました。
タブンココら辺りからぁ・・・・?
未だ此の時までなら、今までの自分に戻れてました。
暗さナ線路間近には、ナにも視えませんでしたから。
だけどもぉぅ、人の中の好奇心、ヨカラヌ悪戯をします。
此の時も自分の心に、何事かと悪さをしました。
人が、タブン人がぁ・・・・
線路脇の、有刺鉄線柵の直ぐ内側の
草叢で、俯けになって転がっていた。
タブン、人がぁ・・・・!
チッ!
軽く鳴らした心算の舌打ち
アンガイ、夜の中に響きました。