【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

【ケジメノツケカタ】

2011年03月06日 00時02分23秒 | 店の妓 ツネ嬢
 
 
 
【○○さん】2
 
「チィフ、アンタがこさえたモンやないやろ?」
(お前が計画したモノじゃないだろう?)
 
俯き加減で珈琲カップの淵から、ワイぉ見つめながらやった。
訊かれた時自分。正直に応えるしかなかった。
○○さん。事務所で社長に話してる途中で気づいてました。
コノひと、伊達に事務所で、輩な部下を統率してるんやなかった。
 
 
○○さん。以前所属してた団体を抜けたいので、団体と交わした杯を返したいと。
理由(ワケ)はない。在るとしたら団体の生き方が自分とは違ってるさかいです。
今までお世話になってきたのに、不義理なん。よぉ承知してます。
女ができたさかい堅気になるとかやない。
だたコノまま世話になってますと、この先キット迷惑を掛けると想う。
 
そやから自分をフクロ(袋・ボッコボコにドツク・簀巻きで川に・細かく切り刻む)
にするなりなんなりと、気の済むまでしてほしい。お願いしますんや。
 
雪の降る寒い時期に素っ裸で、火の気のない団体事務所の床に。
額を打ち付けるようにして、頼んだそうやねんなぁ。
 
まぁ、コノひとの性格やったら、一度言いだしたからには。
其れ相当の覚悟をしてるん、周りのお方さんらお判りしてたんやろぉ。
 
ッデ其の時も、団体の偉いさんにぃ問われました。
 
判った。そんならお前の覚悟ぉ視せいや。
儂(ワシ)らのケジメの着け方、お前も知っとろぉもん。
 
指ぃ詰めるんか。腹ぁ切るんか、どっちなんや?
 
 
昔の洋式剃刀(カミソリ)。二つ折りになってます。
古い時代の散髪屋さんが客の髭を剃る前に。
肌に剃刀をあてる前にぃ、厚い革の研皮で剃刀の刃を立ててました。
其の剃刀で○○さん。腹ぁ臍の下辺りをです。
左脇腹から右脇腹まで一文字に切りはった。
 
黙って息ぉ呑んで、○○さんを囲むようにしながら観てた周りの方々。
事務所の床に敷かれた一枚の真新しいぃ畳が血で染められた。
 
剃刀が臍の下辺りまで進んだ時。
 
「ワッ判った。もぉぅえぇ!」 団体社長が仰ったそうです。
 
「ワイの気が済まんさかい終われんっ!」
我慢で噛んでた下唇から血ぃ滴らせながら○○さんが。
 
剃刀が左脇腹まで進んだら頼んだそぅです。
「針と糸ぉ・・・」
 
社長。直ぐに察しました。
「糸は絹糸やッ!はよぉ持ってこんかいッ!」
 
若い衆が頼まれモンを都合してくる間。社長が畳に坐ってる○○さんの後ろで。
背中を抱くようにしてましたんや。
 
事務所内。コレ以上ない大騒動。
救急車呼ばんかいっ!ボケッ!そないナン呼んでドナイするねんダボがッ!
 
「喧しぃ(ヤカマシイ)!○○ん顔。立てたらんかっ!」
其の社長の一喝で、事務所内静まりかえりました。
 
○○さん、血の気のない蒼白な面(ツラ)で。
「スンマヘン。ワイの我儘で迷惑ぉ」
 
「もぉぅえっ!黙っとれ!」
 
「チョット横にするさかいにな」
社長。○○さんぉ静かにユックリト横たえます。
 
「ワイが縫うたるさかいにな」
「悪いわ!ワイがやりますんで」
 
「ドアホッ!餞別やないか。コン位させんかい!」
社長。若い衆が捧げ持つジッポの熱で赤くなった針を、前歯で曲げながらやった。
 
傷の消毒にはアルコール。じゃぁっと持ってきた日本酒の瓶を観て怒鳴る。
 
「ドアホッ!ナポレオンや!」
判らんのかッ!○○の門出やろも安酒なんか要らん。
サラヤ、ゲンの悪いコトさらすなっ!
 
差し出された瓶を掴もうとして怒鳴った!
「サッサト栓ぉ開けんか!ボケが殺すぞ!」
 
腹の刃傷を洗い流す勢いで撒くようにしながらでした。
「お前な、ゆうてもアカンやろけどな。居らんか?」
 
社長。泣きもってやったそぉです。
 
「スンマヘン。無理ですわ」
 
 
腹の傷ぉ縫い終わるまで、コトの最初からです。
○○さん。ナンの呻きもしませんでした。
 
 
そんな○○さんには自分。嘘ぉ吐けませんがな。
 
 
 
【紅い髪の女ツネ嬢】(15)

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