(写真はイメージ:無関係)
【戻り時間ゴッコ遊び】
時々。昔の出来事ほ想い出しては暇ぉ潰し、空想遊びに耽っています。
自分が若いころ、独りモンの時に棲んでいましたのは、ボロ丸出しなアパート。
戦後の焼け跡原ッパに、今なら廃材モンの材料ぉカキ集めて建てられていました。
シッカリ継ぎ接ぎ(ツギハギ)ダレケな、観てくれもキッチリ安普請な外観でした。
タダ寝起きできれば、それでいぃだけのボロな造りの安普請アパート。
住人はですね、タイガイが分け判らんお人サンばかり。
まぁ。マトモナ職業にぃ就いてるとはぁ想ぇへんお方さんバッカシ。
廊下に私物を置き忘れると、直ぐに無くなってしまいます。
消火器なんかぉ設置しても、同じでした。
ドアの施錠は絶対ぃ忘れたらぁアカンかった。
チョットの留守で、ギョウサンの物がドッカニ逝ってしまう。
ある日。隣の部屋に引っ越してきた人サンが。
(その部屋の元々の住人、警察に身柄を持って逝かれたまゝ。ツイに還らぬモンにと。)
背中丸めて旦サンが引くリヤカーを、赤児を背負った奥さんが後ろから押してました。
アパートの階段下に着くと、ァッ!と言う間もない引っ越しの終わり。
夫婦の家財道具が、リヤカー一台分しかなかったもんやからぁ。
引っ越しの御挨拶にと、新聞紙に包まれたモンを手渡しに夫婦がきた。
受け取りながら、狭い玄関に立つ旦サンの肩越しに、俯いた奥サンを。
「イチオウゆうときますけど、壁が薄いさかい気ぃつけや」
此処らの住人には似合はん、白チャケた顔の旦サンが。
「夜中にぃコドモがぁ泣くかもしれんけど、カンニンしてやぁ」 っと。
「ソンナンはえぇねん。アカチャンは泣くんが仕事やからな。」
「はぁ・・・?」
「ソレヨカな、睦み事ぉ聴かされたら独りモンには毒なんよ。」
「ムッ!ムツミゴトぉっ・・・・・」
奥サン。後ろで躯を震わせながら、笑い声を堪えてましたは。
「アッチのほぉさえ気ぃつけてクレはったら、ワイはえぇわいな。」
「わかりました。気ぃつけますは。」
「ホンデナ、戸締りはキッチリするんやで、忘れたらアカンデ。今ぁ鍵ぃ掛けてきましたんか?」
「ぉい、どないなんや?」
奥さん確かめに慌てゝ出て行った。
「コレ。持って帰ってくれんやろか?」
突き出した新聞紙包みを眺めながら 「はぁ?」 っと色白旦サンが。
「ワイにな、コナイナことせんでもえぇねん。気ぃ使わんといてんか。」
「ぁっ、挨拶ですさかいにぃ・・・・・」
「挨拶は道で会ったらしよ。ナッ。」
何度か新聞包みを押し合いこしてたら、新聞紙が破れてしまった。
包まれていたものが土間に落ちた。泥がついている薩摩芋だった。
「ワイ、独りモンやし料理はせぇへんのんや。ソヤさかいコナイにギョウサン要らんねんっ!」
玄関のドアが開き奥サンが言いました。
「ウチが蒸しますから、後で持ってきますからぁ!」
芋を拾う奥さんの手ぇ、元々は綺麗な指やったんが分かる細さでした。
「奥サン、気ぃ使わせてカンニンやで。」
「後からでヨロシイやろかぁ?」
奥サンの目ぇ、薄暗い裸電灯に照らされていました。
目ん玉ぁ覆う涙がぁ、黄色っぽい灯りでキラキラ輝いてました。
ワイ。心で想いました。この二人ぃキット訳ありモンやなぁ・・・・・っと。
タブン、引っ越し荷物の少なさから、夜逃げモンやろぉッテ。
「ゴメンやで、あとで頂かせてもらいますは、ぉおきにな!」
あの時代ぃ、大概の人サン。一生懸命にぃ生きてましたよぉ!
アカン。チョットなんとなくぅ・・・・・・・ッチ!
昼間っから一杯、ヒッカケタイ気分ですがな。
バイバイ