【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

世情

2009年07月11日 10時42分43秒 | 無くした世界 

 

(写真はイメージ:無関係)




【戻り時間ゴッコ遊び】


時々。昔の出来事ほ想い出しては暇ぉ潰し、空想遊びに耽っています。



自分が若いころ、独りモンの時に棲んでいましたのは、ボロ丸出しなアパート。

戦後の焼け跡原ッパに、今なら廃材モンの材料ぉカキ集めて建てられていました。

シッカリ継ぎ接ぎ(ツギハギ)ダレケな、観てくれもキッチリ安普請な外観でした。


タダ寝起きできれば、それでいぃだけのボロな造りの安普請アパート。


住人はですね、タイガイが分け判らんお人サンばかり。

まぁ。マトモナ職業にぃ就いてるとはぁ想ぇへんお方さんバッカシ。


廊下に私物を置き忘れると、直ぐに無くなってしまいます。

消火器なんかぉ設置しても、同じでした。

ドアの施錠は絶対ぃ忘れたらぁアカンかった。

チョットの留守で、ギョウサンの物がドッカニ逝ってしまう。



ある日。隣の部屋に引っ越してきた人サンが。

(その部屋の元々の住人、警察に身柄を持って逝かれたまゝ。ツイに還らぬモンにと。)



背中丸めて旦サンが引くリヤカーを、赤児を背負った奥さんが後ろから押してました。

アパートの階段下に着くと、ァッ!と言う間もない引っ越しの終わり。

夫婦の家財道具が、リヤカー一台分しかなかったもんやからぁ。



引っ越しの御挨拶にと、新聞紙に包まれたモンを手渡しに夫婦がきた。

受け取りながら、狭い玄関に立つ旦サンの肩越しに、俯いた奥サンを。


「イチオウゆうときますけど、壁が薄いさかい気ぃつけや」


此処らの住人には似合はん、白チャケた顔の旦サンが。

「夜中にぃコドモがぁ泣くかもしれんけど、カンニンしてやぁ」 っと。


「ソンナンはえぇねん。アカチャンは泣くんが仕事やからな。」

「はぁ・・・?」

「ソレヨカな、睦み事ぉ聴かされたら独りモンには毒なんよ。」

「ムッ!ムツミゴトぉっ・・・・・」


奥サン。後ろで躯を震わせながら、笑い声を堪えてましたは。


「アッチのほぉさえ気ぃつけてクレはったら、ワイはえぇわいな。」

「わかりました。気ぃつけますは。」

「ホンデナ、戸締りはキッチリするんやで、忘れたらアカンデ。今ぁ鍵ぃ掛けてきましたんか?」

「ぉい、どないなんや?」


奥さん確かめに慌てゝ出て行った。


「コレ。持って帰ってくれんやろか?」

突き出した新聞紙包みを眺めながら 「はぁ?」 っと色白旦サンが。


「ワイにな、コナイナことせんでもえぇねん。気ぃ使わんといてんか。」

「ぁっ、挨拶ですさかいにぃ・・・・・」

「挨拶は道で会ったらしよ。ナッ。」


何度か新聞包みを押し合いこしてたら、新聞紙が破れてしまった。

包まれていたものが土間に落ちた。泥がついている薩摩芋だった。


「ワイ、独りモンやし料理はせぇへんのんや。ソヤさかいコナイにギョウサン要らんねんっ!」


玄関のドアが開き奥サンが言いました。

「ウチが蒸しますから、後で持ってきますからぁ!」


芋を拾う奥さんの手ぇ、元々は綺麗な指やったんが分かる細さでした。


「奥サン、気ぃ使わせてカンニンやで。」

「後からでヨロシイやろかぁ?」


奥サンの目ぇ、薄暗い裸電灯に照らされていました。

目ん玉ぁ覆う涙がぁ、黄色っぽい灯りでキラキラ輝いてました。



ワイ。心で想いました。この二人ぃキット訳ありモンやなぁ・・・・・っと。

タブン、引っ越し荷物の少なさから、夜逃げモンやろぉッテ。



「ゴメンやで、あとで頂かせてもらいますは、ぉおきにな!」







あの時代ぃ、大概の人サン。一生懸命にぃ生きてましたよぉ!



アカン。チョットなんとなくぅ・・・・・・・ッチ!

昼間っから一杯、ヒッカケタイ気分ですがな。



バイバイ





  



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