【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

【 紅葉酔い 】

2007年11月21日 00時42分09秒 | 幻想世界(お伽噺) 
   


古い木造の橋の上 歩き疲れて欄干に凭れ

流れるせせらぎ見つめ 暫らく


振り返ると姿勢良く背筋を伸ばし 上流を眺める君

額には 汗が 秋の陽に照らされておりました


 これ


わたしに手渡そうとするハンカチ 白の眩しさが


 君が先にふけよ

 いぃから これ


受け取り 陽に輝く白い歯から眼を逸らし 額に


緩やかな流れの其処 水面越しの川底岩覆う 緑の水藻が揺れてます

小さな魚の影 銀鱗閃かせ奔りました

目線を少し上げれば せせらぎ川の上流 望めます

石を積み上げし小さな堰が 流れはそこから


水の流れは そこから


わたしの判りすぎるくらいの 溢るゝもの

流れを観れば わたしの想いの流れ 胸の中から
 


堰の向こう 深まる秋色化粧した樹木の海

何処までも 遠くの山の麓までも 紅葉色

見上げると 眩しいお日さまの隣に薙いだよぅな 薄雲

白い 遠慮したような白さで宙に 周りは突き上げるよぉな 鮮明な蒼


眩しさ堪へ観続けますと 蒼が迫り降り 襲い掛かってきそう  

思わずに膝が 崩れ堕ちてしまいそうな 幻覚錯覚


わたしの肩越しに 嗅ぎなれた良い匂いの息が

わたしの頬を擽る 緑の黒髪の柔らかい毛先が

わたしの背中 君の二つの柔らかさの胸で押され 圧迫されます


思わず!っ ハンカチが渡り板に堕ちました


わたしの両掌 荒い木肌の手摺り 強く握り締めました

橋下に よろけ堕ちそうに為ったから


 ほら あれ! 肩越しに

 ぇっ 何処っ?  戸惑いが


我に返って あなたが指差す彼方を


綺麗な水面(ミナモ)の 緑の川底を

透き通る綺麗な流れに乗って 小さな葉っぱが っ!

赤に染まった 紅葉の葉っぱがっ!

緑藻褥の上で 緩やかな流れに揉まれて踊りながら 此方に


橋の下に 隠れました


急いで反対側に ふたりで下を覗きました

透き通る綺麗な水の中 身を揉む真っ赤な葉っぱが観え

流れてそのまま下流にと 過ぎてゆきます


背中が聴きます いい匂いぃ  と

遠のく紅葉を 眼で追っていると でした


振り返ると 橋の上に落ちたハンカチ 彼女が拾っていました

眼の前に掲げて 其れからハンカチの匂いを嗅いでいました

わたしの汗の匂いを 俯いて両手で顔に 顔半分が白いハンカチ

隠れた顔の 瞑った目蓋が 見えないはずのなにかを


白さの中で何事かを呟き喋り 瞳が此方を 視据えます


貴女は大きく息を吸い込みます

上気した顔が上向きます

二つの眼がわたしを 視据えます

ハンカチの下の顎が 視えました

伸びた喉の線 窺え視えました


形のいぃ 儚げ白さの細い首筋がぁ伸びます

暑さ逃がしで肌蹴たシャツ 胸の谷間がぁ !

上向いた顎と 喉が動き 聴こえました


 わたしね あなたの汗の匂い 好き  っと


わたしは突然  愛おしさがでした


空気が薄まり 息する胸が詰まります

脳の意識が紅葉の赤 妖しく浮き上がるような感覚でした


秋に酔いました


わたしは誘われて近寄ります 紅葉の赤に

掴みます腕を 引き寄せます此方に 抱きしめました 胸に

両の腕が抱き締めました


きつく きつく きつく


紅が呻きました 苦しげに呻きました


そして いい匂いぃ !


肩に乗せられし首 そっと呟きました



薄目を開けたら 眼の前には

紅葉がいっぱい でした


紅が いっぱい いっぱいでした



  


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