【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

想い出す 海

2007年03月27日 00時28分41秒 | 無くした世界 




海が酷く暴れる時 人の力の限りが試され 何々
あの船ならば きっと航海を遣り遂げて 何々
時が経てば 嵐が過ぎ去るから 其れまで 何々

色々と 言います

そんなもの 何の足しにもなりません



真冬 厳寒の日本海
幾ら 差ほど寒く無い 九州の北に広がる海でも
厳しさには 代わりはないっでしょう

日本海の冬の荒れる海 眺める景色の色
海は 鈍い鉛色
空は 鼠色

空気は 雪色

強風に煽られる無数の波頭を 白い兎が飛び跳ねます
溝鼠色の雲 当たり前の如くに低く垂れ込め 海原を覆う蓋

吹雪 横殴りに激しく 白い線となり過ぎます

そんな世界でも 群れ成す鳥
灰色雲と鉛色海面 其の僅かな狭間の吹雪の中 翔けて往きます
冬の渡り鳥たちです



子供の頃 冬の海を観るのが嫌いでした
窓の向こうには 景色として 何時も海が広がってました
隙間風は何処からでも 何時もの如くです

鄙びて反った木の窓枠と 嵌まった硝子の中の景色が嫌でした
硝子には 塩がこびり付いてました
まるで 擦り硝子のようにです

木の敷居に 細い鉄のレール
もし 窓を開けようとしても 塩で錆びた滑車とレール
軋みながら 軋み音 耳に入ってきました


嫌いな海を ずぅっとぉ 何時までも見詰めています
他には何も無いからです 冬の間は室内に閉じ込められるからです
嵐が四五日も続けば 食べ物が尽きました
時代は貧乏が 熨してた頃です
お米も配給でした 土の釜戸が生きてる時代です


小学校から帰ると 嫌いな筈の海を観てます
嫌いだけど 魅せられていたからです

逃げれない

子供ながらの時代の厳しさ 捉える感覚がです
海の向こう 多分 絶望の様なものを視ていたのかも

世間全部が同じ境遇でした
況して 小さな島の世界です



島を出てから 想い出す海は
綺麗な色の 晴れた日の海ばかり

春の 優しくうねる海
秋の 静かに横たわる海
夏の 誘うような海

冬の海を想い出しませんでした



本心は 冬の海です
自分が求めているのは 鈍い色の海です
大人になって 今頃になって そぉ想い始めています
何時かは 戻って視てみたい海です


往ってみて 足の指で潮水をかいてみたいです
荒磯で です