いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

ソチ五輪の情報戦争・・・日本は情報戦争でも負けていたのではないでしょうか。

2014年02月24日 22時00分00秒 | 日記

 スポーツは、最も純粋な行為です。
しかし、競技のルールは人間が決めるものですから、そこには、
決して純粋ではないものが入ってきます。
今回のソチでも、いろんなことがありました。

かつて、というのは1990年代前半のことですが、スキーの
ノルディック複合で連戦連勝だった荻原健司さんが、今回のソチ
五輪の最中に、朝日新聞で、こんなことを書いていました。

・・・
複合で日本が強かったころ、日本が強いジャンプの比率を下
げるため、国際スキー連盟が、たびたび、ルールを変更した。
・・・

このことは、当時から指摘されていたことで、いまになって分
かったということではありません。
しかし、20年の時を経て、当時の選手から、改めて、そうい
うことを聞くと、やっぱりなあと思います。

悲しいのは、当時、そのことが分かっていながら、日本は、ほ
とんど何もできなかったということです。
日本スキー連盟は、いったい、何をしていたのでしょう。
 
 ノルディック複合は、ジャンプと距離を組み合わせた競技です。
当時、日本勢はジャンプを得意としていました。日本勢は大きな
ジャンプで点を稼ぎます。距離は、ジャンプで点数が高い順にス
タートしていきます。荻原選手は、圧倒的なジャンプをし、その
差を保ったまま、距離でも大差で勝つというパターンでした。
 これに対し、国際スキー連盟は、ジャンプの占める割合を小さ
くしたり、ジャンプで距離が出ないよう規制をしたりし、日本勢
のアドバンテージを奪いました。
 ルール変更で、日本を勝てなくしたのです。
 実際、このルール変更を受け、日本の選手は勝てなくなりまし
た。
 その後、長い間、ノルディック複合は低迷の時代を迎えます。
 今回、渡部暁人選手が銀メダルを取り、複合日本、20年ぶり
の復活と伝えられましたが、その20年が、ルール変更による低
迷の時期だったわけです。
 言い換えれば、ルール変更に対応するのに、20年もかかった
ということになります。
 20年前、ルールが変更されるとき、日本スキー連盟は、いっ
たい、何をしていたのでしょう。どうして、ルール変更を止める
ことができなかったのでしょう。いや、そもそも、ルールが変更
されることが分かっていたのでしょうか。

 荻原選手は、こうも書いています。

・・・
今回のソチ五輪で、スピードスケートのリンクは、少し柔らか
いということだった。実は、今回のリンクは、オランダから招い
た技術者が製氷した。そのことを事前に知った国は、あらかじめ、
その技術者の製氷について情報を仕入れ、対応したと聞いた。
・・・

 なんということでしょう。
 今回、実際にスケートリンクの氷は柔らかかったったのです。
500mの長嶋選手も、加藤選手も、テレビの解説者が
 「いやー、氷が柔らかいみたいですねえ。柔らかいから、長嶋
選手も加藤選手も、スケートの刃が、思うようには滑らないみた
いですねえ」
 と嘆いていました。

 日本スケート連盟は、ソチのスケートリンクのオランダの技術
者が製氷し、それが、どうも少し柔らかいようだということを、
事前に、情報としてキャッチしていなかったのでしょうか。

 もし、事前に情報をつかんでいなかったのであれば、もう、そ
の時点で、不利になっています。
 もし、ソチの氷が柔らかいことが分かっていたら、スケートの
刃を、それに対応させるなり、あるいは、滑り方を変えるなり、
いくらでも対応することが出来たでしょう。

 短距離だけではなく、女子の長距離でも、同じように、氷が柔
らかいということを盛んに解説していました。
 しかし、それならそれで、どうして、事前にその情報をキャッ
チできなかったのでしょう。

 このブログで先に書いた上村愛子さんの滑りの話もそうです。
 上村さんのターンの点数が低かったのは、明らかに、ルールの
変更によるものです。
 ルールさえ変更されていなければと思わざるをえません。

 こうしたルールの変更、情報のキャッチを、選手個人に求める
のは、筋違いです。
 選手は、メダルを目指して、ひたすら技術を磨くのです。
 情報をキャッチするのは、選手ではなく、スキー連盟なり、ス
ケート連盟の仕事であり、責任です。
 
 ひとことでいえば、
 日本は情報戦争に負けているのです。

 情報戦に負けて、選手がメダルを取れないとすれば、選手がか
わいそうです。
 選手は、日々、厳しいトレーニングで体と技術を鍛える。
 それと同じように、スキー連盟やスケート連盟、いや、あらゆ
るスポーツの組織、団体は、選手と同じように、日々、厳しい態
度で情報戦争に臨まないといけないのではないでしょうか。
選手だけが厳しいトレーニングをすればいいというものでは、
もう、ないのだと思います。