2月9日の日曜日は、朝から、気分が重かった。
ソチ五輪で、モーグルの上村愛子選手が、また4位
に終わり、とうとう、メダルが取れなかったからです。
ほとんど徹夜でテレビ中継を見ていました。
最後に滑ったアメリカのカーニー選手が、途中、スキー
を乱し、これは、上村選手がメダルに届いたと思いました。
しかし、カーニー選手は、ミスにもかかわらず、意外な
ほどいい点が出ました。
その結果、カーニー選手は上村選手を上回って3位に入っ
て銅メダルを取り、上村選手は4位に落ちたのです。
本来なら、上村選手のコメントを聞きたかったのですが、
上村選手があまりに気の毒で、コメントを聞く気にもな
れず、ひとまず、テレビを切りました。
少し休み、テレビをつけると、ちょうどまた、女子モー
グルの試合を録画で流していました。
そこで、上村選手の試合直後のインタビューを見ました。
上村選手の答えがすばらしかった。
まず、
「オリンピックに向け、やりたいことは全部やったという
思いがあって、滑ったあと、まだ順位も分からないのに、
涙が出てきました」
と話していました。
全部やった、やるべきことは全部やった、そういう思いが
あったんでしょうね。
それが、これで終わったという思いが、あふれてきたので
しょう。
「万感の思い」というのは、まさに、こういうことをいう
のでしょう。
聞いているこちらも、思わず、いずまいを正したくなる、
そんな言葉でした。
上村選手は、続いて、
「いまは、すがすがしい気持ちです。
メダルはないんですけどね、でも、すっきりして、
すがすがしい気持ちです」
と答えました。
この答えを聞いて、私も、心がすっと晴れました。
さっきまでの重い気持ちが、軽くなりました。
上村選手は、メダルを取れなかったけれど、
「すがすがしい気分です」
と言っている。
自分で、やるだけのことは全部やったから、結果は
いいんだという、そういうことなんでしょう。
無理して言っているのではなく、自然に出てきたよ
うに見えました。
前々回のトリノで5位だったときは
「いったいどうしたらメダルが取れるんだろうとい
うのが、ナゾですね」
と話していました。
前回のバンクーバーで4位に終わったときは
「なんで、一段一段なんだろう」
と答えていました。
トリノも、バンクーバーも、気丈に答えていましたが、
しかし、表情は悔しそうでした。
しかし、今回のソチのインタビューでは、
「いまはすがすがしい気分です」
と答えるとき、トリノやバンクーバーのときのような
悔しい表情は、ありませんでした。
もちろん、くやしい気持ちは、どこかにはあったと思
います。
今回のインタビューでは、
「メダルはありませんけどね」と答えていましたし、
「メダル取れたかなと思ったんですけど」とも答えて
いました。
しかし、そのときの表情はすっきりしていて、トリノ
やバンクーバーのときの表情とは、まるで違っていま
した。
やるべきことは、もう、全部やった。
やり残したことはない。
そういうときは、結果はどうあれ、人は、すがすがし
い気持ちになれるんだと、上村選手は、改めて、示し
てくれたように思います。
本当に素晴らしかった。
お疲れさまでしたというのは、こういうときにこそ、
ある言葉だと思います。
お疲れさまでした。
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ただし、あれだけの滑りをしながら、なぜ、上村選手
は、メダルを取れなかったのか。なぜ、カーニー選手
は、あれだけのミスをしながら、上村選手より点数が
よかったのか。
それは、疑問として、残っていました。
その分析を、次回、掲載します。