いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東京の緯度とロンドン五輪・・・欧州は高緯度地方です。低緯度の東京で五輪をするなら10月です。

2012年08月07日 17時02分21秒 | 日記

 ロンドン五輪のテレビ中継を見ていると、ロンドンにいるキャスター
や記者が、長そでのジャケットを着て「こちらは肌寒い一日です」など
と報告しています。

 同じ8月というのに、猛暑の続く日本とは大違いです。
 なぜ、こんなに違うのでしょうか。

 いうまでもなく、緯度の違いです。
 ロンドンをはじめ、欧米諸国は、緯度が高いのです。
 
 ロンドンは北緯51度です。
 これは、北海道よりさらに北にあり、樺太ぐらいの高さです。

 欧州の都市は、どこも高緯度です。
 パリは48度、ベルリンは52度、モスクワは55度、
 ストックホルムにいたっては59度です。

 「南」のイメージのあるイタリアのローマでさえ41度あります。
 日本は、「北国」の代表である札幌でも43度です。
 暖かいイメージのローマと、寒冷というイメージの札幌が、実は、同
じぐらいの緯度なのです。

では、日本の首都、東京はというと、北緯35度です。
かなり緯度が低くなります。
 東京は、欧米諸国の主要都市と比べると、ほどんど「南国」といって
いいほど、緯度が低いのです。 

 アメリカは、欧州ほどではありませんが、主要都市はやはり高緯度で
す。
 ボストンは42度、ニュ―ヨークは40度です。
 
 青森が40度ですから、アメリカの北部の大都市は、だいたい、札幌
と青森の間ぐらいの緯度になります。
 東京が暑い暑いといっても、ロンドンは暑くないのです。

 五輪だけではなく、政治、経済の国際委員会、国際機関の本部は、だ
いたい、欧州にあります。欧州でなければアメリカにあります。

 なにか世界的なイベントを考える場合、ですから、どうしても欧州中
心の考え方になります。

 五輪やサッカーがその典型です。

 五輪を、一年のいつごろに開けばいいか。
 欧州にいて考えると、8月になります。
 8月といっても暑くはない。
 寒いわけでもないので、水泳もできる。
 みんなが夏休みを取っていて、観客も多い。
 スポーツをするのに、いい季節なのです。

 欧州にいると、どうしても、欧州が世界の中心になります。
欧州を中心にして、モノを考えてしまいます。
世界はどの国も欧州と同じだろうと思ってしまいます。
 
 だから、東京で五輪を開くのも、8月でいいだろうと思ってしまうの
です。
 先進国・日本も、欧州と同じぐらいの気候だろうと思ってしまいます。
 というより、日本が欧州と違う気候だなどとは、発想もしないのです。
東京の緯度が35度としかなく、「南国」といっていいほどの低緯度
地方であることなど、思い至る由もありません。

だから、東京の8月がこんなに猛暑であることを知ると、欧州
の人々は、びっくりします。

 東京ではありませんが、10年ほど前に福岡で世界水泳が開かれまし
た。もちろん、8月です。
 各国の代表団は、その暑さにびっくりしていました。
 欧州から来た代表団は、選手たちに、
「これだけ暑いと体に影響があるから、なるべく外に出ないように」
という指示を出していました。

日本の8月、東京の8月は、スポーツをする気候ではありません。
その暑さだけで、各国の代表団の不評を買うでしょう。

人類のスポーツの祭典である五輪は、いちばんよい季節に開くべきも
のです。
ですから、1964年に東京で日本で初めての五輪を開いたときは、
10月でした。
それは、日本では、10月がベストシーズンだからです。
10月10日が開会式で、その日が、「体育の日」となったのです。

今回、二度目の五輪を東京で開くなら、本来、10月でなければなり
ません。

日本は、欧州にあるIOC(国際五輪委員会)に、
・日本のベストシーズンは10月だ。
・それは、日本が低緯度地方にあるからだ。
・日本は、高緯度地方の欧州とは違う。
・日本の8月は猛暑になる。
・日本の8月はスポーツには適していない。
・だから、東京五輪は、10月に開きたい。
――ということを、説明して、分かってもらわなければなりません。

しかし、実際には、困難でしょう。
ひとつは、欧州にいる人に、日本は欧州と違うということを分かって
もらうのは、時間がかかるだろうということです。
さらにまた、日本の五輪関係者が、そのことを理解できるだろうかと
いう懸念があります。よしんば理解していても、それを欧州に説明して
説き伏せるだけの気合と根性があるだろうかという懸念もあります。

なによりも、いまの五輪は商業主義に染まりました。

1964年の東京五輪のころは、五輪は、完全にアマチュアの大会
でした。当時のIOCのブランデージ会長という人が、アマチュア
リズムの権化で、五輪はプロや商業主義を排した大会でした。

しかし、時代は変わりました。
五輪は、もうけるイベントになりました。
大きな収入源はテレビの放映権です。放映権の収入を考えると、
営業的には、五輪は人々が夏休みを取ってテレビを見やすい8月に開く
のがいいということになりました。

10月なんかだと、テレビを見てくれません。

スポーツファン、五輪ファンとしては、東京で五輪を開くとすれば、
それはうれしいことです。
しかし、当の日本人、私たちが、
「猛暑だ」
という8月に開くのは、どう考えても、おかしいことです。

いま、猛暑の8月に、テレビで
「きょうも猛暑になりますので、スポーツをするかたは、お気をつけ
ください」
と言っています。
「猛暑ですから、屋外でのスポーツはお控えください」
とも言っています。

8月に東京五輪を開き、その最中に、テレビで
「スポーツをするかたは、お気をつけください」
と言ったら、
これはもう、ブラック・ユーモアです。

      ************

参考までに、各国の主要都市の緯度を掲げておきます。
以前にも掲げた表の再掲です。
       
       世界の都市の緯度
 
ストックホルム  59度
モスクワ     55度
ベルリン     52度
ロンドン     51度
パリ       48度
シアトル     47度
オタワ      45度
札幌       43度
ボストン     42度
ローマ      41度
シカゴ       41度
ニューヨーク   40度
青森   40度

秋田       39度
北京        39度
ワシントン   38度
仙台   38度
ソウル  37度
新潟       37度
東京  35度
鹿児島   31度
エルサレム  31度
カイロ   30度

ニューデリー   28度
那覇    26度
リヤド   24度
ホノルル   21度