いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

竹島と日本・・・韓国の大統領が言及した「日本の国際的影響力」とはなんでしょうか。

2012年08月23日 14時44分54秒 | 日記

 今回の竹島上陸に際し、韓国の李明博大統領が
 「日本の国際的影響力も、低下しでいる」
 と発言しました。

 日本の国際的影響力が低下しているいまなら、竹島に上
陸しても、日本は何もできないーーと、そういう言い方で
す。

(外務省のパンフレットから)

 しかし、日本には、もともと、国際的な影響力があった
のでしょうか?

 結論を先にいえば、日本は、政治的には国際的な影響力
はほとんどありませんでした。
 しかし、経済的にはかなり強力な影響力がありました。

 1980年代、90年代、とくに1985年ごろから95年
ごろまでの10年間は、日本経済は強い力を持ち、世
界の国が日本に注目していました。
 そして、経済的な影響力が強いので、弱いはずの政治面
でも、日本はそれなりの影響力がありました。

 1985年から95年までの10年間なら、日本には国
際的な影響力があったといっていいでしょう。

 しかし、バブル崩壊によって日本がデフレに沈み、経済
的力が低下すると、日本の国際的な影響力は、まず経済面
で低下してしまいました。そして、経済力を背景にした政
治的な影響力は、簡単に消えてしまいました。

 2012年という「いま」は、そういう状況にあります。

 1985年から95年までの10年間、日本の経済的影
響力は、本当に強かった。
 当時、財政赤字に悩むアメリカ政府は、定期的に、多額
の国債(財務省証券)を発行していました。その国債は、
いつも、半分以上を、生命保険会社を中心とした日本企業
が買っていたのです。
 だから、アメリカの財政赤字は、日本企業が補てんして
いるような状況でした。アメリカの財政そのものが、日本
に支えられているという感じでさえありました。
 そんなとき、タイムだったかニューズウイークだったか、
アメリカの有力な雑誌が、こんな記事を載せました。
         ****
 
20**年のこと。日本海で海難事故が発生した。そこ
で、日本の首相がアメリカの大統領に電話をした。
「大統領、日本海の海難事故の現場に、沖縄の基地から
救援隊を出していただけませんか」
「首相閣下、了解しました。沖縄の基地から、すぐに救
援を出しましょう。いつでも、ご用命ください」
「どうもありがとう。次回のアメリカ国債の入札も、日
本の企業がちゃんと買わせていただきます」
「いつも、ありがとうございます。お役に立てて幸いで
す」
アメリカ政府は、現在も、すでに、財政を日本に握られ
ている。
このままも状態が続けば、いずれ、アメリカは日本の言
うことを聞くしかないという状態になり、ここに書いたよ
うに、日本の首相の一本の電話で、アメリカの大統領が動
かざるをえないようになるだろう。

        ****

 この記事は、経済力を背景にした日本の国際的な影響力が
いかに強かったかを、大変よく示しています。
 実際に、当時のアメリカは、日本に対して、まさにこの記事
のような危機感を抱いていました。このままでは、経済的に
日本の影響下に入ってしまうのではないだろうかーーと。
 
 アメリカでさえそうだったのですから、ほかの国は、推して
知るべしです。
 当時なら、韓国の大統領が竹島に上陸するということは
なかったでしょうし、中国・香港の活動家も尖閣諸島に上
陸するということもしなかったでしょう。
 
 それは、
 「日本を怒らせるとまずい」
 という漠然とした思いがあったからです。
 
 たとえば、当時、アメリカの各州が、東京に日本事務所
を開いていました。
 なんのためかというと、日本企業を、自分の州に誘致す
るためです。
 日本には電機も自動車も、多くの有力な企業がある。
おカネもある。
自分の州に、工場を作ってほしい。
当時は、アメリカのどの州も、そういう思いを持ってい
ました。
そういうときに、日本とトラブルを起こしたくないとい
うのは、自然の話です。
そうやって、経済力は、政治的な影響力ともなります。

 たかだか10数年前の話です。
 李明博大統領はビジネスマンだったから、当時の日本経
済の力をよく知っています。
だから、今回、
「日本の国際的な影響力も弱くなった」
と発言したのは、大統領の皮膚感覚みたいなもので、ま
さに、実感だったのでしょう。

 さきほどのアメリカの雑誌の記事を考えてみてくださ
い。
 1990年ごろに、韓国の大統領が竹島に上陸しようと
考えたとすれば、たとえば、こういう記事になります。

     *****
 日本の首相がアメリカの大統領に電話した。
 「大統領、竹島に韓国の大統領が上陸するという話があ
って、日本は困っているのですが、なんとかなりませんか」
 「分かりました。私から、韓国の大統領に自重するよう
電話をしておきます。そして、沖縄の米軍からも、竹島に
船を出しておきましょう」
 「助かります。次回のアメリカ国債の入札でも、日本企
業が国債をたくさん買いますよ」
 「いつもありがとうございます。いつでも、ご用命くだ
さい」

      ****
 こういうことになれば、韓国も竹島には来れないし、中
国も尖閣列島に手出しできないでしょう。

 日本の国際的な影響力は、すべて、経済力が源泉だった
のです。
 
 その経済力は、凋落が目立つ。
 当然、国際的な影響力はなくなる。

 では、経済力が落ちたいま、日本は、何をもって国際的
な影響力を確保すればいいのでしょう。
 これこそが、日本の首相が政治生命をかけるべきもので
す。
 
 今回は、ひとまず、ここまでとしておきますが、この問
題は、続編を書きます。
 では。