いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

プロ野球の統一球は野球をつまらなくしました・・・これは、スモールベースボールとは別の話です。

2012年05月25日 17時13分48秒 | 日記

 プロ野球の統一球が、最近、にわかに話題になってきま
した。
 統一球は、去年から日本のプロ野球が採用したボールで、
アメリカのメジャーリーグのボールに近づけたということ
になっています。
 とくに、いまの加藤コミッショナーの考えが大きいと聞
いています。加藤コミッショナーは、ワシントンで駐米大
使だったという官僚で、日本のプロ野球をアメリカのメジ
ャーと同じ土俵でやりたいという考えがあるようです。



 さて。
 この統一球が、飛ばないのです。
 私自身、何度か球場に試合を見に行きましたが、本当に、
ボールが飛びません。

 そこで、今シーズンに入って、プロ野球の選手会が、コ
ミッショナーに対し、
 統一球のあり方を見直してほしい
 という要望を出しました。

 新聞によると、3月末にメジャーリーグのマリナーズと
アスレチックスが日本に来たとき、日本の選手が、統一球
とメジャーリーグのボールを比較したということです。二
つのボールを床に落としたところ、メジャーのボールのほ
うがよくはずんだというのです。
 たしかに、阪神の金本選手は、メジャー球を使ったアス
レチックスとの親善試合で、右翼上段まで届くホームラン
を打ちました。しかし、統一球を使った日本の公式戦では、
そんな大きなホームランを打っていません。

 シーズンが始まってからは、報知新聞によると、巨人の
ホールトン選手が、
 「メジャーのボールのほうが飛ぶ」
 と発言したそうです。

 しかし、これに対しては、違う意見もあります。
 4月に新聞に載った投書では、こう書いてありました。
 ーーボールが飛ばなくても、犠打とか盗塁とか技を使っ
  て点が取れる。プロ野球の選手は、いまこそ、技を磨
  いてほしい。

 いわゆるスモール・ベースボールです。

 この投書を受けた同じ新聞のコラムでは、この投書を支
持するような考えが述べられていました。

        ***

 以上が、統一球をめぐる現状と、賛否の意見です。

 間違いなく、統一球は、飛びません。
 結論からいうと、私は、統一球は廃止して、元のボール
に戻すべきだと思います。

 「犠打や盗塁で点を取ればいい」というスモールベース
ボールの考え方や、「いまこそプロ野球選手は技を磨いて
ほしい」という考え方は、実のところ、統一球に対しては、
間違った考え方だといわざるをえません。

 どうしてでしょうか?
いくつか、理由がありますが、簡単にいえば、
 プロ野球がつまらなくなった
 ということです。
本当に、プロ野球がつまらなくなりました。

 第一に、球場に行ってみて、非常に違和感があるのです。
 なんだろうと思っていて、はっと気がつきました。
 打球の音がよくないのです。
 統一球が採用される前は、投手の投げたボールを打者が
打つと、
 「カーン」とか「キーン」、
 「カキーン」
 あるいは、速い打球の場合は
 「キンッ」
 という音がしていました。
 この音を日本語でいえば、
 「金属音」「鋭い音」「乾いた音」
 ということになります。
 もっと簡単にいえば、 
 「快音」 
 です。

 試合が始まる前の打撃練習を見ているとさらによく分か
ります。 
 打撃練習では、以前は、打者がボールを打つと、
 コーン
 という軽い音を立てて、ボールが外野に飛んでいました。

この乾いた音が、野球を見る醍醐味のひとつだったので
す。
 この音こそが、「快音」だったのです。

 実況中継のアナウンサーは、かつて、よく
 「小笠原の打った球は、快音を発し、外野席に飛んでい
きました」
 などと中継をしていました。
新聞の運動面でも、
 「ツーアウト2塁、小久保の打球は快音を発し」
 という書き方をしていました。

 ところが、統一球では、この「快音」が消えてしまった
のです。

 実際に球場で見ていると、打者の打った球は、いま、
 「ゴツッ」とか、
 「ゴン」「ゴツ」
 というに鈍い音になっています。

 いい当たりの長打が出ても、
 「カキーン」ではなく、
 「ゴツーン」という鈍い音しかしません。

 これは、テレビのプロ野球中継を見ていても、よく分か
りません。一度、テレビで、打者の打つ打球音を聞いてみ
てください。 
 カキーンという音がすることはなく、
 ゴツッという音がします。

 そうです。
 統一球になって、プロ野球から
 「快音」
 が消えてしまいました。

 いまあるのは、鈍い音だけです。

 これが、プロ野球をつまらなくしてしまいました。
 
 私たちは、プロ野球に、爽快感を求めます。
 日常生活にはない爽快感がほしいのです。

 カキーンという快音は、まさに、爽快な音でした。
 それは、ある種のカタルシスでした。
 あの軽快な音を聞いて、私たちは、なにか楽しい気分に
なったのです。

 統一級は、その「快音」を奪ってしまいました。

 これは、犠打や盗塁で点を取ればいいという考え方とは、
まったく別の次元の話です。
 野球の快感という話なのです。

 同時に、選手は技を磨けばいいというものでもないので
す。
 どんなに技を磨いても、統一球の打球音は「ゴツッ」と
いうままでしょう。
それは、技とは関係がないのです。

 統一球でやる野球は、快音がない。
 それは、野球から快感を奪い、
 プロ野球をつまらなくしてしまいました。

                 続きます。