いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

ダルビッシュの勘違い・・・彼はメディアへの対応を間違えています。プロとして、メディアへの対応を。

2012年01月23日 03時20分06秒 | 日記

 ダルビッシュ有選手がテキサス・レンジャーズに入るこ
とが決まりました。
 よかったですね。
 大活躍するよう、期待しています。

 しかし、苦言を呈しておきたいことがあります。
 ダルビッシュ選手のメディア対応です。
 メディアへの対応が下手すぎます。
 これは、彼が所属していた日本ハムファイターズが、メ
ディア対応をしっかり教えて来なかったからでしょう。
 ーーというより、日本のプロスポーツの選手は、おしな
べて、メディア対応が下手すぎます。
プロスポーツ界として、メディアへの対応を、もっと組
織的に、教える必要があると思います。

 ダルビッシュの対応の、では、具体的に何が問題なので
しょう。
 彼は、きょう22日の日曜日に至るまで、日本でたった
の一度も会見をしていないのです。
 会見どころか、メディアの取材にさえ応じていません。
 その代わりにというわけでしょうか、彼は、メジャーを
目指すことや、テキサス・レンジャーズと契約することな
どを、自分のブログやツイッターで書いているのです。
 メディアは、そのブログやツイッターを見て、記事にす
るという妙な事態になっています。

 彼がアマチュアの選手なら、別にそれはそれでいいので
す。

 しかし、彼は、プロの選手です。
 プロのスポーツ選手は、どうやって収入を得るか。
 もちろん、選手に直接おカネを払うのは、所属チームで
す。
 しかし、所属チームは、入場料収入や、テレビ・ラジオ
とくにテレビの放送権料で収入を得るのです。
 テレビだけではありません。新聞や雑誌が、試合の動向
や選手の活躍を記事にするから、選手やチームの人気が上
がるのです。

 そう。
 プロ選手は、テレビや新聞といったメディアによって、
支えられているのです。
 いま仮に、ダルビッシュや日本ハムの試合を、テレビが
まったく放送せず、新聞も一行も記事を書かないとすれば、
どうなるでしょう。人々は、ダルビッシュの動きを知るこ
とが出来ず、ダルビッシュのファンは、限られた人だけに
なるでしょう。

 アマチュアは、それでもいいのです。
 アマチュア選手が「競技に集中するため」という理由で、
メディアの取材を拒否したとしても、それは非難するわけ
にはいきません。
 アマチュアは、競技で収入を得るわけではありませんか
ら。

 しかし、プロの選手の場合は、そうはいきません。
 プロの選手は、その活躍をメディアが報じることによっ
て、収入を得るのです。

 考えてもみてください。
 トヨタや東芝は、車やテレビを生産し、それを消費者が
買うことによって、企業活動をしています。
 では、プロ野球の選手は、どうなんでしょう。
 プロ野球の選手は、トヨタや東芝と違い、なにか製品を
作っているわけではありません。だから、ファン(消費者)
は、製品を買うわけではないのです。
 プロ野球の選手は、我々にはできないようなプレー、そ
う、プロらしいプレーをして、我々に見せます。そして、
我々は、そのプレーに対して、おカネを払うのです。その
プレーを見るために、我々は、球場に足を運び、テレビを
見て、新聞の運動面やスポーツ新聞を読むのです。

 もちろん、球場に足を運べるファンの数は限られていま
す。球場のない地域では、球場に行きようもありません。
球場のある地域でも、仕事が終わってから、そうそう何度
も球場に足を運べるわけではありません。だから、圧倒的
に多くのファンは、テレビで中継を見て、ラジオで中継を
聴き、新聞で記事を読むのです。

 そうなんです。
 圧倒的に多くのファンは、メディアで、選手の活躍やチ
ームの動向を知るのです。
 メディアは、選手とファンの間の架け橋です。

 選手によっては「俺はメディアは嫌いだ」という人がい
るかもしれません。しかし、好きであろうと、嫌いであろ
うと、メディアが、選手とファンの間の架け橋であること
は紛れもない事実なのです。
 そこをしっかりと認識しないといけません。

簡単にいえば、
 メディアがなければ、プロスポーツというものは、成立
しないのです。

 ダルビッシュは、自分のブログでいろいろ書いているか
ら、それでいいじゃないかーーという声があるかもしれま
せんが、そういうわけにはいきません。
 
 ブログは、アクセスできる人が限られています。
 多くのプロ野球のファンは、今回、ダルビッシュが大リ
ーグのどのチームに決まるのか、契約金はどのぐらいにな
るのか、おおいに関心を持っていたでしょう。
 しかし、多くのプロ野球ファンのうち、「じゃあ、ダル
ビッシュのブログを見てみようか」と思うファンは、いっ
たい、どのぐらいいるでしょう。極めて少数だと思います。
 ダルビッシュ本人のファンは、ブログを読むかもしれま
せんが、熱心なプロ野球ファンであってもダルビッシュの
ブログまで読もうかというファンは少ないでしょう。
 テレビや新聞というメディアは、プロ野球のファンだけ
れどブログなど読むこともないファンに、ダルビッシュの
ニュースを伝えます。
 もっと大事なことに、テレビや新聞というメディアは、
プロ野球に関心のない人にも、ダルビッシュのニュースを
伝えます。

 ニュースでダルビッシュの記事を読んだサラリーマンや
家庭の主婦が、こういう会話をする。
 「ダルビッシュは、レンジャーズに決まったってね」
 「大リーグでどのぐらい活躍するんだろう」
 「ダルビッシュの契約金って、すごいのね」
 ーーこうした会話で、プロ野球の人気、プロ野球の裾野
が広がるのです。
 プロスポーツにとって、これは、大きいんですよ。
 こうした裾野の広がりは、プロスポーツにとっては、か
けがえのない財産になるのです。

 ブログでは、こうはいきません。
 ダルビッシュが自分の考えを自分のブログで書いても、
普通のサラリーマンや家庭の主婦は、ダルビッシュのこと
を話題にはしないでしょう。

 ダルビッシュは、メディアへの対応を間違えています。
 なにか勘違いしています。

 こうした流れを作ってしまったのは、たとえば、サッカ
ーの中田英寿選手だったのではないかと思います。
 彼は、メディアを無視しました。
 メディアが嫌いだったんですね。
 しかし、プロの選手が、それではだめです。
 自分が、どうやって収入を得ているのか、それを認識し
なければ、スポーツ選手が「プロ」を名乗る資格はありません。