いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東大の秋入学には反対です・・・入学などの習慣や制度は各国の風土に根差しています。

2012年01月18日 14時16分10秒 | 日記

 東大が、入学を秋にする方針を考えているーーという
ことを、今朝の日経新聞が伝えました。この話は、去年
から話題として出ていましたが、今回は、東大の検討会
が中間報告をまとめたというものです。中間報告という
形になれば、話題の域を超え、オフィシャルな検討課題
となります。
 
 私は、これには、反対です。

 東大が秋入学を考えている理由は、欧米各国では秋入
学になっており、日本だけ4月入学にしていると、留学
などいろいろと不都合な面があるということです。ひと
ことでいえば、秋入学にして、国際基準に合わせるとい
うことになります。

 東大が秋入学にすると、ほかの大学も追随し、もしか
すると、高校、中学、小学校まで、右へならえというこ
とになってくるかもしれません。

 私は、秋入学には、絶対反対です。
 なぜならば、日本の春入学、欧米の秋入学には、それ
ぞれ、地域や文化に裏付けられた背景があるからです。
 この話は、当ブログでも、昨年取り上げたことがあり
ますが、改めて、書いておきます。

 日本の年度が春に始まり、欧米の年度が秋に始まるの
は、それが、それぞれの地域にとってベストシーズンだ
からです。
 日本の春は、桜とともにあります。
 え?桜? と言わないでください。
 桜は、よくもあしくも、日本のシンボルです。いろん
な場面で桜が出てきます。
 冬が終わって、うららかな春、桜の咲く下で、入学式
がある。

 ところが、日本の桜のシーズンである4月は、欧米で
は肌寒く、まだまだ冬のイメージがあります。欧米では、
5月から6月になって、ようやく、春が来ます。ようや
くというよりは、むしろ、突然、春が来るという感じで
す。
 それは、欧米諸国の位置する緯度が高いからです。
 ロンドンは北緯51度で、北海道どころか、樺太のあ
たりです。ニューヨークも青森あたりです。
 これに対して日本は緯度が低い。
 欧州が亜寒帯なのに対し、日本は温帯にあります。
 
 世界の主要都市の緯度を掲げておきます。
ストックホルム 59度
モスクワ 55度
ベルリン   52度
ロンドン 51度
パリ 48度
シアトル   47度
オタワ     45度
札幌       43度
ボストン    42度
ローマ     41度
シカゴ    41度
ニューヨーク  40度
青森 40度
北京      39度
ワシントン   38度
仙台  38度
ソウル 37度
新潟      37度
東京 35度
鹿児島 31度
エルサレム   31度
カイロ  30度
ニューデリー  28度
那覇   26度
リヤド       24度
ホノルル      21度

 こんな具合になります。
 こうやって並べてみると、東京など、かなり南の方に
位置することがわかります。
 中東というと砂漠があって暑いイメージですが、鹿児
島は、エルサレムやカイロとほぼ同じ緯度です。
 日本は、欧米に比べ、南にある国なのです。

 高緯度地方の欧米は、冬が長く、春の訪れが遅い。
 だから、4月を年度の開始にしようなどとは、間違っ
ても思わないでしょう。
 長く寒い冬から解放されて、どっと生命があふれ出る
6月こそ、ベストシーズンです。だから、6月に結婚式
をして、ジューン(6月)ブライドと呼びます。
 ただし、6月だと、もうすぐに夏休みの季節が来るの
で、年度開始を6月にするわけにはいかない。
もううひとつのベストシーズンは、秋です。
私はニューヨークに住んでいたことがありますが、ニ
ューヨークの10月は、本当に美しい。空気が澄み、さ
わやかで、日本の秋とはひと味違う素敵な季節です。高
緯度地方の秋は、まぎれもなく、ベストシーズンのひと
つです。
そこで、夏休みの終わった9月か10月を年度の始ま
りとし、ジューンブライドの6月を年度の終わりにもっ
てこようという感じになります。
さわやかな10月に入学式をし、生命のあふれる6月
に卒業式をしましょう。それが、欧米の風土であり、文
化です。欧米の大学が秋に入学し、初夏(6月)に卒業
するのは、そういう背景があるのです。それはまさしく
風土的背景です。

 同じように日本は、桜の咲くうららかな春4月に入学
し、生命のきざしを感じる冷涼な早春3月に卒業するの
です。それが日本の学校の風土です。

 ひさかたのひかりのどけき春の日に
 しずこころなく 花の散るらん

 敷島の大和心を人問えば
 朝日に匂う山桜花

 欧米の6月に相当するのが、日本の4月です。
 ジューンブライドが縁起がいいらしいというので、日
本でも結婚式を6月にすることがありますが、日本の6
月は梅雨です。そんな雨の季節に結婚式をやってもしか
らありません。どうしてそんなことになってしまうのか
というと、高緯度地方の欧米の風習を、はるかに緯度の
低い日本に、何の疑問もなく持ってきてしまうからです。

 その国ではるか昔から続いている習慣や風習、制度と
いうものは、その国の風土や気候に根差しています。そ
れは具体的には、緯度の高低であったりするわけです。

 それを、「国際基準に合わせるため」として、秋に入
学するなどとは、日本と欧米の風土の違いを無視した議
論としかいいようがありません。
 「国際基準」というのは、要は、「欧米基準」という
ことでしょう。
 高緯度地方の欧米の基準は、あくまで「高緯度地方の
基準」にすぎません。決して、「国際基準」などではな
いのです。

 東大の秋入学には、反対です。