いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東日本大震災・・・また「勇気を与える」という言い方が増えてきました。善意がだいなしです。

2011年05月07日 23時49分24秒 | 日記


 「勇気を与える」という言い方を、また、聞くようにな
りました。
東日本大震災からまもなく2か月になります。
 この連休中も、スポーツ選手や芸能人が、避難所を訪れ
たり、チャリティ試合を開いたりしていました。それはそ
れで大変いいことです。しかし、インタビューの答える選
手や芸能人が、
 「私のプレーで勇気を与えられたら」
 とか、
 「少しでも勇気を与えたい」
 という言い方をするのです。
 せっかくの善意が、この言い方で、だいなしになってし
まいます。
 
 「勇気を与える」とは、なんと傲慢な言い方でしょう。
 「与える」というのは、上にいる人が、下にいる人に何
かを渡すことでしょう。
 「勇気を与える」という言い方が、結果的に、避難して
いる人を上から見てモノを言っているということに、どう
して気がつかないのでしょうか。

 もし、私が、いま、避難所で暮らしているとすれば、「避
難所の人に勇気を与えたい」という言葉を聞けば、きっと、
「おおきなお世話です」と思うでしょう。

 きょうも、スケートの小塚選手が主催して、愛知でチャ
リティスケートを開いていました。
 それを紹介するNHKのニュースで、アナウンサーが、
 「小塚選手たちが、被災者に勇気を与えようと、チャリ
ティ大会を開きました」
 とやっていました。
 「またか」と思ってそのまま見ていると、小塚選手は「力
が伝わればいいなと思います」と話しています。また、浅
田真央選手は「私たちの演技がパワーになればいいなと思い
ました」と話しています。


 そうなんです。
 小塚選手たちは「勇気を与える」などとは言ってないの
です。
 よかった。
 小塚選手たちを見直しました。
 しかし、では、このニュースはなんだったのでしょう。
 結局のところ、NHKがニュースの原稿を書くとき、選
手が話してもいない「勇気を与える」という言い方を、勝
手に使ったということでしょう。

 言葉で仕事をするテレビ局が、こんな原稿を、勝手に作
ってはいけないでしょう。
 NHKは、反省しなければなりません。

 連休中はスポーツのイベントが多かったので、この言い
方は、非常に気になりました。
 気がついた選手のことを書いておきます。
 2000本安打を達成した巨人の小笠原選手は、
 「(2000本安打で)少しでも明るくなっていただけ
たら」と謙虚に話していました。人柄が出ていました。
 女子ゴルフの佐伯選手は、サロンパスカップで、「勇気
を与えたいと思ってプレーしました」と話していました。
ちょっとがっかりですね。

 「勇気を与える」。本当にいやな言い方です。