いせ九条の会

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柳井俊二前駐米大使の発言を考える/山崎孝

2007-05-22 | ご投稿
【憲法解釈変更が必要 有識者会議の柳井座長】(5月21日付中日新聞ニュース)

集団的自衛権行使に関する政府の有識者会議で座長を務める柳井俊二前駐米大使は21日夕、都内で講演し「日本が置かれた安全保障環境が大きく変わる中、60年前の状況で考えられた憲法解釈で今後も生きていけるのか」と述べ、行使を禁じた解釈見直しの必要性を強調した。

同時に「日本国民の生命、財産を守ることを基本に考えて検討すべきだ。同盟国を助けることは自分たちを助けることにもなる」と述べ、集団的自衛権行使による日米同盟強化が日本の安全につながるとの認識を重ねて示した。

また有識者会議で具体的に検討する方針の4類型のうちのミサイル防衛(MD)については「狙いが日本か米国か見分けるのは技術的に難しい。そのため日本を狙っているか分からない段階で撃ち落とす必要が出てくる」と指摘。その上で「今までの憲法解釈のままだと、せっかくのMDが使えなくなる」と述べた。

この日の講演は、特定非営利活動法人(NPO法人)の主催で行われ、米軍や自衛隊関係者らが多数出席した。(共同)(記事以上)

柳井俊二前駐米大使は「同盟国を助けることは自分たちを助けることにもなる」と述べました。この考え方を具体的な国際情勢に当てはめて見ると、イラクには米軍の撤退期限を明らかにしないマリキ首相を批判する状況があり、米国の侵略に抵抗しているイラクの反米武装勢力と戦っている米軍を自衛隊が武力で支援することが、日本を助けることにつながるという論法です。アフガニスタンで国際的には禁止しようとしている非人道的なクラスター爆弾を使用したり、一般住民を巻き添えにしてタリバン勢力と戦う米軍を自衛隊が武力で支援することが、日本を助けることにつながると言うことになります。中東にエネルギー資源を大きく依存するため、中東の平和と安定が欠かせないという理由をつけたとしても、イラク戦争自体が中東の平和と安定を大きく脅かしている状況を見れば、この理屈は通りません。

日米同盟の実態は、米軍が他国を攻撃するために在日米軍基地を利用してきたと言うのが主要な側面です。米軍が駐留するから日本は攻められなかったと主張しても、日本は他国から攻められた歴史は室町時代にあったのみです。

「日本を狙っているか分からない段階で撃ち落とす必要が出てくる」と述べましたが、これは先制攻撃に相当する主張です。私は外交の専門家であった人がこのような発言をするのに不思議な気持ちがします。外交は国同士で対立する問題が生まれた場合、交渉で双方が折り合える妥協点を見出し、戦争に至らないようにするのが一番の仕事です。それなのに軍事で解決する姿勢を露骨に見せます。本当の有識者といえるでしょうか。

北朝鮮と国交を結ぶ国は154カ国あります。それに米国が従来の軍事的威嚇、政権を崩壊まで視野に入れた強硬路線を転換して、国交正常化まで視野にいれている状況の中で、日本の政治家や有識者といわれる人が、軍事に偏る主張を述べるのは、世界を大極的に見ない視野狭窄に陥ったとしか考えられません。