いせ九条の会

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明確な歯止めは既に示されている/山崎孝

2007-05-19 | ご投稿
【集団的自衛権、行使容認へ4類型研究 有識者会議が初会合】(5月18日付中日新聞より)

政府は十八日午前、憲法解釈上禁じられている集団的自衛権行使の事例研究を進めるため設置した有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の初会合を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は日米同盟の強化と積極的な国際貢献を図るため、解釈見直しによって行使容認に道を開くことを目指しており、懇談会は今秋までに報告をまとめる方針。

首相はあいさつで「北朝鮮の核開発や弾道ミサイル問題など、わが国を取り巻く環境は格段に厳しさを増している。首相として、このような事態に対処できる実効的な態勢を構築する責任を負っている」と強調する一方「何を行い、何を行わないのか。明確な歯止めを国民に示すことが重要だ」と述べた。

具体的な研究事例について(1)公海上で自衛艦と並走中の米艦船が攻撃された際の反撃(2)第三国が発射し、米国を狙った弾道ミサイルに対するミサイル防衛(MD)システムでの迎撃(3)国連平和維持活動(PKO)で、任務遂行への妨害を排除するための武器使用(4)一緒にPKO活動に参加している他国への武器輸送などの後方支援-の四類型とする意向を表明した。

懇談会は、憲法解釈の見直しに前向きな外務、防衛両省の幹部経験者や大学教授ら十三人で構成し、座長には柳井俊二前駐米大使が就任した。

初会合では、出席者から「憲法制定から六十年がたち、国際的な安全保障環境は根本的に変化していることを踏まえる必要がある」「家族や友人が攻撃されて助けないのか。助けるのが集団的自衛権だ」などの意見が出された。

首相は四月の日米首脳会談で懇談会設置を説明するなど、解釈見直しへの動きを加速させているのに対し、公明党は行使容認に反対している。(以上)

安倍首相はあいさつで《北朝鮮の核開発や弾道ミサイル問題など、わが国を取り巻く環境は格段に厳しさを増している》と述べていますが、現在の情勢は東西の冷戦構造から、冷戦の時代に厳しく対立していた、ソ連と米国、中国と韓国、中国と米国の対立関係は大きく改善され、北朝鮮の核問題を東アジアの平和と安定を齎すために6者協議という対話を基調とする方策で解決しようとしています。そして、第一段階の合意に達し、その合意の中に米朝の国交正常化も話し合われる状況が出ています。これを素直に見れば《わが国を取り巻く環境は格段に厳しさを増している》とはいえません。

集団的自衛権の行使の必要なのは、偏に日米同盟の強化の理由だけです。格段の厳しさを増しているのは日米同盟における米国の要求のみです。そしてその米国の行動は6者協議の態度は除き、イラク戦争で典型的に示されているように、世界の平和と安定に役に立たず、逆に世界の平和を脅かしていることが多いのです。

第三国が発射し、米国を狙った弾道ミサイルに対するミサイル防衛システムでの迎撃をすることは、第三国が発射し米国を攻撃する事態には日本を第三国が標的にすることを想定しなければなりません。そうなれば隣家のもらい火に遭うことと同じです。

初会合では、出席者から《「家族や友人が攻撃されて助けないのか。助けるのが集団的自衛権だ」》という一見助けるのが普通ではないかと言う一見常識的な問題設定で集団的自衛権行使の問題が語られています。しかし、友人が攻撃を受けている所が、友人の支配する権利のある領域でないことも考慮にいれなければなりません。他人の支配する場所に出かけていって攻撃をされる場合もあるのです。他人の問題に介入してトラブルを起こすこともありえます。日本の友人である米国は、本来は他国の問題であることに介入する場合がほとんどです。これに日本がつきあうことはないと思います。

安倍首相は「何を行い、何を行わないのか。明確な歯止めを国民に示すことが重要だ」と述べていますが、戦争をしない、戦争に巻き込まれない明確な歯止めは憲法に示されています。それを首相は外そうとしているのです。