いせ九条の会

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教育による戦争の出来る国づくり/山崎孝

2007-05-18 | ご投稿
【教育3法案は廃案に中央公聴会 公述人から批判相次ぐ】(5月17日付「しんぶん赤旗」より)

 与党が十七日採決をもくろむなか、衆院教育再生特別委員会は十六日、中央公聴会を開きました。五人の公述人が意見を述べ、教育三法案の廃案や内容に異論を唱える主張が多く出ました。

 都留文科大学の田中孝彦教授は「国家が教育目標を設定し、競争を組織し、教師の自主性と創造性を低下させることにつながる法案は廃案しかない。より丁寧で本質的な教育再生論議を行う必要があり、論議の土俵の再設定が必要だ」と三法案の廃案を求めました。

 全日本教職員組合の米浦正委員長も「三法案は相互に影響し合って、子どもの成長・発達を助けるという教育の目的を、『愛国心』や『規範意識』を押しつけるものへと変質させ、従わない教員は免許を奪って失職させるなど、教育の国家支配・統制をめざすものだ」と批判し、「三法案の廃案を強く求める」と述べました。

 地方自立政策研究所の穂坂邦夫理事長は、教員免許制度導入について、「運用をうまくしないと大変おかしなことになるのではないか」と疑問を呈しました。

 東京都教育委員会の木村孟委員長(与党推薦)は、日本共産党の石井郁子議員の質問に答え、「それほど日本の子どもの学力が下がったとは思っていない。教育改革の論議はネガティブな面を出しすぎている。『教育再生』という言葉には賛成しない」と話しました。(以上)

全日本教職員組合の米浦正委員長の、教育の目的を、『愛国心』や『規範意識』を押しつけるものへと変質させ、従わない教員は免許を奪って失職させるなど、教育の国家支配・統制をめざすことは、正に戦争が出来る国づくりへの教育面での準備といえます。

田中孝彦教授の「国家が教育目標を設定し、競争を組織し、教師の自主性と創造性を低下させることにつながる」との懸念は、既に東京都教育委員会の下にある学校で起こっています。東京都立養護学校教諭 渡辺厚子さんは、「世界」6月号で次のように述べています。渡辺厚子さんは2007年3月30日、君が代斉唱時に不起立を理由に1ヶ月の停職処分を受けた先生です。

(前略)校長は私に対してのみ、職務命令を連日、全教職員の前でマイクで読み上げた。前任校では、トイレに行きたがった生徒を連れ出すと、教頭が血相を変えて追いかけてきた。あげくに、君が代斉唱の時中座しないよう生徒にオムツをつけろとまで言った。

 「日の丸・君が代」は人を変え、学校を変えた。教員は、何事にも、指示・命令されたから、しているまでで、自分には責任はない、自分だけは生きのびようと黙って従うようになった。機構も完全にビラミッド型になった。おかしい事におかしいと言い、自分の良心の在処を捨てまいとすれば、処分されるか、病気になるか、やめるかしかない。

 大事な友が次々と学校現場を去ってゆく。「もう耐えられない。偽れない。自分が嫌なのに講師に代わりに君が代を弾いてもらうのは、悪くて、自分自身が許せない」と彼女は泣いた。「立たないのではなく、立てない、道は免職しか残されていない。生徒への加害費任に耐え切れない」と彼は声を絞り出した。

 口惜しい。「教えとは希望を人に語ること、学ぶとは誠を胸に刻むこと」

いつまたこの日が来るのだろう。

 私は、教室のスミにわずかに残された自由と、加害を繰り返すまいという思いと、あんな奴らの言いなりにさせてたまるかという意地で、ようようにしてやめないで残っている。

 「日の丸・君が代」は侵略戦争の象徴であったが、今まさに学校の中で、国家に従属する精神の、統合の象徴として機能させられている。そこに問題がある。

 愛国心である必要はない。従属心であってくれればよいのだ。これから、従属心をもった教員によって、従属心やがて愛国排外差別心をもつ子どもが育てばよいのである。(中略)

 教員が再び無自覚に加害行為を繰りかえさず、戦争へと子ども達を追いやらないためには、どんな小さくとも現場で声をあげ続ける必要がある。そのために私は残る。自分を見失わずに、誰かを信じて、もう少し歩いてみたい。

 戦争の責任をとる、新たな戦争に加担しない。自分の心と身体を国家に奪われまい。おそらくこれが私に親しい死者たちの声である。骨の声に耳を澄まし、行ける所までいってみようと今は思っている。(以上)

人としての良心を失わないとする渡辺厚子さんの痛切な心の叫びが聞こえてきます。政権与党の政治家たちは中央公聴会 公述人の批判に聞く耳は持ちません。改憲派の中には日本の民主主義は成熟したと主張する政治家たちがいますが、何を基準に成熟したというのでしようか。成熟した民主主義とは内心の自由を保障することで、自分たちに都合の良い価値観を押し付けることではありません。

教員免許更新制などを盛り込んだ教育改革関連3法案が5月17日の衆院教育再生特別委員会で自民、公明の与党の賛成多数で可決されてしまいました。同法案は18日午後の衆院本会議でも可決されて、参院に送付されました。今国会で成立する見通しと報道されています。

教育の反動化と米国への追従の極みである集団的自衛権の行使を可能にする安倍政権に対して、選挙で打撃を与えないと日本はとんでもないところへ行き着いてしまいます。