いせ九条の会

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自民党の改憲との関連で相対的な観点で改憲問題を捉えよう/山崎孝

2007-05-03 | ご投稿
5月3日は60年目の憲法記念日です。未来永劫とはいえませんが、正真正銘の民主と平和主義に基づく憲法改正まで、現行憲法を守り、そして祝いたいと思います。

「いせ九条の会」は、本日、憲法守ることをアピールするビラ配布を行います。私も参加します。

★NHKのテレビ番組「日本国憲法誕生」を見て

私は先日放送された「日本国憲法誕生」を見ました。番組で得た情報をもとにブログを書きます。

日本の占領を行っていたGHQは日本政府から提出された憲法草案が主権在民ではなく天皇大権を残した旧弊な憲法草案だったために、日本の占領政策を決めることになっていた極東委員会に主導権をとられるのを回避し既成事実を作るために、GHQ自らが早急に憲法草案を作成することになりました。

その時にラウエル陸軍大佐ら憲法草案作成運営委員会が参考にし、取り入れもした鈴木安蔵らの民間の憲法研究会が作成した憲法草案でした。この民間草案は、明治以降からの追求してきた日本人の民主と平和の理念を結実させた、主権在民を謳い、自由と民主、天皇に政治的権限を持たせない、平和主義を骨格にしたものでした。

GHQの憲法草案は日本政府に提示されて、政府が日本的法律の条文にします。政府が条文案でGHQと政府との間に天皇の位置づけなど意見の対立を解消するための交渉があった後、政府は草案を決定し国会に提案します。

政府が国会に提出した草案を審議する各党の議員が参加した委員会が設けられ、その審議の中で、森戸辰男は、国民は健康にして文化的水準の生活を営む権利である「生存権」を盛り込むように提案します。森戸辰男は敗戦で日本人の生活は貧窮し餓死者が出ている現実を見てそのことを強く思ったと言われます。

教育の問題では、小学校が義務教育とされている政府案に中学校を義務教育にすべき、という意見が出されました。全国の教師の強い要望を背景にした意見でした。この主張の大きな理由は、戦時中の浅ましい所業、敗戦後の醜悪な世相は、過去の教育が特権階級や有産階級など恵まれた階層のみに力を注いだ結果と考えました。この主張がいれられて中学校も義務教育で無料とする条項が盛られます。

鈴木義男は、政府案の憲法9条の条文は、戦争をしない、軍備を捨てるということは、ちょっと泣き言のような印象を与えるから、積極的な表現に変えることを提案します。いくつかの変更を重ねた結果、今日の憲法9条の形になったとされます。

その時に文章の構成を変えたことと、9条2項の「前掲の目的を達するため」から「前項の目的を達するため」に変えたことで、内閣法制局の佐藤達夫は「国際紛争を解決する手段」の規定は、それ以外の目的であるならば自衛権があると解釈されて自衛の組織は持てる解釈が生まれると気づきます。

このことは極東委員会で中国の代表権を持っていた中華民国の代表が指摘して、日本は占領終了後に軍隊を持つ懸念が表明されて、イギリスやオーストラリアの代表も同じ考えを表明します。そこでソ連の提案で文民統制の条項を盛り込むよう極東委員会はGHQに注文します。GHQはこの注文を受け入れて日本政府に伝達し政府も了承します。これが第66条の2「内閣総理大臣や国務大臣は、文民でなければならない」です。

文民統制を盛り込んだ意義は、日本が軍部を暴走させて海外で謀略まで起こして占領地を拡大させた。天皇が絶対的権力を持っていたためにこれを軍部が逆手に利用して戦争を拡大させ、アジアの国に大被害をもたらした。日本がこれを繰り返させない方策として極東委員会は考えました。

このように日本の憲法の位置づけは国際的な位置づけをもって誕生し、日本人自らが受身ではなく能動的に加えた条項や積極姿勢を見せて平和理念をもち、国際的には再び日本が軍国主義にならないように歯止めが掛けられた日本国憲法でした。

現在は、防衛庁制服組より政治家の方が先制攻撃論や核武装論を発言して軍事指向です。安倍首相は、日本の歴史的経緯から日本国憲法が国際的な位置づけをされていた意義を認識せず、もっぱら日米同盟という観点から憲法を捉えて、その必要性なるものから自衛権の拡大解釈をさえ企図しています。しかし、これ以上の自衛権の拡大解釈は出来ません。最大限の解釈をしてみても憲法は日本が攻められたときのみに発動できる自衛権です。

★朝日新聞社は5月2日、憲法60年世論調査を発表しました。改正必要は58%、必要がないは27%でした。しかし、憲法9条に対する評価は「平和に役立ってきた」は78%あります。自民党の新憲法草案で掲げた自衛隊を「自衛軍」に変えることは18%で、自衛隊は「そのまま」で良いは70%でした。改正の理由で一番多いのは「新しい権利や制度を盛り込む」が8割に達しています。この「新しい権利」とされるプライバシーや環境権を盛り込む考えは、現行憲法の理念と矛盾するものではありません。個人の尊重や生存権という考え方を十二分に包含しています。制度は憲法の理念に基づいて法律で出来るものです。

朝日新聞社の世論調査結果は、改憲の立場を取る人たちは、改憲問題を自民党の改憲の狙いを考慮にいれ、現在の在日米軍再編よる日米軍事組織の一体化という政治的情勢と関連させて改憲問題を捉えていないことが分ります。

現在の政治的な局面として憲法問題を捉えず、政治的な波風の立っていない平面で捉えるように改憲問題を考えていないでしょうか。そうでない限り、自衛隊をそのままにする考えが多いとか新しい権利などを改憲のポイントするはずはありえないと思います。

現代の大衆心理として、とりあえず改憲派が多いらしいから「勝ち組」の潮流に乗り、世論調査の個々の質問には本音で回答するというようなことを行っているとも思ってしまいます。

自民党改憲の最大の狙いは、朝日世論調査結果の70%の人が「自衛隊はそのままで良い」と思っていることとは全く違い自衛隊を「自衛軍」にして日米同盟において集団的自衛権行使を可能にするためです。このようになれば憲法9条は「平和に役立つ」ことは出来ません。

改憲の立場を取る人たちが自民党改憲の狙いとの関係で憲法改定問題を相対的な捉え方をしていただくように宣伝する必要があります。
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