いせ九条の会

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ARFについて/山崎孝

2007-05-26 | ご投稿
【北朝鮮ミサイル:6カ国協議影響なし ヒル次官補が見方(毎日新聞 2007年5月25日付より)

マニラでの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)高級事務レベル協議に出席した6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は25日、北朝鮮のミサイル発射について「今回は短距離ミサイルであり、これまでにも、たびたび(発射訓練を)繰り返してきた」と述べ、6カ国協議に影響はないとの見方を示した。

ヒル次官補は同夜、マニラを出発しバンコク経由でインドネシアに向かった。(以上)

NHKのニュースは、ホワイト・ハウスのスタンゼル副報道官は、「これまでも行なわれてきた訓練の一環だと思う」と述べ、問題視しない。米国務省のケーシー副報道官は「北朝鮮の軍事動向に根本的な変化があるわけではなく、ミサイル発射を凍結するという合意に反するものでもない。6カ国協議の行方に特別な影響を与えることはない」と述べ冷静な対応を強調した、と伝えています。

これらのニュースは、米国は6者協議を対話路線で問題を解決すると言う態度は確固としたものと受け取れます。

私は毎日新聞の記事を読み、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)について知識がありませんでしたので調べてみました。次の文章は、日本の外務省のホームページに掲載されているASEAN地域フォーラム(ARF)の説明です。

ASEAN地域フォーラム(ARF)の概要 平成18年8月21日

1. 目的・特色

ASEAN地域フォーラム(ARF)は、1994年より開始されたアジア太平洋地域における政治・安全保障分野を対象とする全域的な対話のフォーラムであり、安全保障問題について議論するアジア太平洋地域における唯一の政府間フォーラム。ASEANを中核としていることが特徴である。現在参加しているのは25か国+EU。

政治・安全保障問題に関する対話と協力を通じ、地域の安全保障環境を向上させることを目的とする。外交当局と国防・軍事当局の双方の代表が出席。

毎年夏に開催される閣僚会合(外相会合)を中心とする一連の会議の連続体であり事務局をもつ組織体ではない。

コンセンサスを原則とし、自由な意見交換を重視する。

1)信頼醸成の促進、2)予防外交の進展、3)紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指している。

2. 活動の評価

これまでの会合を通じて、率直な対話を行う機会は増しており、従来は「内政干渉」として忌避される傾向にあった参加国自身を当事者とする問題(朝鮮半島情勢、ミャンマー問題等)を含めて、率直な意見交換を行う慣習が生まれつつある。また、具体的な信頼醸成措置(年次安保概観ペーパーの提出、各種会合の開催等)が実施されており、参加国間の信頼関係の醸成に大きく貢献している。

2001年の第8回閣僚会合ではARFの活動の第二段階である予防外交への取り組みの基礎となる考え方として、「予防外交の概念と原則」他2つのペーパーが採択され、2002年の第9回閣僚会合では、ARFの将来に関する9つの提言が採択された。

さらに、2004年のARFユニット(事務局的な役割を行う)設置、2005年の「ARF基金設立のための付託事項」の採択、2006年の第1回専門家・賢人会合開催など具体的な取組が増えており、現在は第一段階から第二段階の過渡期にある。

ARFはアジア太平洋地域における安全保障面での対話と協力の場として緩やかではあるが、着実に進展していると評価できる。

非伝統的な安全保障分野での協力が促進されており、特に、テロ対策に関する事務レベル会合が定期開催され、外交当局のみならず実務当局者も会合に参加するなど、テロ対策において信頼醸成のための対話を越えた「実務的」な協力が進められている。

3. 参加国・機関

 ASEAN10か国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポール、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)、日、米、加、豪、ニュージーランド、韓、北朝鮮、中、露、パプアニューギニア、インド、モンゴル、パキスタン、東ティモール、バングラデシュの25か国及びEU。(以下略)

憲法解釈を変更してまで日本が集団的自衛権行使を可能にすることを視野に入れた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の初会合が5月18日に開かれ、その懇談会で安倍首相は、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの問題などをあげて、日本を取り巻く安全保障環境は格段の厳しさを増していると述べています。この安倍首相の情勢認識と、日本の外務省のアジアについての《ARFはアジア太平洋地域における安全保障面での対話と協力の場として緩やかではあるが、着実に進展していると評価できる》という情勢認識には食い違いがあります。

外務省の説明は昨年段階の評価ですが、その後に北朝鮮の核実験がありましたが、それを乗越えた6者協議の合意の成立もありますから、情勢はARFにとってもプラス方向に進んでいると思います。

ARFが《1》信頼醸成の促進、2》予防外交の進展、3》紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指して》いますから、信頼醸成の促進させ予防外交の進展させる努力をすれば、やはりわざわざ憲法解釈まで変える必要はありません。それに本年の1月には東南アジア諸国連合と日中韓で確認された東アジア共同体の構築構想もあります。

日本周辺の軍事紛争を想定して、日米の軍事同盟を強化することより、現行憲法の精神を生かして、多国間で地域の平和と安定を図る方がより合理的で、恒久的な平和に近づけると思います。