いせ九条の会

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理想主義を掲げて人類は歩んできた/山崎孝

2007-05-04 | ご投稿
六十年の重み (4月28日付中日新聞【編集局デスク】より)

憲法が来月三日、満六十歳の誕生日を迎える。人間で言えば、還暦である。明治憲法よりも長生きしている。この長寿の憲法を、安倍首相は一刻も早く死に追いやりたがっているらしい。

改憲手続きを定める国民投票法案を強引に今国会で成立させるのにほぼ成功すると、今度は憲法が禁じている集団的自衛権の行使について有識者懇談会を発足させた。メンバーは行使容認派ばかりで、結果は目に見えている。

「戦後体制からの脱却」を看板にし、改憲を公言している安倍首相。最大の狙いが、戦争を放棄し戦力を持たないとうたった九条を改めることにあるのは明らかだ。

確かに、これまで自衛隊の位置づけや海外派遣などをめぐって、へ理屈とこじつけの解釈で九条を空洞化させる、いわゆる「解釈改憲」がなし崩しに重ねられてきた。

九条に込められた平和への理想も、現実とのズレがこれほど大きくなってしまったのだから、憲法の方を変えるべきだ、との主張も一理ある。理想を現実に合わせろ、というわけだ。

しかし、それは理想を捨てろ、というに等しい。理想の旗を掲げ続けることは、無駄なのだろうか。

この旗について、評論家の加藤周一さんはこう述べている。「(世界平和という)遠大な理想に向っての曲折にみちた人類の歩みにおいて、一歩先んじたのが、日本国憲法の理想主義であろう」(「夕(せき)陽妄語(ようもうご)」朝日新聞社)。

私たちには、何よりも世界に誇れる実績がある。日本はこの六十年間、ただの一度も他の国と戦火を交えず、武力によって一人として殺したこともなく、一人として殺されたこともない。先進国の中では日本だけである。

旗は風にあおられ、ズタズタに破れてはいるが、人類の理想という確かな重しがあったからこそ、揺るがず歩んでこれた、と私は思う。世論調査でも大半の人が、九条について「戦後の平和と繁栄に役立った」と認めている。

還暦を迎えても、今は誰も若々しい。九条だって、まだまだ若い。無理やり寿命を縮めてはならない。(名古屋本社編集局長・加藤 幹敏)(以上)

加藤幹敏さんは《旗は風にあおられ、ズタズタに破れてはいるが、人類の理想という確かな重しがあったからこそ、揺るがず歩んでこれた、と私は思う。》と述べています。私は賛成です。

歴代自民党政権の政治は、憲法の平和主義から逸脱して日本の現状を理想から乖離させてきました。この状態に国民は、憲法の理想主義に愛想を尽かのでしょうか。愛想はつかしてはいません。

最近の新聞各紙の世論調査は、憲法9条を評価する声が圧倒的です。読売新聞4月6日付は、憲法が「日本に平和が続き、経済発展をもたらした」という意見には87%が「その通りだと思う」と回答。朝日新聞5月2日付も、78%が「日本が平和であり続けたことに九条が役立ってきた」と答えています。

国際社会も理想主義に愛想は尽かしていなく、イラク戦争の反対は続いています。国連も国連憲章第42条を適用して紛争を解決しようとはしていません。日本国憲法の理想主義とは裏腹の行動をした米英のイラク戦争、アフガニスタンにおける武力を主体にしたテロとの戦いは成功を納めてはいません。武力を信奉する政治家はみな失敗しています。英国のブレア首相はイラク戦争を行ったことが大きく影響し責任を問われて引退します。

人類は不条理な制度を、理想を掲げ次々と克服してきています。奴隷制や、生まれたときからの身分を縛った封建制の打破をして遂には自由と民主主義の制度を多くの国で実現します。植民地主義の克服、民族自決、そして第二次世界大戦の教訓を踏まえた国連の結成と国連憲章の制定をしました。国連はこの憲章を守りながら活動しています。理想を捨てずにいれば必ず実現できると思います。