JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
JR東海 〇ニ東京駅発行岐阜羽島ゆき区間変更券
平成元年7月にJR東海の東京駅新幹線乗換改札にある精算出札窓口で発行された、岐阜羽島ゆきの区間変更券です。東京駅までの定期券を原券として買い求めたものです。
青色JRC地紋のA型大人・小児用券で、名古屋印刷場で調製された常備硬券式の改札補充券となります。
当時の東京駅の新幹線乗換改札口には、改札口正面にマルス端末もしくは印発機が置かれたJR東海直営の窓口が横一列に並んでいましたが、国鉄時代からの名残りで、両端にある2つの窓口は日本交通観光社(日交観)が受託する窓口となっており、発行箇所名の頭に「〇ニ」の符号が付けられている硬券か、常備券のない区間については駅名式の改札補充券が発行されていました。
裏面です。
東京都区内発の乗車券ですので東京都区内での途中下車ができない旨が記載され、その下には原券が100km以内の乗車券や「〇ム」乗車券の場合は原券控除をする関係から、表面の金額から原券分の金額を控除した際に「(コ)〇〇円」と記載する旨が書かれています。「(コ)」は「控除のコ」を示すものと思われます。一番下には「〇ニ 東京駅発行」と発行箇所名が記載されています。
日本交通観光社(日交観)は昭和30年に国鉄自動車線における駅業務を受託する組織として設立された法人で、全国に140の駅員配置駅と300程の業務委託駅が存在したと言われています。
駅は鉄道駅と同様に旅客や荷物・貨物を扱っており、戦後の復員兵によって過剰人員を抱えていた国鉄の退職者対策として拡大され、国鉄末期には国鉄OBの受け皿になっていたようです。
以後、国鉄からの業務委託の他に旅行業や広告業、保険代理店業なども手掛けていたようでしたが、国鉄民営化によって営業区域を東日本旅客鉃道の管内のみに縮小して子会社として存続し、他地域は各旅客鉄道会社の関連会社として分社・移管され、現在に至っています。
東日本旅客鉃道(JR東日本)の子会社となった部分は、のちにJR東日本の子会社であるJRバス関東の子会社(孫会社)であるジェイアールバステックとなり、現在は駅委託業務からは撤退しているようです。
今回御紹介の区間変更券を発行したのは日交観ですが、国鉄民営化から間もない頃はこの窓口のようにJR東海の業務分野までも受託していた例があったものの、これは国鉄時代に東京駅の駅業務を受託していた関係から引き継がれたもので、日交観がJR東日本以外の旅客鉄道会社の業務を受託していた珍しい事例であると思われます。
ちなみに、国鉄民営化によって日交観が分社されてJR東海の関連会社となった企業が、駅業務の委託の他に城北線などの路線も保有する東海交通事業になります。