JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
桜木町⇔横浜間の選択乗車に於ける乗車券
昭和28年10月に桜木町駅で発行された、横浜駅ゆきの片道乗車券です。
桃色こくてつ地紋のB型相互式大人・小児用券で、東京印刷場で調製された券となっています。まだ時代が時代でしたので、「櫻木町」や「横濱」など、旧字体が残る様式です。
裏面です。
「國鉄線、東横線、いづれにも乗車できます」という注意書きがあります。
これは当時戦時中の「運賃プール制」という事情から開始された連絡運輸会社線相互間の選択乗車制が行われていたために書かれていたものです。
運賃プール制は、並行する営業区間をもつ連絡運輸機関相互間で、原則としてその区間の運賃が同額であり、かつ両端駅が共同使用駅の場合に旅客運賃をプール制にし、共通乗車券制または旅客の選択に任せ、関係運輸機関は特別の実績調査を行い、その運輸量に応じた割合で運賃を収受するというものでした。これは旅客の利便性を向上すると同時に運輸機関当事者も取扱いが能率化される効果を期待したものと言われ、戦時体制化の輸送能率向上または交通調整の目的で各運輸機関相互間に推進されたようです。
桜木町⇔横浜間については昭和17年から開始され、根岸線桜木町~大船間が開業する前の昭和37年10月に制度が廃止されたようです。
昭和36年8月、国鉄は不正乗車を防止するために最低区間のみを赤刷券として発行することを受け、東京印刷場では東京および千葉局用の最短区間用の券を赤刷りとすることとし、当該区間についても赤刷券として登場しています。
地紋が見づらいですが、桃色こくてつ地紋のB型券相互式大人・小児用券で、東京印刷場調製の券です。
裏面の注意書き部分です。
裏面についてもすべて赤刷となっています。面白いことに、昭和29年当時の券では「いづれにも…」という表記になっていましたが、この券は「いずれにも…」という表記に改められています。昭和34年の券を見ると既に「いずれにも…」に改められていますので、昭和30年代初頭に修正されたものと思われます。