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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (119) 長尾家 32

2024年06月22日 15時07分30秒 | 甲越軍記
 景虎に対面した駿河守は、景虎の風貌をよくよく見れば、識量人に優れ、勇威寛大にして、天性の名将の気が備わり、駿河守はたちまち大いに帰伏して、甥の宇佐美行孝を人質として霊社の起請文を添えて景虎にたてまつり、これより無二の味方となった。

景虎は宇佐美が軍術に秀でていると聞き、これを師として軍法を学んだ
駿河守は軍の備え、奇計の奥義、および孫子、呉子など奇正の法を逐一伝えた
景虎は一を聞いて十を悟る英才あってその軍学、討論も師の駿河守を超えたので、駿河守も舌を巻かざるを得なかった。

その頃、栃尾の城内に由縁の者ありと廻国の僧が逗留していた。
その名を益翁という、生国は飛騨の落合の産で田畑を数多作り、財に富んでいたが、性質は勇猛なので、物を物ともせず、好き放題勝手の暮らしぶり
その妻もまた夫に倣い人を使うこと犬畜生の如し、少しでも気に入らないと杖で殴る、あるいは赤裸にして、木から吊るして下から火であぶるなどの責めごとを好んだ。
ところが、この妻は一朝、おかしな病にかかった
昼は何事も無いが、夜になれば悲しみ叫んで狂いまわる、そのお様は憑物あるが如し
治療をしても、巫女を雇って祈れども少しの甲斐もなく、毎夜責められるがごとくそれは続き、すでに四月たつが一向に治らない
このため心身疲れ、体はやせ細り骨と皮ばかりの姿になりにけり

夫も藁をもすがる思いで卜者に占ってもらうと、「三人の客を得て吉なり」という
だが、三人の客がどうするとも、どうすれば良いとも言わなかった
ある夜、三人の旅人が戸を叩き、一夜の宿を求めて来たので「これこそ」と夫は喜び、早速に招き入れた。
その夜、旅人はこの家の一室から苦しみ呻き、泣き叫ぶ物音に目が覚め、ただ空恐ろしく、とうとう一睡もできずに夜が明けた
夜が明けると、物音は鎮まり静かになった。

旅人は昨夜の騒ぎを主人に問うと「これこれしかじかで」と、すべてを話して
「あなた方こそ、三人の客そのものですが、なにか心当たりはありませぬか」と聞いたが、三人とも何も知らぬ様子であった。
この夜もまた三人はこの家で泊まったが、またしても夜更けに、また奥の方で鳴き叫び、苦しみもがく叫び声が狂うがごとく聞こえて来た。
旅人たちは皆、生きた心地も無くもはや寝ることもならず、外に出て高塀の辺りを徘徊していた
すると怪しや、この家の前庭より瘦せ衰えた女が、しとしとと出て来た
三人は生きたここちもしなかったが、息を詰めて伺っていると、怪女が家を出たとたん、奥の叫び声は止んだ
怪女が再び家に入ると、またしても奥の間からは泣き叫ぶ声が聞こえてくる
三人は「これこそ怪女の仕業であろう」と合点がいき、東に帰っていく女の後を付けて行くと、東の村はずれの大きな榎の木のもとで消え失せた
三人は夜が明けるまで、木の周りを巡って探したけれど、何もわからなかった

家に戻ると、主が三人を表まで迎えに出てきて「やはり卜者が言う通り、あなた方三人が来てくれたおかげで、昨夜より妻はぐっすりと快眠した、このようなことは、発症いらい初めてのことである、まことにありがたき事です
いかなる方法を使われたのか」と問うた。





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