滋賀市民運動ニュース&ダイジェスト

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【0603/14:大津、猿害問題】3月17日、市長が猿を殺さずに群れごと収容し飼育する方針を表明

2006-05-05 23:45:26 | Weblog

滋賀県が3月14日に、大津市内で民家などを荒らし被害を及ぼしているニホンザルの群れ(大津E群)の一部を射殺することにより駆除するという大津市の申請を許可しましたが、大津市長は3月17日、記者会見を開き、このニホンザルの群れ全体を保護のために収容し飼育するために、飼育するための檻を建設する方針を正式に表明しました(ニュース番号0603/6を参照)。

目片市長は「子どもたちに命の尊厳の大切さを教えている。極力、猿を殺したくない。県から射殺による駆除の許可をもらったが、できれば飼育檻で問題を打開したい」としており、群れごと収容する飼育檻の建設を決断したとのことです。檻を大津市山上町の比叡山中にある市営放牧場の中に建設する方向で、6月議会で補正予算を組むとされています。

この結果、当面、市は射殺による駆除という方針を残したまま、檻の建設を急ぐという「二重の作戦」で臨むことになります。

延暦寺も「猿を殺さず、一番良い方法」として、檻の建設を評価しており、また針葉樹が8割を占める大津E群の猿の生息域で、動物の餌になるドングリがなる広葉樹の植樹を広げていく方針であるとしています。しかし植樹により森を変えるには時間を要し、市猿害対策室は「被害は待ってくれない」としており、射殺による駆除は秒読みの段階に入っています。

《これまでの経過》
大津市の坂本地域から南の比叡山を生息地とする大津E群のニホンザル(約50匹)は農作物を荒らすだけではなく、食べ物を求めて民家にも侵入し、被害が深刻化しています。このため大津市は、群れの一部13頭を射殺することにより「個体数調整」を行うことを3月8日に県に対して申請し、県は3月14日に雌ザルと子ザルは射殺しないことを条件にこの申請を許可しました。この許可を受けて大津市猿害対策室はできるだけ早急に射殺を行うとしていました。しかし全国的にもまれな「個体数調整」(射殺による駆除)に対する反響は大きく、大津市民をはじめ全国から「猿を殺すな」との声が数多く寄せられ、野生動物の生態系を維持する活動を続けている日本熊森協会(本部、兵庫県)などの動物保護団体からも強い反対の声が寄せられていました。

市猿害対策室が射殺による駆除に踏み切った最大の理由は「人を怖がらない習性が親から子、孫へ受け継がれている」という大津E群の特殊性のためであり、E群と他の群れとの大きな違いは、この人慣れの習性であるとされています。市猿害対策室によれば、40年ほど前に、京都大学の研究グループが調査のために比叡山で餌付けを始め、その後、比叡山ドライブウェイが開通し、観光客も餌を与えるようになったとのことです。大学による調査のための餌付けの後、市が1984年ごろから餌付けを行い、このころから比叡山のふもとに出没するようになりました。その後、猿による被害が増え続けているため、市は「放置できない」としてE群全体を「駆除」(射殺)する方針を固め、県に許可を求めましたが、専門家による検討を経て許可されたのは群れの3割を「駆除」することであり、3割を「駆除」して、その後の動向を検証するという方針が決定されていました。

(3月17日、18日、27日付け、京都新聞より)