Media Close-up Report 東京オリンピック ラグビーW杯 五輪レガシー 放送・通信・ICT 

4K8K 5G AR/VR AI 新国立競技場 FIFAW杯 メディア評論 国際メディアサービスシステム研究所

パリオリンピック2024 選手村 史上最高のエコ選手村 地下水床冷却 エアコンなし 東京オリンピック選手村比較 マンション販売苦戦 サン・ドニ地区の「産業荒廃地」再開発

2024年08月10日 10時23分33秒 | パリ五輪2024

Paris2024 オリンピック・パラリンピック選手村(Olympic‐Pararinpic Village)




出典  Paris2024
選手から不満続出 Paris2024選手村 「エコ五輪」の反動か
 3回目の開催となるParis2024を組織委員会は大会を控えて史上最高の低炭素・エコ五輪になるという野心に充ちた目標を掲げた。「カーボンニュートラルな競技大会」がキャッチフレーズである。2012年ロンドン大会と2016年リオ大会の平均カーボンフットプリント、350万トンの二酸化炭素排出量を半分(175万トン)以下に減らすことを目指している。
 しかしこの「エコ五輪」が開幕序盤から批判にさらされている。食事から寝る場所まで、炭素を画期的に減らすための試みが選手たちの反発にあったためだ。
セーヌ川沿いに新たに建設された82棟約7200室も配備されたの選手村、この選手村が批判にさらされている。
苦情の中心は3000人が利用可能なレストランと提供さるる食事だ。
 英紙タイムズなど現地メディアによると、英国選手団がベジタリアン中心の選手村の食事に不満を爆発させた。英国オリンピック協会(BOA)のアンディ・アンソン最高経営責任者(CEO)は「卵や鶏肉、特定の炭水化物など、特定の栄養素が十分ではない。選手に生の牛肉が提供されるなど食べ物の質にも問題がある」とし「数日内に劇的な改善が必要だ」と述べた。
 ある英国選手は「今大会は持続可能性を高めて菜食中心を掲げていたが、混雑する時間帯に(食堂に)行くと鶏肉を一切食べることができない」とした。
ドイツの大衆紙『Bild』は、選手村の模様を伝えたリポートでホッケー男子代表選手は「控えめに言っても食事のレベルは最悪だ」と断言。さらに「ピーク時には長い時間、人の列に並ばなければいけない。そうするとやっと食事を手にした時には座席も少ない。まったく信じられない」と混雑状況に苦情を呈した。

「フレンチフライ」のないパリ五輪
 パリ五輪組織委員会は大選手村で提供する食事を、肉類の比重を大幅に減らし、その代わりに植物性タンパク食品を2倍に増やした。選手や大会スタッフ、ボランティア、観衆など約1300万人が食べる食事の炭素排出量を減らすためである。選手村で提供されるメニューも半分を100%ベジタリアン料理で構成した。天ぷら器の使用が難しいという理由でフライドポテト(フレンチフライ)もメニューから外した。
 しかし、食事に対する選手の不満が高まると各国は対策を講じ始めた。英国は追加でシェフを派遣することを決めたほか、韓国の場合は肉などを含んだ昼・夕方の弁当を準備して選手たちに提供し始めた。
 これに対して選手村に食事を供給しているSodexo Live!は「選手たちの意見を真摯に受け止めている。食事の供給を増やすために努力している」と改善すると説明した。

出典 Paris2024

「炭素の排出を半分に」聖火もバイオ燃料供給
今大会で変化したのは食事だけではない。
組織委はまず建設部門の炭素排出量を減らすため、競技場をはじめとする大会インフラの95%を仮設で整備するか、既存のインフラを使用することにした。
 五輪聖火にもバイオ燃料を供給するなど親環境エネルギーの比重も高めた。この他にもエッフェル塔補修工事から回収した鉄道メダルを製作したり、リサイクルプラスチックで競技場座席を作ったりするなど環境に配慮した五輪のためにさまざまな試みを行った。

蒸し風呂宿舎・バスに不満続出…猛暑パリ
食事だけでなく、冷房も問題になった。組織委はエネルギー節減のために選手村にエアコンを設置しなかったほか、競技場に移動するバスでもエアコンの使用を制限した。暑さの中で選手はコンディション管理に困難を訴え、一部の選手団は近隣のホテルに宿舎を移動した。
 天気も変数だ。開幕式からパリに雨が降って夏の猛暑の熱気をそれなりにおさえ込んでいるがが、30日(現地時間)に35度を超える暑さが予報された状態だ。厳しい猛暑になる場合、冷房エネルギーの使用にともなう炭素排出も増えざるを得ない。組織委は大会が終わって秋にも正確な炭素排出量を発表する予定だ。(出典 中央日報など)


史上最も華麗なセーヌ川開会式で幕を開けるParis2024

Paris2024 セーヌ川開会式 出典 Paris2024
 パリ五輪2024は、7月26日から8月11日まで開催され、32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞った。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。日本選手団は史上最高の409名、JOC(日本オリンピック委員会)は、金メダル20個、メダル総数55個を目指す。
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。大会期間中には約1500万人以上の観光客がパリを訪れ、チケットの販売枚数は史上最高の880万枚以上に達する。
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。大会期間中には約1500万人以上の観光客がパリを訪れ、チケットの販売枚数は史上最高の870万枚以上に達する。
 主要競技会場は、、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッド廃兵院などのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
 異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計41の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
 オリンピック選手村は、パリ北部のサンドニに約20億ユーロ(約3200億円)を投じて建設された、約70%が民間資金で、公的資金は6億5000万(約1000億円)ユーロが投入された。
 大会期間中は約14000人の選手や関係者、計2万3500人の宿泊施設となる。大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生、低所得者層向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイス・スペースも整備される。最初の居住者は 2025 年春に入居する予定だ。
 開催経費は、インフレの影響で当初予算から約35%増加し、組織委員会予算で約44億ユーロ(約7400億円)、競技会場やインフラ整備を担当するオリンピック施設庁(SOLIDEO)予算で約45億ユーロ(約7600億円、合計89億ユーロ(約1兆5000億円)程度とされている。
 ちなみにTokyo2020では組織委員会経費が6404億円、国や東京都が7834億円、計1兆4238億円、ほぼTokyo2020と同額の開催経費となった。
 開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。

 Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、6000から7000人を乗せた85隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)を40分間かけて航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料招待席22万2000人)に半減された。
 パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能な席は無くなった。
 セーヌ川沿いには観客のためにルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設けられる。セーヌ川沿いの住宅やビルなどがからチケットを持たない20万人が観戦すると見ている。
 開会式の芸術監督はフランスの演出家トーマス・ジョリー氏が務める。パラリンピックの式典の芸術監督も担当する。詳細は明らかにされていないがフランスの多様な文化的景観を反映させて、伝統と現代の要素が融合したものになるという。
 式典の振付師モード・ル・プラデッ氏は、パレードルート沿いのすべての橋にダンサーを登場させ、音楽とダンスで選手団を歓迎すると発表。式典には合計3,000人のアーティストが参加するが、そのうち400人を動員する。 全員がダフネ・ビュルキがデザインしたユニークな衣装を身にまとうという。
 フランスのテレビ司会者で衣装監督のビュルキは、ドレスメーカー、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティストのチームを監督する。持続可能性への取り組み、新しいデザインに加えてヴィンテージやリサイクル素材を使用する。世界のファッション界をリードするフランス、どんなコスチュームで登場させるのか注目だ。
 セーヌ川のパレードに引き続き、エッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)では120人の海外首脳や政府関係者が参列して式典が行われる。
 またコンコルド広場(Concorde square)や市内各所にはイベント広場が設置され、パリ市内は五輪一色に染まる。
 Paris2024のエスタンゲ会長は、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。

セーヌ川開会式パレードのコース   出典 LeMonde/Paris2024


パリオリンピック 競技会場 完全ガイド Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report


出典 Paris2024
エコ選手村を目指したParis2024 サン・ドニ地区の「産業荒廃地」再開発 
 Paris2024の選手団と大会関係者の宿泊施設となるオリンピック・パラリンピック選手村は、サン・ドニ(Saint-Denis)、サン・トゥアン(Saint-Ouen)、、リル・サン・ドニ(L'Ile-Saint-Denis)の 3 つのエリアに整備された。82棟、約7200室が建設される。
 この事業の主任都市計画者で建築家であるドミニク・ペロー氏は、選手村の巨大な建物群をセーヌ川に垂直に配置し、波止場に停泊する大型ボートのように設計したという。
 選手村の中心に立地する映画スタジオ複合施設のシテ・デュ・シネマ(Cité du Cinéma)は、元発電所を復元したもので、新しい地区のシンボルである。このスペースは、選手村の中核となるメインダイニングが設置される。選手村の設置されたエリアは工場や発電所が集積した「産業荒廃地」とされ、低所得層の労働者が多く住む開発がパリ市内で遅れていた地域で、大会開催を契機に再開発してParis2024のレガシーにする計画だ。
 オリンピック期間中は14,250人の選手、パラリンピック期間中は9,000人の選手を収容する。毎日最大6万食の食事が提供され、アスリートのためのトレーニングエリア、フィットネスセンター、診療所などが常時利用可能となる。
 選手村の建設費は約 20 億ユーロ (22 億ドル 約3200億円) で、70%は不動産開発業者による投資だが、公的資金から 6 億 4,600 万ユーロ (7 億ドル 約100億円)が拠出された。
 ちなみに東京2020の選手村の建設費は、1057億円(再開発整備費[用地整備]約540億円、宿泊棟内装費約500億円)を東京都が負担し、三井不動産グループの開発総工費は約540億円とされている。
 大会後、選手村のエリアは再開発されて6000人が住むニュータウンに衣替えする。


出典 SOLIDEO
 選手村のメインストリートには実験的な屋外空気清浄機を5台設置。未確認飛行物体(UFO)のような巨大な空気清浄機の塔は、掃除機のように設計されており、汚染された空気を吸い込み、危険な粒子を除去する。製作したジェローム・ジャコモニ氏は、の装置は「あらゆる大きさの粒子状物質の95%」を浄化できると語った。5台の装置は1時間当たりオリンピック競泳用プール40個分の大気をごくわずかな電力で浄化できるという。

• 52万平方メートルの敷地 約 82 棟の建物
• 2,500棟の住宅 約6000人が居住 (約70%が個人所有)
• 770棟以上の高齢者、学生用住宅
• 2つの学校
• 80,000平方メートルのオフィスエリア(6000人のワーカー)と都市サービス
• ホテル(トゥール プレイエル Tour Pleyel)
• 3,200平方メートルの近隣商業エリア
• 3ヘクタールの公園と約7ヘクタールの庭園と公園
• セーヌ川沿いの散歩道と自転車レーン
• セーヌ川沿いの散歩道と自転車レーン
• リル・サン・ドニとその他の地域を結ぶ新しい歩道橋
• サン・ドニ・プレイエル地下鉄駅(隈研吾設計)
• 通行量の多い幹線道路A86から環境を守る防音壁








段ボール製ベット 部屋の内装は簡素なつくり
 オリンピック・パラリンピック選手村を建設するコンソーシアムは、2019年3月に活動を開始し、SOLIDEO(オリンピック施設の納入を担当する企業)の行った入札に応札した。選手村は先駆的な環境基準を遵守し、大会中のアスリートの居住施設としての要件を満たし、大会開催後は何年にも渡って地域社会に利益をもたらす「未来都市」を目指す。
オリンピック後、選手村開発事業者は2024年11月に選手村の住宅ユニットの再利用を開始する予定である。周辺一帯の再開発も進め、2025年に誕生する「未来の都市」に選手村も吸収される。
 選手村には5つの居住エリアがあり、それぞれアベス、バスティーユ、ドーフィーヌ、エトワール、フェットというパリの有名なエリアにちなんで名付けられている。 アパートメントの広さはさまざまだが、1 部屋(12平方メートル)2名が基本で最大 8 名の部屋もある。バスルームは 4 名につき 1 個所が備えられる。
 各部屋にはベッド(1万4,250個)、羽毛布団、ベッドサイドテーブル、扇風機(8,200個)、ソファ(5,535個)など備えられ、34万5,000個以上の物品を調達する。設備やサービスの大半はスポンサーが提供だ。


段ボール製ベッド 出典 Paris2024
  東京2020に引き続きベッドは段ボール製で、日本の製造メーカー、エアウィーヴ社が提供、最大 250 キログラム (約 550 ポンド) の重量に耐えることができる。アスリートの体格に合わせてカスタマイズできる約1万6000床のマットレスが供給されることになっており、バスケットボール選手用に2.2メートルまで拡張できるという。段ボール製のベッドフレームが80パーセントのリサイクル材で造られ、フランスで組み立てられる。選手村の責任者は、パリ大会後に「新たな命を吹き込む」ためにリサイクルする予定だとしている。ベッドの高さを高くすることでパラリンピアンにも使用可能で、 「車椅子に乗っている人は、実際に車椅子からベッドへの移乗が非常に簡単にできます」と関係者は語る。 ボーナスとしてリバーシブルの羽毛布団が提供され、オリンピックでは青色の面、パラリンピックでは緑色の面を使用する。パリ五輪終了後、ベッドフレームはリサイクルされ、マットレスや枕は教育機関や公共性の高い団体などに寄付されることになっている。

室内の内装は極めて簡素  出典 Paris2024

3260席のメインダイニング シェフ自慢のコース料理からベジタリアン料理まで 4つのテーマエリアで4万食を提供 

選手村のシンボル シテ・デュ・シネマ 出典 SOLIDEO
 シテ・デュ・シネマ(Cité du Cinéma) 映画監督兼プロデューサーのリュック・ベッソンに設立された映画スタジオ複合施設、1933年設立された発電所を復元・改装、エリアのシンボルになっている。この施設を改装してメイン・ダイニング・ホールが開設される。メイン・ダイニング・ホールは 座席数 3,260 席、24 時間営業で、約15,000人の選手たちに毎日 40,000 食の食事を提供する。フランス料理、アジア料理、アフリカ・カリブ料理、世界の料理の 4 つのテーマエリアが設置され、毎日、4つのカテゴリーから40種類の異なる食事が提供される。
 30種類以上の野菜が並ぶサラダバー、肉とサイドメニューを焼くグリル、チーズコーナー、ベーカリーコーナー、辛味料理のビュッフェ、デザートバー、多種多様な果物が提供されるフルーツバーなども用意される。料理の500種類にも及ぶ。
 選手はまた、フランスの最も有名な食品のひとつであるバゲット(フランスパン)の作り方を学ぶサービスも受けられる。「私たちにとって、オリンピック選手村にベーカリーがあるのは当然のことです。どうしても、選手たちのために自分たちの手でバゲットを焼きたいと思っていましたから。また、選手たちが自分自身でバゲットをこねて、オーブンで焼くワークショップも開催する」と選手村の担当者は話す。

◆メインレストランのメニュー例
フランス:
• ベジタリアン・ブルギニョン(野菜などを赤ワインで煮込んだ料理)
• ブランダード・ドゥ・モルー(塩漬けにしたタラとマッシュポテトを用いた料理)
アジア:
• 豚ひき肉とタイバジルのバスマティライス
• カリフラワーとターメリック入りのベイクドポテト
アフリカ・カリブ:
• ピーマン、玉ねぎ、トマトの卵料理(チャクチューカ)
• チェルムーラソースのフライドシュリンプ
世界の料理:
• ラム肉とミントジュースを煮詰めた料理
• ベジタブルムサカ(茄子とジャガイモの料理)


French Gastoromony フレンチフライ(ポテトフライ)はなし 料理の約半分がベジタリアン料理 出典 South China Morning Post

出典 IOC

選手村 メインダイニング 試食するTony Estangueパリ五輪組織委員会長 出典 South China Morning Post

選手村 メインダイニング 出典 delish

地下水床冷却システムを採用 エアコンは設置せず

建物の屋上の3分の1にはソーラーパネル、3分の1にはルーフガーデンを設置 出典 SOLIDEO 
 選手村の建設にあたって、重要視したのは環境への配慮、低炭素コンクリートと木材の構造物と再生可能な地下水床冷却システムと地熱暖房システムの使用により、従来の建物の二酸化炭素排出量の約半分の削減目標を達成したとしている。「ほとんどの建物は、構造か床材のいずれかが木製」と関係者話す。  ソーラーパネル、水再利用システム、空気浄化システムも設置される。
 地下水床冷却システムは、アパートメント内の温度を下げるために、近くの地熱発電所の地下70メートルの井戸から4度の自然の冷水を建物の床に設置されたパイプに送って循環させるクーリング・システムを導入した。 このシステムで外気温に比べて建物を6~10度冷やすことができて、建物レベルで制御されるが、各住戸には自動温度調節器があり、室温を上下2度の範囲で調節できる。冬には地熱暖房としても利用可能。
 パリの8 月の息苦しいほどの暑さ、2019年7月、22年7月には40度を超えた。しかし、「環境にややしい五輪」を掲げるParis2024では、選手村はエアコンを部を除いて設置しない。扇風機があるのみだ。
 米公共ラジオ局「NPR」は「パリはエアコンなしの選手村を求めている。米国代表団と他の国は穏やかではない」との見出しで記事を掲載。「フランスは昨夏、欧州での観測史上、記録的な熱波が襲った。昨年フランスでは猛暑により5000人以上が死亡している」とし、「人口密度の高いパリは、欧州の都市の中でも暑さによる死亡リスクが最も高い」、「高温は今年の五輪にとって致命的な脅威になる可能性がある」とした。
 米紙「USAトゥデー」も「パリ五輪に米国代表団がエアコンを持ち込むことについて知るべきこと」と見出しの記事を掲載。英ポーツマス大をはじめとした研究者たちが、今夏にパリを熱波が襲うことを懸念しているとし、「パリの年間気温は過去1世紀で3度上昇しているとレポートは伝えている」と報告した。
 米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)のハーシュランド最高経営責任者(CEO)は、米選手団の部屋に独自にエアコンを付けると発表した。「大会組織委の取り組みには敬意を示す」としながら、選手が全力を尽くせる環境作りが重要だと訴えた。オーストラリアもエアコン敷設のため、10万ドル(約1600万円)をかける計画だと報じられている。
 日本オリンピック委員会(JOC)は2023年12月、各競技の強化担当者によるコーチ会議でエアコン設置の方針を表明している。
 米紙ワシントン・ポストによると、日米豪のほか、イタリアやカナダ、ドイツ、デンマークなどがエアコンを独自に設置する方針だ。多くはフランスで携帯式エアコンを調達するとみられるが、ギリシャは国内から移送する予定だという。
 組織委担当者は各国・地域の選手団が大会組織委員会を通じて計約2500台の移動式エアコンを注文していると明らかにている。
 果たしてパリの猛暑をエアコンなしでアスリートは乗り切ることができるだろうか懸念は一層深まった。


木材を利用した断熱効果が期待きできる外壁 出典 CNN

フィットネスセンター、クリニック、託児所を設置
 アスリートの健康維持のために350 台を超えるトレーニング・マシンを備えるメインのフィットネス・センターには 2 つのサウナもある。 
ウェイトリフティング、近代五種、フェンシング、車椅子バスケットボールなど、特定の分野に特化したトレーニングサイトが7 か所整備された。
 敷地内には3,000平方メートルのポリクリニックが設けられ、アスリートの健康管理のため、治療、検査、MRIスキャンを24時間オープンで行う。アンチドーピングセンターも整備される。 託児所も設置される。
 村内を移動するには、200 台の自転車と電動シャトルが利用可能。約600台の洗濯機と乾燥機を備えた仮設ランドリーも設置された。
ビレッジ プラザと呼ばれる多目的集合スペースには、バー(ノンアルコール)、理容店、コンビニ、郵便局、銀行があり、巨大スクリーンが設置され試合をライブ観戦したりすることができる。

選手村マンションの販売は苦戦?
 選手村マンションの引き渡しは、2025 年の最終四半期から 2026 年の第 1 四半期の間に予定されていが、販売状況は苦戦している毛様である、アスリートの宿泊施設を標準的なアパートメントとオフィススペースに改造する時間が必要となる。
 不動産専門家は、この販売の出遅れは金利上昇に伴う不動産市場の低迷だけでなく、販売価格が高いことも原因だとしている。公証人手数料の免除とともに 1 室あたり 5,000 ユーロの割引を打ち出した販売業者も現れた。 「2019年から2020年にプロジェクトを立ち上げたとき、1平方メートルあたりの平均価格は7,500ユーロ(約120万円 80平方メートルで約9600万円)でスタートした」が、 「その後、昨年夏の市場の低迷を見て、我々は適応し、1平方メートル当たりの平均価格6,900(約110万円 約8800万円)ユーロに値下げして、販売は持ち直している」としている。
 不動産業者によると、選手村のアパートの価格はパリの中でかなり高いという。周辺の地価は 6 年間で 50% 高騰した。「市内中心部では、建物の品質や立地にもよりますが、価格は平方メートルあたり 3,000 ユーロから 5,500 ~ 6,000 ユーロの範囲」という。平方メートル当たり7,000ユーロか8,000ユーロの高額予算を持つ世帯は「選択肢が増え始めており、クルブヴォア、ルヴァロワ・ペレ、クリシーなど、パリの西または南郊外の高級住宅地に行くことができる」と指摘している。

出典 Paris2024


1924年パリ夏季五輪の選手村 キャビンの前に集まる選手たち 出典 IOC/Topical Press/Hulton Archive
 オリンピック史上初の選手村、Paris1924の選手村は、パリの中心から北西にあるコロンブのスタッド・イヴ・デュ・マノワール(イヴ・デュ・マノワール・スタジアム)に設置された。3,089名(女子135名、男子2,954名)のアスリートを受け入れ、ほとんどのアスリートは選手村に滞在した。家具が備え付けられた木造の小屋からなる選手村は質素で、閉幕後すぐに取り壊された。それから100年、Paris2024の選手村はサン・ドニ地区のニュータウンに生まれ変わる。


Paris1924 競技会場MAP




2020東京五輪大会 選手村建設費954億円 14~18階建ての21棟、約3800戸建設

選手村(空撮) 提供 TOKYO2020

中央区晴海の東京ドーム3個分に及ぶ広大な都有地、約13万4000ヘクタールの敷地に、14~17階建ての21棟のマンション型の選手村と商業施設が建設される。工事費は約954億円。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。
 大会終了後は分譲マンションとして販売する計画で、超高層住宅棟2棟を建設し、住宅棟21棟、商業棟1棟に整備して、5650戸のニュータウンに衣替えする。2016年7月、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発事業を受注し、2017年1月には着工する。基本的に国や都の財政負担なしに整備する方針だ。日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指す。
 選手村の建設は、全額民間資金を活用するとして、建設経費は東京都の五輪開催経費に算入してない。しかし、東京都は選手村用地の盛り土や防潮堤の建設を始め、上下水道や周辺道路の整備に410億円を投入する計画である。大会後は臨海ニュータウンになるので、社会資本整備投資経費とするのは理解できるが、選手村の整備に400億円超の税金が投入される。さらに都有地約13万4000ヘクタールを、周辺価格の約10分の1という「破格の優遇措置」で事業者グループに売却したという疑念が生まれて批判が集まった。


提供 TOKYO2020

 選手村は、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発した居住エリアの他に、晴海埠頭や晴海客船ターミナル、さらに臨港消防署や民間の倉庫用地も使用して付属施設を整備し、その面積は合計44ヘクタールに達する。
 選手村のゾーンは、「居住ゾーン」、「運営ゾーン」、「ビレッジプラザ」の3つのゾーンに分かれている。
 「居住ゾーン」には、居住棟はメインダイニングなどがあり、選手が居住するエリア。
 「運営ゾーン」には、選手村の運営機能集約したエリア。
 「ビレッジプラザ」は、選手の生活を支える施設で、店舗、カフェ、郵便局や宅配便、銀行、メディアセンターなどが設置されるエリア。

居住棟
 居住棟は、14~18階建ての21棟、約3800戸で、ベット数はオリンピックで約1万8000、パラリンピックで8000。広さはシングルルームで9平方メートル以上、ツインルームで12平方メートル以上、設置される寝具のベットフレームは段ボール製、100%のリサイクルが可能。
 すべてのベッドルームには窓があるので二方向換気が可能になる。
 外廊下は、車いす2台がすれ違うことができる幅員がある。


居住棟 提供 TOKYO2020


ツインルーム シンプルな内装 各部屋にTOPスポンサーのPanasonic製エアコン、合計1万5000台が設置された 酷暑の東京の夏はエアコンが必須 提供 TOKYO2020


車いす2台がすれ違うことができる外廊下 エアコンの室外機が設置されてる 提供 TOKYO2020

メインダイニングホール
 メインダイニングホールは、2階建ての仮設施設で、オリンピック時には1階に約900席、2階に約2100席、パラリンピック時には1階に約700席、2階に約1700席。24時間サービスで、1日最大4万5000食を提供する。
 料理はビュッフェ方式だが、調理スタッフが1人づつ盛り付けてサービスする。サラダなどもあらかじめ小分けにしたものを選手がピックアップ。
 全体に席数を削減して、1席ごとに飛沫防止板で区切ったり、フィジカルディスタンスのためのフットプリントを設置する。
 メニューは世界各国の選手団のさまざまな食習慣や文化・宗教に対応した幅広い選択肢の食事を用意、約700種類のメニューを提供する。
 それぞれの料理は素材そのものを活かしたプレーンな調理法を基本として、選手が自ら味付けできる多種類の調味料を用意する。
 サービスされる料理は、日本料理、ワールド、アジア、ハラール、ベジタリアン、グルテンフリー、ピザ/パスタなど。


メインダイニングルーム


飛沫防止板で区切られた座席 提供 TOKYO2020


メニューのサンプル 提供 TOKYO2020

複合施設
 選手村の中心部に位置し、各居住棟からのアクセスが容易。
 3階建ての恒久施設で、1回には総合診療所やドーピングコントロールステーション、2階にはカジュアルダイニングやレクリエーションエリア、3階にはフットネスセンターが設置される。
 ドーピングコントロールステーションでは、クリーンな競技運営を行うために効率的で精度の高いアンチ・ドーピングプログラムを実施する。アスリートのプライバシーにも配慮して、9部屋のプロセスルームを設置して、尿検体や血液検体を採取する。
 24時間対応。
 カジュアルダイニングは、オリンピック時には280席、パラリンピック時には250席が設けられ、1日最大3000食が提供される。
 複合施設は、大会後、商業施設に改装される。


複合施設 提供 TOKYO2020

仮設医療施設 発熱外来
 発熱の症状が出た選手等のための診療・検査施設で、感染症の疑いのある患者に対する診療やPCR検査を実施する。
 検体の分析は施設内に設置するブランチラボで行うので、スピーディな検査体制が確保される。検査結果が判明するまでの間の待機場所として隔離スペースを設置する。
 一方、濃厚接触者の検査エリアも設け、濃厚接触者の検査を実施する。
 陽性者が発生した場合は、感染症対策センターや保健衛生拠点と連携して対応する。


発熱外来エリア 住居棟から離れた場所にプレハブで設置 提供 TOKYO2020


発熱外来診察室 提供 TOKYO2020

選手村ビレッジプラザ
 選手村ビレッジプラザは、選手の生活を支える施設として、店舗、カフェ、郵便局、宅配便サービス、銀行などが設置される。
 ビレッジプラザは、全国の自治体から無償で提供してもらった木材約4万本を使用して建設した。木のぬくもりを大切にしたデザインで、延床面積5300平方メートル(5棟)の仮設建築物である。大会後は解体されて各自治体に返却して、公共施設などでレガシーとして再利用される。
 ビレッジプラザには、NTTドコモが協賛して、「docomo 5G LOUNGE」をオープンし、ソフトドリンクや軽食をサービスするとともに次世代通信、5Gを選手やコーチなどに体験してもらうサービスを展開する。また、Galaxyは、「Galaxyアスリートラウンジ」を設置して5GスマホなどをPRする。Canonはフォトスタジオ、アシックスがドライクリーニング・サービス、ヤマトはクーリエカウンター、日本郵政は郵便局、三井住友銀行が両替や入出金窓口を設置する。




パリオリンピック 競技会場 会場一覧 Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report

パリオリンピック2024 選手村 史上最高のエコ選手村 東京オリンピック選手村比較 マンション販売苦戦 サン・ドニ地区の「産業荒廃地」再開発 Media-closeup Report

Paris2024 セーヌ川浄化作戦 「泳げるセーヌ川」を取り戻す Media-closeup Report

パリオリンピック 国際放送センター(IBC) OBS 4K AI ル・ブルジェ・コンベンションセンター Media Close-up Report

パリオリンピック2024 Paris2024 開催経費 高額チケット批判 テロの脅威 警備費膨張 Media Close-up Report

2024年五輪開催都市 ロサンゼルス パリ 2024年オリンピック 招致レース 相次いだ撤退 リマIOC総会 Media Close-up Report



国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2024年6月20日
Copyright (C) 2024IMSSR

*******************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
imssr@a09.itscom.net
*******************************************
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 4K番組表 今週のイチオシ! ... | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿