一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

鈴木九段の新橋解説会(第76期名人戦第2局・後編)

2018-05-03 00:15:03 | 将棋イベント

時刻は19時にならんとしているが、観客の数はあまり減っていない。全員が将棋ファンとは思われないが、名人戦という最高の舞台での戦いに、聞き入る人が多いようだ。
第8図で佐藤天彦名人が▲3一とと捨てたのが、鈴木大介九段のいう「キレッキレ」の手だった(第9図)。

鈴木九段「▲3一とが素晴らしい手でした。△3一同金は▲2三飛成。△2二金と逃げると、そこで▲3三歩成がまたシャレた手で、△同金▲3四歩△2四金▲3三歩成のような手があります」
藤森哲也五段「キレキレですね」
そこで羽生善治竜王は△3一同玉と取ったが、佐藤名人は▲3三銀とかぶせて好調だ。
羽生竜王はもう受けていられない。△3六桂と、期待の反撃だ。だが佐藤名人は▲3二銀成△同玉▲3三金△4一玉▲2三飛成(第10図)として、プロ的には先手勝勢となった。

しかし羽生竜王は△4八桂成▲同玉△3一金と受ける。
鈴木九段「投了もあるかと思ったけど、△3一金打ったんですね」
このあたりで夕食休憩に入ったはずである。持ち時間は佐藤名人のほうが多く消費しているので、ここで最後の読みを入れるはずだ。
再開後?、名人の▲4三桂が絶好だ。△同金▲同金と進み、ますます先手必勝に見える。しかし羽生竜王は△6四角(第11図)と歩を払う。
鈴木九段「ここが(後手の受けが)分からないんですけど、△6四角があったんですね」
なるほど、目障りな6四歩を除去し、5三の地点を受ける。時間がない時にこの類の手を指されたら、パニックに陥りそうだ。
ここで現局面に追いついた。時刻は19時07分。

手が入ってきた。藤森奈津子女流四段が読み上げる。「▲6三歩△同銀▲3三歩成」。鈴木九段が「驚愕ですね」と感心する。
羽生竜王は△5一玉の早逃げ。変な言い方だが、羽生竜王は玉の早逃げがうまいと思う。しかし本局は逃げのびられそうにない。
佐藤名人▲5五桂。羽生竜王は△同角と切って落とす。
鈴木九段「これけっこうクライマックスですね」
佐藤名人は▲同銀直と取り返したが、鈴木九段は▲同銀左を推奨した。
△3六桂▲5八玉△7七歩成(第12図)。再び現局面だ。

すると鈴木九段らが、「ここで次の一手をやりましょうか」と言った。よく分からないが、懸賞次の一手の趣向を始めたようだ。しかし私たちは解答用紙をもらっていない。
するとスタッフが紙片を配り始めた。といっても数に限りがあり、着席者らと立ち見の客一部に配られただけだった。
プレゼント賞品は、名人・A級全棋士揮毫の扇子。本来は名人と挑戦者、2人のみの揮毫だったのだが、今期は前代未聞の6者プレーオフとなったため制作が間に合わず、急遽全員の揮毫となったものらしい。
鈴木九段「でもこちらのほうが貴重ともいえます」
これが3本用意された。紙片は30人に配ったらしいから、全員が正解したとして、当選確率は10分の1となる。
次の一手予想は、藤森五段が「▲8三角」。
鈴木九段は「▲8四角」。
ちなみに私は、▲9五角を予想した。万が一の時、7七のと金を外せるからだった。
指し手が入ってきたようだ。
「▲9五角でした」
と藤森奈津子女流四段。あー▲9五角か、やっぱり!!

「そこに角打つかなー」
と鈴木九段が嘆く。藤森女流四段が「勝負は一発狙いですよ」と続けた。
しかし、嘆きたいのはこちらの方である。もし全員に解答用紙が渡っていれば、正解していたのに…。
正解者は何と2名。私の近くにいた青年が正解した。しかし大半は、鈴木説を信用したのだろう。
さっそく扇子のプレゼントとなったが、2名の中にさっきの青年がいなかった。が、しばらくして3人目の正解者がいたことが分かり(当然だ)、無事、彼の許にも扇子が渡った。
さて局面に戻る。

鈴木九段は、▲9五角の意味が分からない、なぜ▲8四角じゃマズイんだろうと、困惑を隠さない。しかし正解図以下△○○○▲5二金打△同銀▲同金△同玉▲4三と△6三玉▲5三と△7四玉(参考3図)となった時、「角の当たりにならないんだ」と、▲9五角の理由を解明した。

参考3図以下▲7五歩△8三玉▲6二と△9四玉▲8三竜△同玉▲7三飛△9四玉▲7四飛成以下詰み。なんだかすごい詰まし方だ。
さて▲9五角で後手玉は必至に近い。あとは先手玉に詰みがあるかどうかだが、もちろんない。たとえば△4六桂は▲4七玉で、鈴木九段は「気持ち悪いくらい寄らない。△3八角、△7八とと指すような気がしますね」と言った。
ちなみに藤森女流四段によると、有料中継では、▲5二金打に代えて「▲4二と」を示していたという。これなら角の位置は8四でもよい。
もっとも鈴木九段によると、ここは▲5二金打からこねくり回して詰ますのがいいらしい。その気持ち、何となく分かる。
以下は違う変化で「一間竜」の形になり、即席の終盤講座が始まった。「この手が指せるようになれば初段です」
しばし経って、藤森女流四段が「ここで投了となりました」と言った。正解図がそのまま投了図になったわけだ。
鈴木九段「どうやら先番シリーズになりました。本局は佐藤名人の快勝。構想が素晴らしかった。対して羽生竜王は、△7三角がどうだったか。羽生竜王の踏み込んだ手が裏目になりましたね」
第3局の展望は「横歩取りになると思います。羽生竜王は雁木、うまくないと思うけどなあ~」と、禁句を言う。「(羽生竜王の)振り飛車があるとすれば、(後手番になる)第4局でしょう。でも羽生竜王の振り飛車は、相手もビックリしなくなったんで、おもしろくない」
最後の最後にきて、鈴木節が全開になった。「次に勝ったほうはもちろん有利ですが、2-2になったら、フルセットまで行きます。(名人戦とは)そういうもんです
第3局は8日、9日に奈良県で行われる。鈴木九段は現地に赴くそうで(註:札幌に行くらしい)、次回の解説会は、代わりの棋士が務めるそうだ。私は藤森五段や梶浦宏孝四段の若手コンビでもいいと思うが、ある程度のベテランが入ったほうが、画的に厚みが出るのだろう。
鈴木九段は弁舌滑らか、形勢の良し悪しを明快に述べてくれるので、分かりやすかった。
藤森五段は、駒捌きが鮮やかだった。本人はもう少し解説したかったろうが、AbemaTVなどでは立派に解説をこなしているし、これからいくらでも機会があるだろう。
さて現在就職が決まっていない私は、9日も新橋に赴くのだろう。まったく、人間のクズすぎる。
コメント (3)
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