一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

3月31日の指導対局会のオプション・大野七段編(前編)

2018-05-06 00:30:54 | 女流棋士の指導対局会
3月31日(土)、飯野愛女流初段の指導対局の後は、オプションで大野八一雄七段の指導対局を受けた(2,000円)。こちらも6面指しだった。
大野七段に角を落としてもらい、対局開始。

初手からの指し手。△5四歩▲7六歩△6二銀▲2六歩△5三銀▲4八銀△4二玉▲2五歩△3二玉▲2四歩△同歩▲同飛△5二金右▲3六歩△4二金上▲3七桂△2三歩▲2五飛(第1図)

私はここ1年くらいで、大野七段に1勝しかしていない。これはもちろん実力差があるからだが、私の一局に賭ける熱意が薄れてきた弊害もあると思う。そこで今日は、対大野七段戦では初めてになるが、記譜を付けようと思った。
通常はこの行為が読みの妨げになるのだが、本局に限れば「一局を大事にする」「手拍子を防ぐ」「指し手が淡白にならない」などのメリットがあると考えた。
将棋は、対大野七段戦では久しぶりの、「一公流▲2五飛戦法」を採用した。

第1図からの指し手。△8四歩▲4五桂△4四銀▲4六歩△8五歩▲2四歩△同歩▲同飛△5五歩(第2図)

ほかの対局者は、2コマ目からの引き継ぎが多い。飯野女流初段に平手で勝った中年氏は、大野七段にも平手を所望、角換わりの戦型を申し出た。
アマ強豪にはこういうリクエストがある。だから女流棋士も、あらゆる戦法の知識を入れとかないといけないのだ。
ほか、Tag氏は飛車落ち、Tod氏は二枚落ち、というところ。左の男性も飛車落ちだ。
盤面。△8四歩に、▲4五桂を決めた。これが生きるかどうかが本局の生命線になった。
△8五歩にはスキありと見て、▲2四歩から合わせる。▲2四同飛に△2三歩なら、▲4四飛△同歩▲同角(参考1図)で下手よし。これは「将棋ペン倶楽部」で美馬和夫氏が書かれていた手順を応用した。

ところが大野七段は△2三歩とせず△5五歩。指されてみれば当然で、私は手損をしたが、角落ちでこのくらいの失点は致命傷ではない。

第2図以下の指し手。▲7七角△2三歩▲2五飛△6四歩▲7八金△6三金▲6八銀△5四金▲6六歩△6五歩▲6七銀△6六歩▲同角(第3図)

私は▲7七角としたが欲張りで、▲7八金だったか。急戦の場合、下手はあっちこっち欲張らない方がいい、が大野七段の教えだった。すなわち本局は、上手の飛車先の歩の交換ぐらい容認せよ、ということだ。
以下は上手の金がスルスルと進出し、角が目標になってしまった。

第3図以下の指し手。△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲8八角△3四歩▲4七銀△2二銀▲5八金△1四歩▲1六歩(第4図)

第3図では△6五金▲8八角△6六歩▲同銀△7六金がイヤだった。大野七段も当然視野に入れていたはずだが、△8六歩。私は▲同歩から▲8七歩と収め、▲8八角と引き揚げる。
これには△6五歩と黙って拠点を作られるのがイヤだったが、大野七段はそう指さず、△3四歩~△2二銀と悠然としたものだ。

第4図以下の指し手。△6五金▲6六歩△6四金▲9六歩△9四歩▲6九玉△7四歩▲5六歩△同歩▲同銀右△5五歩(第5図)

「Kazさんは居飛車党だったんですよ」
とか言うW氏の声が聞こえる。今はKaz氏が飯野女流初段に教わっているのだ。また飛車を振っているのだろう」
「あーそうなんですかァ、それ(居飛車党→振り飛車党)ってめずらしいですね」
と飯野女流初段の声がする。イチャイチャやっていると思う。
ここで大野七段は△6五金。私はよろこんで▲6六歩と打ち、後顧の憂いを消した。もっとも大野七段も、私に▲6六歩と打たせたことで満足したのかもしれない。
私は▲9六歩。もはや角を中央に使えないので、こちら側から角のノゾキを作った。この時おぼろげながら、ひとつの攻め筋を見つけた。だがそれは都合がよすぎて、到底実現不可能に思えたのだが…。
△7四歩に、まずは出っ張った△5五歩めがけて、▲5六歩。△同歩▲同銀△5五歩に、次の手は。

第5図以下の指し手。▲6五銀△6三金▲9七角△9五歩▲5四歩△4五銀▲同飛△3三銀(第6図)

ここで▲4七銀と引くようでは弱い。強く▲6五銀と出た。対して△同金▲同歩△5六銀があるかと思ったが、大野七段は反射的に△6三金。これで次の△6四歩(銀取り)が受からなそうに見える。
しかしそこで▲9七角が、私が用意していた手。これならA△6四歩は▲同銀と突進できる。
またB△6二飛と、あくまでも△6四歩を狙う手はあるが、玉飛接近で指しづらかろう。よって大野七段はC△9五歩だが、私は▲5四歩。もし△9六歩とくればよろこんで▲4二角成と切り、△同玉▲5三金で上手壊滅。以上が▲9六歩からの構想だった。
大野七段は、チッ、と△4五銀だが、私は▲同飛と取って、これが数手後の▲4三飛成を見た先手だ。早い▲4五桂跳ねが、本局では見事に働いた。

第6図以下の指し手。▲6四角△同金▲同銀△4四銀▲2五飛△3七角(第7図)

ここらで角換わり氏の将棋が終了した。もちろん大野七段の勝ち。
左の男性氏(飛車落ち)は、大野七段が△6二玉形で構えている。これが上手の秘手で、下手は相当な力量が必要とされる。男性氏は「ハァー、ハァー!」とため息がひどく、私は苦笑してしまう。
△3三銀には▲6四角と、押し売りした。1987年10月12日に指された▲大山康晴十五世名人VS△森下卓五段戦(天王戦)で、大山十五世名人が金頭に▲4四角と飛び出た手を参考にした(参考2図)。
対して大野七段は△同金と取ったが、△7三桂(参考3図)ならまだ大変な勝負だった。


▲6四同銀△4四銀に、▲同飛△同歩▲5三歩成は、△3三金で切れる。大人しく▲2五飛でよい。
大野七段は△3七角の反撃に期待したようだ。さすがに一番イヤなところを衝いてきた。

第7図以下の指し手。▲5三銀打△3三金▲4四銀成△同歩▲5三歩成△2四歩▲5五飛△4六角成▲4二銀(投了図)
まで、86手で一公の勝ち。

▲5三銀打といった。大野七段は△3三金と躱すが、私は▲4四銀成から▲5三歩成。いつぞやのS奨励会5級との穴熊戦ではまったく効かなかった「▲5三歩成」だが、本局は効いてそうだ。
△2四歩には幸便に▲5五飛と寄る。△4六角成に第一感は▲4三金だったが、△2二玉と一瞬だけ玉が深く逃げるのが気に入らない。それで▲4二銀と打った。もし△5五馬なら▲同銀で、次に▲4一角もしくは▲5四角を見る。飛車の王手には▲5九歩が盤石だ。
すると、ここで大野七段が投了してしまった。私は有利くらいの認識だったので、意外だった。

「▲9七角と▲5四歩でダメにした。勝負どころがなかった」
と大野七段自嘲の弁だった。感想戦はなし。
時刻は午後4時50分ごろ。5時半までは指せるので、大野七段がもう一局を申し出てくれた。
(つづく)
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