今様落語・「題して・忖度について」

2017-05-20 14:33:23 | 日記

      今様落語・「題して・忖度について」

 「殿、ただ今玄関に、『○○氏と申す者が、殿にお目通り願いたいとして』が参っています。聞きおよびしましたところ、しばしば殿にはさるところでお会いをしているとのことです」と。

 その言葉を受けた殿は「うむ」と言ったままで奥に行ってしまった。家来は殿が「うむ」と言って奥に行ったとしても「捨て置け」との言葉がなかった。殿の「うむ」の言葉は「通せ」という言葉として受け止め奥の部屋に案内をした。○○氏は、殿の面前に深々と頭を下げ「お懐かしゅうございます」と述べる。殿は再び「うむ」とつぶやきそして席をたった。

 やがて○○氏は、家来に対し一つの頼みごとをする。家来はこれまでの状況からして、殿も承知のことと受け止めその頼みごとを受けとり実現をさせてやる。

 さてこれからである。殿は「うむ」としか言っていない。家来にとってはその○○氏と殿の関係はそれだけのことである。しかし、家来は「殿の意思が、良きに計らえ」と受け止めた。

 ○○氏の頼みごとが後で問題となる。家来は「殿の意思」と受け止めた。殿は「会う」とも「通せ」とも言っていない。しかし「さるところでお会いをした者」となれば、家来はその言葉を重く受け止めるのも当然だろう。

 結果して、その責任を証明するものは何もない。

  「鍵」は三つある。

 一つは、「しばしばお会いをしたことがある」ということである。会ったことがあるということだけで、その関係の深さを説明していない。たまたま会場にいただけなのか、言葉をかけたものなのか。その言葉もどのようなものであったのかも説明されいない。

 二つは、「殿の言葉」である。「うむ」とは何を物語るのか、この説明はつかない。読み取る側の判断である。

 三つは、説明のつかない言葉を「殿の意思」と、とらえた家来の早合点である。しかし早合点として家来に詰め腹を切らせることができるだろうか。いかに名奉行と言えどその裁断は下せないだろう。この「落語」をどのように締めくくるか。その「落ち」は難しい。

 さて現代に戻る。米国のオバマも大統領の任期の2期8年を守った。というよりは任期は2期8年と法律で定められている。つまり長い政治の歴史の中で「長期政権」は「権力の拡大」を生み、その拡大された権力が議会をいいように操り、国民を縛る結果になることを禁じた「政治の知恵」が働いたことによる。それが三選禁止の法律であると受けとめる。

 安倍首相は与党の総裁と総理大臣を巧みに使い分ける。総裁は「公認の裁断権を握り、結果して党の人事を握る」。総理大臣は「閣僚の任命権を持ち、解散権も握る」。そして安倍首相の三選を確実にしたかに見える。そこには強大な(殿の)権力が生まれる。

 昨今の日本の政治の実態を、あらためて考える必要があるのではなかろうか。

 


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