要介護者の「認定率下げれば交付金を」・それって筋違いでない?

2016-09-18 14:14:03 | 日記

  要介護者の「認定率下げれば交付金を」・それって筋違いでない?

 

    「認定率下がれば財政支援=介護費抑制で自治体に―厚労省」(時事通信・9月17日)という記事を見る。報道によれば次のようになっている。「厚生労働省は16日、高齢者らの自立支援に取り組み介護サービスを受けるのに必要な「要介護認定」を受けた人の割合(認定率)を下げた都道府県と市区町村には財政支援する方針を固めた」と。

  その背景には、膨らみ続ける介護費の抑制と地域間格差の是正に狙いがあり、23日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会に示し、年末にまとめ2018年度介護保険制度改正案に盛り込む」という解説が報じられている。

     いわゆる2025年度を前にした「大介護時代」を予測してのものであることは否定できない。ましてや要介護度の認定率の低下をもって財政支援をするということは「お手柄に対する報奨金」ということである。そのようなことが許されて良いのだろうか。

    そこで記憶をたどり、それに関係することがらを探した。パソコンはいろいろな情報を提供してくれる便利なものである。ここに滋賀県の「民間主要介護制度改善交付事業」の事例がある。その方針には「高齢者の要介護度を改善し住み慣れた地域で自立をした生活ができるよう。そのための一定の成果に対し交付金を支給する」とし、その対象事業はディケア及び認知症ディであり、届け出た事業所のうち「要介護度の改善率が高い事業所に対しては定員1名あたり月1万円の交付金を支給する。それは平成24年度から始まり、平成26年の実績では102の事業所と、その交付額は32.300千円である」と報告されている。そして取り組みの一事例を次に紹介している。

  1.利用者の身体機能や生活をリハビリ専門職(PT.ST)が中心に多職種で評価し利用者個々のプログラムを作成し、機能訓練や自主トレーニングを行っている。

  2.必要に応じ、自宅を訪問し環境調整や生活動作の指導を行っている。

  3.いきいき百歳体操を個々の能力にあった重鐘を使用し行っている。

  4.有酸素運動(エアロバイク)が9割をこえる利用者に対して20分以上行っている。

    さらに東京品川区の事例がある。要介護度1の改善(2から1に改善された)に対して月2万円、以下順次、介護度の改善に対しては4万円、6万円、8万円との奨励金の支給を示している。そして、これら改善事業の推進によって「これまで以上に利用者に関心をもって向かい合うようになった」「声掛けや見守りが充実した」「自立支援に向けて離床が進み、規則正しい生活ができるようになった」などの現場改善も進んでいるという総括がなされている。

   「要介護度が軽くなる」ということは、例えば病状が軽くなると同じように本人にとっては喜ばしいことである。しかし、介護と医療の違いをそのような譬えをもって語られるのだろうか。もちろんリハビリによる身体機能の回復という面は医療の分野であろう。では介護認定者の訪問をにこやかに迎えて普通に振る舞う老婆の姿がある。しかし、認定者が帰った途端に元に戻り粗相もするということがある。いわゆるこの「瞬間的健常」の状態は決して少なくないと言われている。この実態をどう見るかもあるだろう。

  また、要介護度の回復ということをもって介護士の人員が削減されることはないか。例えば、改善の取り組みの結果深夜の呼び出しが少なくなったという報道を見たことがある。そのことによって深夜の人員削減がなされた。しかし、呼び出しはいつ発生するかはわからない。介護度が改善されたからと言ってそれがいつもそうであるかの保証はない。緊急の対策を必要としたとき対応ができるのだろうか。これらのリスクも考慮されなければならないだろう。

  そこで考えたい。「要介護度の改善は本人に対するものなのか、それとも介護費用を削減するためのものなのか」。まずここから出発したいと思う。報奨金や交付金は得てしていわゆる「山吹色」に代わる。要介護者本人や介護士本人のためではなく事業所経営に利するものとなり、政府の社会保障に利するものとなりはしないか。

  ここでもう一つの事例を報告したい。特老施設のボランテァに参加をした。施設内の清掃や洗濯のお手伝いである。ところが施設が採用をしていた介護士や用務員がいなくなっていく。ボランテァのお手伝いは本務者の介護業務の充実に役立つもでなければならない。にもかかわらずそのことによって本務者が削減されるという筋違いの事例が発生する。今般の制度改定にその本質が隠されていないか。そこを見抜かなければならないだろう。


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