個人収入か、世帯収入か。バラバラな社会保障
後期高齢者医療は、75歳以上の本人に対する制度である。と断るのには、保険料の納入も、手にする保険証も本人個人となっているからである。70歳から74歳までの前期高齢者も、それ未満も主たる生計維持者の収入で保険料を納め、一枚の保険証によって家族が証明されている。しかし75歳以上となり、専業主婦であった配偶者も年金を受け取ることになる。つまり本人も、個人名義の収入を得ることになったと言うのが根拠なのだろうが、この専業主婦であった配偶者の保険料を見直すと言う方針が検討されている。
後期高齢者の保険料は、「所得割りと均等割り」によって計算される。所得が少ない(国民年金のみ)専業主婦であった配偶者には所得割りは無い。そして均等割りが徴収される。つまり、所得割りを徴収するだけの収入には満たないのである。別な表現をすれば、「所得割りは無いのではなく、徴収したくとも徴収する該当収入がない」と言うことである。
制度の施行にあたって、均等割りの配偶者負担を、当時の政権は不満を和らげるために経過措置を用意した。その措置とは、年額43.5101円の均等割りの9割を減額し(国の持ち出し)、本人1割負担とした。見直しとは、この経過措置を廃止し、5割(年額21.700円)に戻すと言うのが内容のようである。
社会保障費の、どこかを見つけて、削っていこうとする政府の姿勢がここにも現れていると言えよう。
このような政治のあり方にも強い不満を持つのだが、この制度を通しても使われている「所得制限」について言及したい。
前記したように、保険料も保険証も本人個人となっている後期高齢者の医療費窓口負担率(本人負担)は、世帯収入年間520万円を超えれば配偶者も3割、5.299.999円以下であれば1割である。その意味では「所得制限」の導入である。
では、所得制限が採用されている他の項目を見てみたい。
児童手当である。この手当ての受給条件は、その世帯の主たる生計維持者本人の収入となっている。例えば共働きの家庭であっても、どちらかの収入(主たる者)が622万円以下であること、子ども二人目からは一人に対し38万円を加算する年収が受給の条件である。
高校授業料無償制度について見てみよう。その対象条件は世帯収入910万円が制限である。
所得制限が、後期高齢者においては世帯収入520万円未満。児童手当は主たる生計維持者個人の年収622万円未満。高校授業料については世帯収入910万円未満。金額も、対象も異なる。
その根拠は何も無い。あるとすれば、「いかに給付を抑え、削減するか」でしかなく、その理念は省庁間によって異なるのかとも言いたい内容である。
この所得制限については障害者給付などもあり、説明の根拠と統一性を求めたいと思うが、どうだろうか。
「高齢社会を生きるため」との立場で見れば、おかしいものが一杯の「今の政治」である。
そして、「大衆負担」を強要するときには、必ず出てくるのが「経過措置・暫定措置」であり、不満が忘れた頃に「そっと解消する」という政治の姿勢に、あらためて強い批判を述べたいと思う。
ごまかされてはならない。
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