「サービス付き高齢者住宅」整備の意味するものは

2016-01-11 12:00:50 | 日記

「サービス付き高齢者住宅」整備の意味するものは

   新たにスタートした「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」がある。その事業に、政府は今後10年間で60万戸の整備を計画し補助金の交付を決定した。11日のブログにも書いたことであるが、これは今般の通常国会、本会議で首相が回答した中身である。ところで、この「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」であるが、その管轄は国土交通省であるこのことはあまり知られていない。そしてその補助金である。小規模型かショートステイを併設した「サービス付高齢者住宅」(サ高住)の場合は、施設補助金を従来の1000万円から1200万円に引き上げる。また標準型の25平方メートルより広い30平方メートル以上で浴室やキッチン付きの「夫婦型サ高住」に対しては、1室当たりの補助金を100万円から135万円にアップ、さらに普通のサ高住に対しても1室100万円から120万円に増やすということが説明されている。

 今や介護・医療福祉は、住宅・サービス業などの分野に移行し、建設・倒産・縮小整理という「企業競争」の市場原理が、社会福祉の世界にも色濃くあらわれようとしている。そのことをしっかり見抜かなければならなと思う。 

 ここに一つの事例がある。岡山県を中心に福祉業界の最大手企業にのし上がった「株式会社メッセージ」がある。医師が創業者であり、有料老人ホームの経営に乗り出し続けて「サ高住」に進出していった。しかし、経営不振、虐待問題などの不祥事件なども加わり「損保ジャパン日本興亜ホールディングス」に売却した。さらに損保ジャパンは「居酒屋ワタミ」が手掛けた老人ホームを買収し、介護業界最大手に躍り出た。

 こうして今や、高齢者介護が普通の企業が手掛ける普通の舞台へと転換していく。そしてその勢いは、さらに「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」を通じて拍車がかかることになるだろう。いわば介護保険制度の発足に次ぐ第2ラウンドに入ったともいえるかもしれない。そして、当然のことだが日本の名だたる企業が、一斉に介護市場に参入するのも間近いであろう。

 よくよく考えてみる。安倍首相が夏の参議院選をめざして掲げた「新三本の矢」。その目玉である「介護離職ゼロ」の方針は、果たして介護に悩み、不安を持つ高齢者、そしてその家族に恩恵をもたらすものとなるのだろうか。

 まず、建設された真新しい建物を前にして、その玄関をくぐることができる層はどれだけいるだろうか。

 そこで事例を取り上げる。入居にあたってまず一時金の有無がある。仮に一時金は不要とする。Ⅰケ月の経費の中身はおおよそ次の通りである。賃貸料(家賃)6万から8万・食費5万前後(全食)・共通費2万・ケヤー管理費(保険を使わない程度の簡単なサービス)2万から3万と見る。1ケ月の合計は15万から17万円となる。そこに個別の光熱費・介護保険、医療保険を適用とする介護費、及び通常の医療費が加わる。とすれば最低に見積もっても17万円は必要となる。果たして、年金生活者にとって「安住の場」となるのだろうか。ましてや「国民年金受給者」にとっては「夢のまた夢」という存在であろう。

 結局は、60万人分の要介護者向けの数字のゴロ合わせだけである。このような政策が、施設介護を求めている高齢者やその家族のものではないことは確かである。今後の在宅介護の柱に「サービス付高齢者向け事業」を据えようとする政府の方針をうのみにできない実態を知るべきではないか。

 その政治が「誰のための、誰のものなのか。そして得をするものは誰なのか」。忘れてはならない政治選択の鉄則と考えたい。

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿