ふるさと納税の企業版・政府は「的」を間違えている

2015-07-01 09:42:48 | 日記

ふるさと納税の企業版・政府は「的」を間違えている

 

  「ふるさと納税企業版を検討」。菅官房長官が秋田市の講演会で述べたと各紙が報じている。

  私は、この「ふるさと納税」なるものを取り上げられたのは、自分の生まれ故郷や、一時お世話になった市町村への恩返しも含めた応援というものが主旨であったと記憶している。しかし、今や全国どこにでも、そして納税先からの「お返し」と「節税」(税控除対策)を目的にするものと変わってきた。そして、この「お返し」の内容をめぐる競争が過熱化している。

  その「納税運動」に企業を参加させようとするのが今回の報道である。その内容を次に貼りつけてみた。

  「菅義偉官房長官は28日、秋田市での講演で「企業版のふるさと納税制度の研究を財務省、総務省、内閣府に指示している」と述べ、企業の内部留保資金を地方自治体に還元する制度を検討していることを明らかにした。菅氏は「官民挙げてまちづくりを応援する。企業の剰余資金を地方活性化に活用する」と述べている。

  実はその裏がある。企業が地方創生のためとして、任意の自治体に寄付すれば所在地の自治体に納める法人住民税を軽減する仕組みを想定しているということである。官房長官の口から言わせたものだが、企業の求めを代弁したことに他ならないと見るべきであろう。

  「地方の活性化のため、お役に立ちたい」と言えば立派だが、法人税率の大幅な引き下げを求めている要求は未だ俎上にある。「内部留保を賃上げに」とした管制春闘で一定の賃上げは実施されたものの、物価の吊り上げの中で棒引きにされた。また下請け企業の発注費は抑えられたままになっている。何のことはない。「言い恰好だけの企業ふるさと納税」は、お釣りがきてもなお余りあるものとなるだろう。

  かく言う私にも記憶から離れないものがある。それは今から20年前のことである。元請企業が下請け企業に対し一斉に「発注費」の減額要求をした時代であった。いわゆる「発注費10%の低減」である。私が携わっていたのが運送管理であった。協力会社と呼び、「パートナー」と称していた「契約運送会社」に10パーセントの低減を求めた。月1.000万円の支払いであれば100万円の低減である。元請は何の努力も要しない、汗もかかない。そして上部には明快な説明ができる。下請け企業は契約を切られることを危惧しやむなく受け入れた。

  そして協力会社は、下請けの運送会社へ仕事を流す。マージンを取り、運賃の値引きを行う。その二次下請けはさらに三次下請けに流す。下へ流すごとに安全も貨物の保証も低くなる。これは今でも見られる実態である。

  今回の管制賃上げの中で、下請け中小企業の労働者にも賃上げの実現をとしたが、果たしてどれだけの賃上げが図れたかは不明である。また、トヨタをはじめ一部の大企業が、発注費の低減を下請けには要求しないとの見解を表明した。しかし、20年前にさかのぼり発注費を元に戻す、あるいは増額するという表明はなかった。

  私は言いたい。地方の活性化を図るというのであれば、約7割を占めるだろう中小零細企業の労働者の収入を増やす事である。それを可能とするのが発注費の増額である。政府は矢の射る「的」を間違えている。