報道への圧力・官房長官発言・自民党支持者の離反に共通点を見る

2015-06-27 11:39:25 | 日記

 報道への圧力・官房長官発言・自民党支持者の離反に共通点を見る

 

  6月26日(金)の毎日新聞に掲載された3つの記事に注目した。一つは「広告収入断ち懲らしめよ」という見出しの「自民党中堅・若手」と称する40人余の勉強会での発言の記事である。二つが70年談話をめぐり「事前に中国や韓国との調整をする必要はない」と断定した菅官房長官の発言。そして三つには自民党山本幸三元副経産相の長期延長に対する批判と、地元支持者から「自民党支持をやめる」という手紙が届いたとの紹介談の記事である。

  小さな扱いの記事であったが、全て今般の安保法制法案の論議にかかわる問題であると受け止めた。案の上、その日の「平和安全特別委員会」での論戦の俎上に上がった。この内容はNHKの国会中継でも報道されている。本日の新聞各紙においても取り上げられているので詳細は省略するが、どうしても看過できないものとして「政権に批判的なメディアに関し『マスコミをこらしめるためには広告料収入がなくなるのが一番」という発言が出席をした自民党議員から出た事にある。しかもその発言が若手の政治家から出てきたことにある。まさに憲法軽視どころか、憲法の基本である「憲法とは政治を縛るものである」とする立憲主義を否定するものであること。それが現在の自民党政権の本質を見事に暴露したものだと言うことである。

  しかし、ここにもう一つの悪霊が現れた。それは松井一郎・大阪府知事(維新の党顧問)の発言である。「自民党議員の勉強会での百田尚樹氏の発言をめぐり「(メディアに)『圧力をかけよ』と言ったのは自民党。自民党をたたくのはいいが、講師として行った百田さんにも表現と言論の自由はある」と擁護した。さらに「ここぞとばかりに復讐(ふくしゅう)だな。朝日(新聞)と毎日(新聞)は、百田さんの表現と言論の自由を奪っているのではないか。圧力をかけて」などと。発言についての報道にも疑問を呈した。大阪府庁で記者団に語った。(6月27日朝日新聞)

  彼は一般人ではない。政党の幹部であり、政治家である。

  そして菅官房長官の発言である。もちろん日本国の政治的主体性は大事にしなければならない。これを失えば隷属となる。だが未だ明確にされてはいないもの、8月に明らかになるだろう「70年談話」については、アメリカのみならず、この間訪問してきた各国首脳に対し、安倍首相は「歴史認識」に対する理解を求めることに取り組んできた。いわゆる「支持を求めづけるための予防線」を張ってきた。しかし、本来そのことが一番必要とする国(首脳)に対しては、それを省略してきただけではなく、ここにきてさえもその相手には、「問答無用」としか読み取れない官房長官の発言に、自民党の本質の変化を見るのである。

  最後に山本幸三議員の発言である。彼は党内ハト派とされる「宏池会」(岸田派)に所属する。地元の支持者もその政治姿勢を受け入れてきたのであろう。だからこそ山崎拓元副総裁をはじめとする保守派重鎮の声明にも心打つものがあり、それが「今のままでは支持しないぞ」という発信ななったと受け止めたい。そしてそれを公表した山本議員の政治性にも重いものがあったと判断する。

  ところが、時を同じくして「宏池会」メンバーによる「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」が会合を計画していた。それが2日前に急きょ中止された。同じ日に、しかも片や開催、片や中止である。この日は漫画家の小林よしのり氏を招いて5回目の会合が予定されていた。小林氏は「自衛隊を軍隊と位置づけるべきだとの立場から、改憲を主張する保守派の論客」である。憲法の解釈を変更して集団的自衛権を使えるようにした安倍首相に批判的な立場だ。「小林氏を呼べば、政権批判をされ、憲法学者が法案を違憲だと指摘した二の舞いになる」との圧力があったと受け止めるのが正解であろう。小林氏は朝日新聞の取材に「会合中止は国会が空転しているから、と説明されただけだ。執行部への抵抗勢力になるのが怖くなり、負けたんだと思う。自民は全体主義になっている」と語ったとある。

  こうしてみると、安倍自民党の実態が明らかになってくる。この間の安保法制論議ではまともに答えていない。かみ合っていない。だから国民は理解できない。安倍首相はそれは承知しているのではないか。その上で「かみ合わせなない論議」をもって時間稼ぎの戦術をとっていると考えたらどうだろう。最後は「数」である。今からそのことを警戒する必要があると思う。