首都圏の「高齢者移住」を考える。地方の立場から・・・・・・・

2015-06-15 14:25:51 | 日記

 首都圏の「高齢者移住」を考える。地方の立場から・・・・・・・

 

  私も高齢者の一人である。しかも夫婦二人の生活、いわゆる「老々介護予備軍」に属する。介護が不要の状態で終われることを望むがこれとてその保証はない。昔、子育て最中にあった私たちは、近所のお婆さんの長い経験がともなう知恵に幾度も助けられた。また面白い話も聞いた。お婆さんの若いときの事である。田植えの手間取り(日銭稼ぎ)をする。数人が並び、片手に稲束を持ち植え方を始める。その先の「畔」にはどぶろくの入った一升瓶が立っている。お婆さんは言う。「男めらは我先にと苗を植えていく、どぶろくが飲みたくて。女は結局追い立てられるようになる」。だからこのあたりの田はみんな細長くなっていると。なるほど、そうしてみると長方形の田が多い。正方形では一升瓶の数が増えるわけである。

  そのお婆さんも、ある日コタツに顔を伏せたまま逝ってしまった。このような亡くなり方は珍しい。多くは本人も苦しみ、家族も悩む「終わり方」が圧倒的である。

  さて、最近の話題の一つに、首都圏に住む高齢者の移住問題がある。

  石破茂地方創生担当相は12日の「まち・ひと・しごと創生会議」(議長・安倍晋三首相)で地方創生基本方針の骨子を示した。その中の一つに、高齢者の地方移住を促す地域づくりの推進があり、月内に基本方針を策定すると報じている。その提言は、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の四都県)で七十五歳以上の高齢者が今後急増するとして、医療・介護の施設や人材に余裕がある二十六道府県四十一地域への移住促進を要請するという。だが、移住先として名指しされた地域には戸惑いが広がる。石井隆一富山県知事は「県内で特別養護老人ホームの入所を待機している人がおり、余力があるわけではない」と提言に疑問を呈した。達増拓也岩手県知事は「高齢者の介護や医療の負担だけが押し付けられ、かえって地方衰退を加速することになっては本末転倒だ」と指摘した。舛添要一東京都知事は「『施設が足りないから移住を』というのは乱暴だ」と批判、黒岩祐治神奈川県知事も「無理に高齢者を地方に移住させるのは違和感がある」と否定的な見解を示した。

  ここに福島県いわき市の実例がある。放射能の線量も比較的低い、そして同じ太平洋沿岸で気候も変わらないこともあって双葉地区の避難者が集まった。あっという間に過密の状態になった市内で、先ず現れたのが「町のお医者さんの前に行列」ができたことである。空き家はなくなり家賃・地代は跳ね上がった。小さいことであるが日常的な「ゴミ出し」がある。町内の皆さんが当番で管理をしている。そこにゴミを持ってくる避難者に対する不満。些細なことではあるが、いわき市民と避難者との間に「いさかい」が生じたことは事実である。それも突然の災害による緊急避難であるにもかかわらず、助け合わなけれはならないにもかかわらず。そして今も土地の値段は高騰を続けている。

  前に戻ろう。とりわけ戦後の東京の街づくりに携わったのが今の高齢者の皆さんである。東京都は義務としてもその高齢者の後半を守責任があるだろう。しかし、経済的、物理的にそれが困難であるところに、地方への移住が、選択の一つとして浮かび上がってきた。そうであるとしても唐突な政策である。万に一つ、その移住が選択の一つとしても受け入れる側にその体制があるのか。富山県知事も述べているように「県民でさえも施設への入所が困難なところに移住者の受け入れの条件はない」というのも当然である。直近の例として「いわき市」を上げた。高齢者移住と直接的に結びつけことは無理としても考えなければならない事実である。そして2025年を前にして超高齢化は避けては通れない。その意味では急がなければならない悩ましい課題である。