介護難民が続出しないか・「自治体丸投げの」介護保険制度の改定

2015-06-09 10:22:36 | 日記

 介護難民が続出しないか・「自治体丸投げの」介護保険制度の改定

 

  よく言われることだが、三人集まると必ず「飲んでいる薬、通っている病院」などが話題となる。これが高齢者の日常的な光景である。しかし、現在はそれに「介護」の問題が加わってきた。

  自民党政権は消費税の増収分を社会保障の充実にまわすことを確約し消費税を5パーセントから8パーセントに増額した。しかし、その公約は実現せず、それどころか介護保険制度の改定を強行した。その内容は要介護1・2の認定者の施設(特別老後施設など)への入所を不可能とし、要支援1・2のサービスを「介護保険」から締め出すものである。

  確かに、従来も「入所申し込み」をしたものの待機の状態が多い。2013(平成25)年現在、全国で約52万人の待機者がいると厚生労働省は報告をしている。この数字は、やむに已まれずギリギリの状態で申し込んだ方を対象としたのであり、あきらめて申し込みをしない人も含めれば100万人に近い数字になることが予測される。それでも従来までは「並んで施設の切符を受け取るチャンス」があった。しかし、今年4月以降はその順番待ちの行列に並ぶことさえもできない。

  2000年(平成12)4月に介護保険制度が制定された。「誰もが安定的に望む介護が受けられるよう、社会全体で要介護者を支える仕組み」として大きな期待をもった。しかし、施行当初は、親族や周囲から「親を施設に入れるのか」という批判を受けるなどの古い習慣の中での誕生であったが、さして時間を要すまでもなく、申し込みが殺到する状況を生み出したのはそれだけ「緊急かつ必要制」のあったことを物語るものであろう。しかし、その基本が25年後の今日、消滅しようとしていることも知らなければならない。

  その改定の内容は冒頭に記したが、とりわけ介護保険制度から外される要支援者の介護である。その数は2014年10月末現在で168万人となっている。これは鹿児島県の総人口と匹敵するものである。この層が介護予防である「訪問介護」(家事援助など)・「通所介護」(ディーサービスなど)のサービスが、介護保険制度の適用から外されるのである。そして、全国どこでも誰でも、同じサービスを同じ金額(本人負担)で受けることができた制度が、市町村の財力によって異なることが生じる。このことはサービスの地域格差の拡大を意味する重大なものである。 

  それが「自治体丸投げ」というものである。

  それでも政府は「地域支援事業」に移してもその財源は補償するから心配ないという。ところで現在の「要支援者サービス」に伴う財源は「介護保険給付見込額全体の3~4%以内」を上限としている。政府はこの財源を補償すると言っているが、その引き上げの明言はない。

  市町村の判断でやりなさい‼それが政府の方針である。

  従来までの要支援者サービスを、もれなく地域支援事業に吸収するためには約6千億円が必要と言われている。(2011年度現在)。そのことは財源の上限を8%程度にまで大幅に引き上げなければならない。上限をそれ以下に設定した場合はサービスが一気に切り捨てられる。にもかかわらず政府は口が裂けても財源の引き上げを述べてはいない。

  ではどのようなことが予測されるだろうか。

   第一に、市町村の判断でサービス水準の切り下げが可能になる。今まであった全国一律の給付は「地域支援事業」にはない。研修を受けたホームヘルパーによる生活援助を、ボランティアによる支援や、民間企業による宅配弁当に置き換えれば費用を削減することができる。サービスはその方向に流れることは必須となる。

  第二に、サービスの種類や内容も市町村任せになる。現在12種類の保険給付が法律で定められている。その中に「訪問介護・看護。リハビリ。通所介護。福祉用具貸与など)も定められているが、「地域支援事業」では市町村の判断(財力)でサービスの種類を減らすことが可能になる。

  第三に、利用料も市町村任せである。現在の本人利用負担は介護費用の1割で残り9割が介護保険財政から出る。しかし、政府は介護保険からの交付の増額を約束していない。そしてサービス利用料は市町村が決めるとしている。利用者負担の割合を引き上げれば介護財政は削減できる。そのことは介護サービスの地域格差の拡大を生むだろう。

  これらのことを知るなら、己が住む自治体に対して「丸投げ拒否」を政府に突き付けさせる運動が必要ではないか。しかし、私の知る範囲では、このことが今般実施された自治体選挙での争点にならなかったことは事実である。同時に不思議でならない。あらためて提起したい。

  「誰でも、どこでも、必用な介護を受けられる社会的保障」を。「介護の地域格差の拡大は許さない」と。

若年介護者の未来は「2014・6・17クローズアップ現代より」