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因果関係」心理学ってどんなもの

2014-03-27 | 認知心理学
Q2・7「心理学では、因果関係を実証するために実験が行なわれるとのことでしたが、因果関係について、もう少し詳しく説明してください」---因果関係  

心がかかわることならずとも物事を因果的にとらえるのは、誰もがごく自然に行なっています。何かが起こったとき、「どうしてそんなことが起こったの?」との疑問を持つことがあるはずですが、それが因果的な説明の求めに他なりません。たとえば、   

・交通事故が起こった。飲酒運転だった。   
・雪が降った。寒波が襲来した。   
・殺人があった。怨恨(えんこん)が動機   
・試験に合格した。努力したから。  

このような説明は、結果が起こった時点からさかのぼって原因を追及しますので、事後的な因果説明になります。この説明がうまくできないとき(原因がみつからないとき)、「なぜ?」となるわけです。これが知的好奇心です。  

科学は、この知的好奇心を発想のバネにして研究をしてきました。「原因を求めて3千里」の旅に出て、最終的には、それを実験で(データで)実証する営みを積み重ねてきました。  

実験は、事後的な因果説明とは違って、原因(独立変数)をコントロールしてそれに応じて結果(従属変数)が変化するかどうかを検討しますから、順向的な因果説明となります。  

話は簡単なようですが、深くつきつめますと意外に面倒なことがいくつかあります。とりわけ、心がからんだ場合には、一筋縄ではいかないところがあります。「殺人があった。怨恨が動機」を例に考えてみます。

1)怨恨は、必ず殺人につながるのか---因果説明の蓋然(がいぜん)性   
人に恨みを持てば誰もがいつでも殺人を犯すわけではありません。そこには、蓋然性があります。恨みを持てば殺人を犯す「確率が高い」ということに過ぎません。  
怨恨を殺人にまで追い込んだ状況分析もかかせません。ただ、状況のほうは、あまりに複雑で、かりにはっきりとしていても「その時その場限り(アドホック)」で一般性がありませんので、無視されてしまうことが多いのです。

2)殺人に至った怨恨をもたらしたさらなる原因は何か---因果説明の無限後退性  
何かが起こったとき、それをもたらした直接の原因がまず注目されます。しかし、その原因も実は、さらなる原因の結果でもあります。  
怨恨はそれ以前のいじめに端を発していて、いじめはそれ以前の金銭トラブルに端を発していて、というように、原因を探る旅には、終りがありません。  
とはいっても、現実的には、どこかで原因の追及を中止しなければなりません。そうかといって、あまり早くストップしてしまうと、真の原因を見逃す危険性があります。  

「怨恨が動機」とする因果的説明には、さらに、面倒な問題がありますが、これについては、次項目の動機論的説明のところでまとめて話をしてみます。

************* 心の実験室「原因を考えてみよう」 次のようなことがあなたに起こったとします。その原因はなんだと思いますか。一番ありそうな原因をそsれぞれのケースで、4つの中から一つ選んでください。                         

選 択 枝      ケース1 入学試験に合格した    
<----運  努力  才能  

状況 ケース2 希望した高校に入れた   
<----運  努力  才能  状況

ケース3 自転車で転んで怪我した  
<----運  努力  才能  状況

ケース4 レギュラーに選ばれなかった<----運  努力  才能  状況

「解説」  
心理学の研究テーマの一つに、原因帰属研究というのがあります。人々は、自分に何かが起こったとき、その原因を何に帰属させるかを、いろいろのケースについて調べるものです。  こうした帰属判断がごく普通にやれるところに、人の因果認識が、いかに心の中で自然に行なわれているかをうかがい知ることができます。  
それはさておき、因果帰属研究によると、たとえば、次のような2つのタイプの人間がいることがわかっています。
○ケース1、2のような成功体験(結果)だと自分の努力が原因、ケース3、4のような失敗体験だと運や状況に帰属させるハッピー人間、
○逆に、ケース1、2では運や状況、ケース3、4では才能に帰属させるアンハッピー人間  いつもアンハッピーな帰属ばかりしていると、無気力人間になってしまいます。そこで、原因帰属の仕方の変更を支援する帰属療法なる心理療法も開発さています。

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