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見た目力アップ」表現力アップ

2019-06-23 | わかりやすい表現
見た目力アップ


●見た目の良さは大切
 手元に「ファースト・インプレッション」(有斐閣)という本があります。その本の冒頭に、見た目がいかにポジティブな効果を持つかについての心理実験の結果が紹介されていますので、そのいくつかを紹介しておきます。
○魅力度が高いと判断された人は、社会的に望ましいとされる性格を持つと評定されました。さらに職業上の成功、結婚への適性、生活全般の満足感も高いと評定されました。
○女性が魅力的にメイクをした場合とそうでないメイクをした場合とでは、同一女性に対する男性の反応がかなり異なります。
 いずれも大人についての写真を見ての第一印象からの判断です。人物の魅力度は、このあとに続くさまざまな情報ややりとりによっても形成されることは言うまでもありません。

●第一印象における直感的判断
 人間の情報処理は重層的になっています。基盤にあるのは、「無意識で、自動的で、迅速な処理を行なうルート。それに重なるようにして、「意識的で、制御的で、時間をかけた」処理を行うルートが並行しています。前者を裏道の処理、後者を表道の処理と呼ぶ人もいます。
 第一印象での人物情報の処理のほとんどは、裏道で行われます。そこでの処理結果は、1つは、もっぱらその人物に対する好悪、あるいは、ポジティブ評価かネガティブ評価のいずれかになります。これが、後の対人関係の方向性、つまり、積極的につきあうか、それとも引いた付き合いをするかを決めます。
もう一つは、その人物についてのおおまかな印象の形成です。名刺にある肩書からイメージするようなものです。たとえば、偉そうな人だから、すこし下手にでておこうとか、人が良さそうなので、親しくなっておこう、となります。
 なお、裏道処理による第一印象の制約が強すぎると、その人物に対する思い込みが発生して、表道の情報処理をゆがめることになります。たとえば、「こんなに魅力的な人が悪い人のはずがない」「ぱりっとしたスーツを着ているからあやしい人のはずはない」となってしまい、詐欺の餌食になることもあります。

●見た目の良さを作り出すもの
 見た目の良さを作り出すものは、身体的特徴、動作、服装の3つです。それぞれ、何をもって見た目がよいかは、かなりのところまではっきりしています。
 1つは、身体的特徴、とりわけ、顔です。いうまでもなく女性なら美人、男性ならイケメンです。化粧技術が日本では格段に進歩してきています。先日も、TV出演したとき、お化粧をしてもらいましたが、あまり素敵だったので家に帰って妻に見せてしまいました。
 2つは、表情や仕草です。無表情はもってのほか、あなたと仲良くしたい、話したいとの気持ちを表情と仕草で示すことになります。とりわけ、子どもは表情や仕草を読み取る天才です。したがって、とりつくろった表情や仕草はだめです。ただちにその嘘を見抜かれてしまいます。
 最後が服装です。TPOを心得ておけば、どんな服装でも見た目が良いことになります。流行にもちょっぴり気を配れれば言うことなしです。
 なお、相手が中高生になると、教師の見た目は、自分の将来の見た目を設計する暗黙のモデル(師範)になっています。いささかもおろそかにしないほうがよいと思います。いつもジャージと運動靴では、モデル効果を発揮できないことになります。

●なぜ見た目のよさは人をひきつけるのか
 4つほど理由があると思います。
 1つは、見た目のよさは、芸術作品を見たときのように、理屈抜きで気持ちをポジティブにしてくれます。
 2つは、学習効果です。TVドラマやCMに出てくる見た目のよいタレントの振舞いを朝昼晩と見せつけられれば、黙っていても見た目のよさの効果を学習してしまいます。
 3つは、後光(ハロー)効果です。見た目のよさは、性格や能力などのほかの点もすばらしいとの判断も生じやすいので、一層、ひきつけられることになります。
 4つは、自分のために見た目を気にしてくれたとのメッセージを与えることです。デートの相手がとんでもない格好であなた目の前に現れたら、どうでしょうか。

●見た目が悪い人の勝負所
 第一は、第一印象で勝負しないことです。「人は見かけにあらず、中身が勝負」です。ただし、中身をわかってもらうには時間も手間隙もかかります。とりあえずは、第一印象もおろそかにしないに越したことはありません。しかし、第一印象が悪い人でも、それなりの工夫と努力で中身へ誘導できます。
 幸いなことに、教師ー子ども関係は、長期間にわたって築かれますので、第一印象にはそれほど強くは依存しませんし、第一印象をさまざまな形で修正してもらえる機会があります。3つほど、おすすめのコツを紹介しておきます。
 1つは、相手との接触回数を増やすことです。接触頻度が多いほど好感度が増すという単純接触効果が知られているからです。「去るもの日々に疎し」の逆です。
 2つは、傾聴効果の活用です。相手の話をじっくりと聞く姿勢です。相手からの好感と信頼をうることができます。
 さらに、自慢話しや押し付けにならない程度の秘密がかった自己情報の提供です。「内緒だけと、先生も昔、不登校だったのよ」といった類の話です。相手との情報の密やかな共有は信頼関係の基礎になります。


説得力アップ」表現力アップ

2019-06-21 | わかりやすい表現
説得力アップ

●子どもを説得する
 言葉があやつれるようになり、自我ができはじめる3歳頃。第1反抗期がはじまります。この時期は、親が子どもに説得という行為をはじめる頃でもあります。言うことをきかない子どもをそれなりの理屈で説得しなければなりません。
 やがて小学校に入り知識が増えてくると、説得よりも説明主体の対話になっていくのですが、中学校に入る頃になると、再び反抗期がはじまります。親離れのためです。これが、第2反抗期です。
ここでも説明よりも説得する(したくなる)ことのほうが何かと多くなりますが、第1反抗期の時とは違い、子どもの側の知識量も豊富になりますから、説明と説得をうまく使い分ける必要が出てきます。

●説明と説得をバランスよく
 両者はそれほどはっきりとは区分はできないのですが、説明は子どもの知識に関連づけての情報提供、説得は子どもに有無を言わさずにこちらの言い分や考え方を受け入れさせることとなります。
 説明ばかりではらちがあきません。そうかといって、力まかせの説得ばかりでは、表面的な納得しか得られません。説明と説得とがほどよいバランスを保つことが求められるところです。
 わき道にそれますが、夏休みになると、NHKで子ども電話相談がはじまります。
 子どもの質問のおかしさ、おもしろさもさることながら、回答の先生方の名解説には感心させられます。ただ、「わかりましたか?」とアナウンサーが聞くと、どの子どもも「わかりました」と答えるのが気になります。おそらく、いかに名解説でも、たとえば「熊は4本足であるくのに、人間はなぜ2本足であるくのですが?」「命はなぜ一つなのですか?」という5歳の子どもへの回答が、本当に「わかっている」かは、かなり疑問です。でも、どの子どもの一様に「わかりました」と答えます。ここには、説明の妙だけではなく、NHKという権威?による説得の力を子どもが感じ取っているような気がしました。


●「説得への抵抗にも配慮を」説得のコツ その1
 説得の入り口のところで、説得されることそのものに抵抗する傾向のあることが知られています。心理的リアクタンスと呼ばれています。反抗期の中学生くらいになると、とりわけ強いリアクタンスがあることを承知しておく必要があります。
 事の是非よりも、ともかく説得されることへの反発、時には説得内容とは逆の方向へあえて態度や信念を変えてしまうこともありますから、困ったものです。
 心理的リアクタンスを少しでも下げるようにしないと、いつまでも入り口にとどまってしまうことになります。
 そこで、TPOに応じて、その場でただちに説得、といった急いた気持ちを押さえて、
① あめ玉でもすすめる
② 雑談や世間話をする
③ 言い分をじっくりと聴く、
といったことが考えられます。要はあせらないことです。

●説明と同意の上で」説得のコツ その2「
 医療現場でのインフォームド・コンセント(説明と同意)については、ご存じだと思います。治療側がしっかりと根拠を示して、治療方針を患者に納得してもらうというものですね。
 日本でもかなり普及してきてはいますが、現場ではさまざまな問題があるようです。そのいくつかを挙げてみます。
・患者の理解にあう形での根拠の示し方が難しい。
・患者の不安が理解を妨げてしまう。
・治療側への一方的な依存が発生しがちで自分なりに理解し納得してもらえない。
患者と医師とは違って、子どもと教師の間には、基本的に対等な関係ではありませんので、真のインフォームド・コンセントは、子ども相手ではなかなか難しいところがあります
 子ども相手になると、わからないままの納得のほうが多いかもしれません。そのようなときは、「そうせざるを得ないので、そうした」という認識を説得する側が、しっかり持つことが大事ではないかと思います。
 薬を飲ませたい、しかし、なかなか根拠を示して説明してもわかってもらえない、本人も納得しない。しかし、ことは急を要する、というような場面はいくらでもあります。むろん、可能なら、保護者や担任に立ち会いのもとでの説得もあります。

●「勇気づける説得もある」説得のコツ その3
 説得はおおむね、こちらの言い分を相手に受け入れさせることですが、時には、子どもなりの考えや行動の良いところを見つけて、そのすばらしさをほめ勇気づけてやることもあってよいと思います。
 説得、すなわち対立、強制ではなく、子どもなりの態度や信念に対して教師なりの共感のメッセージを送ってやる勇気づけも、広くは説得と言って良いかもしれません。

●「説得には権威も必要」説得のコツ その4
 教師はただ教師であるだけで権威者だった時代は、子どもに対する説得は実に簡単だったと思います。その意味では、今の時代、説得の難しい時代です。しかし、教育という知の陶冶の現場では、むしろ、好ましい時代というべきかもしれません。
 権威をかざしての説得は、相手が子どもであるだけにできるだけ避けたいところです。子どもの知識に訴えながら、みずからの意志で納得することが知的な陶冶につながるからです。
「友達をいじめるな」とこわもての説得をするよりは、そのことの理非を考える機会と知識を与えることが説得の王道です。
 もちろん、いつもそれでいけるとは思いません。あれこれ言う前に子どもを動かさなければいけない緊急の時もあれば、絶対にやってはいけないことを止めさせなければならないときもあります。そんな時は、権威を振りかざしての本気の説得が必要です。
 
●「恐怖に訴える」説得のコツ その5
 権威を振りかざしての説得がだめなら、いよいよ最後は、恐怖や脅しに訴える説得になります。「言うとおりしないと罰(ばち)が当たるよ」という常套句がそれです。この変形は実にいろいろありますね。
 もっとも「罰(ばち)」が通用するのは、小学生まで。中学生ともなると、もっと理屈っぽくなってきますから、「罰(ばち)」の内容を科学的なものにしないと納得してもらえません。罰(ばつ)としては「携帯使用禁止」、脅しとしては、「いい高校に入れませんよ」などなど。
 なお、恐怖の裏返しとしては、安心や賞賛があります。これも、説得に使えます。「この薬を飲めば痛みがなくなる」「よく勇気を出して話してくれたね」などなど。
 いずれにしても、このコツは、あまり頻繁に使うと、効果が薄れます。

●最後に
 説明が理性的であるのに対して、説得には、感情的な要素が入ります。相手にどうしてもそうしてもらいたいという気持ちがあります。その気持ちのままに説得すれば効果があがるというものでもありません。
 そこには、説得のテクニックが必要です。言葉による説得をもっぱら想定して、そのいくつかを紹介してみました。

あえてわかりにくくする(複雑にする)!!

2019-06-21 | わかりやすい表現
「大手通信キャリアはなぜ高収益なのか?」という問いの答えを私なりに出すとすれば、「スマホのような生活必需品の料金体系を複雑にすれば、多くの消費者は思考停止に陥って、不満を抱えていても、高い料金を支払い続けているから」ということになります。
(これから制度変更が行われて、この方法は続けられないかもしれませんが…)

このことは年金制度でも同じことが言えると思います。つまり、「制度を複雑にすれば、多くの人は思考停止に陥る」ということです。
(井上孝之。アゴラ6月20日より)

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わかりやすくて何が悪い!!。
だからわかりにくさは、批判されて当然。
ということで、普通は、わかりにくいと言われたら、
わかりやすくする努力をすることになる。

ところが、あえて、わかりにくさを組みこんで、利益を得る戦略もあるのだ。
詐欺被害も怖いが、これもまた怖い。

わかりにくいものにも、大いなる警戒が必要。

話し方力アップ」表現力アップ

2019-06-20 | わかりやすい表現
話し方力アップ
 

●話し方はどうしてこれほど気になるのか
 話し方に強い関心があるのは、なぜなのでしょうか。その理由は3つあると思います。
第一に、それは、言語活動の中で話す、聴くにさく時間が圧倒的に多いからです。

 2つは、うまく話せなかったという失敗体験に起因するものです。話すのは、その時その場での実時間での行為です。この点、書くのとの大きな違いです。となると、当然うまく話せなかった、あるいは、言い落としてしまった、さらには言い間違いをしてしまった、といった体験をごく日常的にすることになります。後味の悪さばかりを引きずることになります。
 関連して個人的な体験を一つ。しかるべき地位につくと、スピーチが多くなります。時には突然の指名での即興もあります。プレゼンならそれなりの準備とそれなりの草稿がありますからこんなことはあまりないのですが、スピーチとなると、程度の差をあってもほぼ毎回こんな後味の悪さを感じています。
 
 第3には、しかし、努力すれば失敗しないようになるはず、さらにうまく話せるようになるはずなのですが、努力の仕方がわからないのです。それが、話すことに興味、関心を向かわせるのだと思います。

●子どもとは心で話す
 ところで、眼の前にいる一人の子どもとうまく話すには、どんなことに配慮したらよいのでしょうか。基本的なことを2つ挙げておきます。
 子どもは、話の内容より、話し手の意図や気持ちの方を読み取るのに長けていることを、まず認識する必要があります。とりわけ、低学年になるほど、この傾向は著しいものがあります。
「頭が痛いの?」と子どもに話しかけた時に、どれくらいその子どものことを本当に心配してくれているかを、子どもはただちに理解してしまいます。
 これは、考えてみれば当然のことで、生まれ落ちて言葉を自由自在に操れるようになる5、6歳頃までの間に、こうした力を自分の周囲りにいる人々とのコミュニケーションの中で体験的に身につけてきているからです。子どもはハート・リーダー(heart reader)の天才であることをしっかりと知っておく必要があります。

●第一声が大事
 その上で、やはり言葉を使って話しかけることになるのですが、その第一声が極めて重要になってきます。第一声にこそ、ハート・リーダーの天才・子どもは大人の気持ちをしっかりと読み取ってしまうからです。
 子どもに対する愛があり、自分の気持ちがポジティブであれば、おおかたの第一声は、ハート・リーダーの心をとらえるものが無意識のうちに自動的に出てきます。したがって、それほどあれこれと心配することはありません。
 問題は、意に反しての第一声です。
まずは、例えば、どやしつけたいほどの怒りをどうやって言葉で表現するかです。そのまま叱責するのが最適な場合もあります。子どもの方にそうされて当たり前との認識がある場合です。
 その認識がない子どもにストレートな叱責は禁物です。こちらの気持ちを静め、ゆっくりと、「どうしたのか」という問いによって、状況把握に努めるところからはじめることになります。これがあなたの気持ちを平静にしてくれることにもなります。
 もう1つ、意外に面倒なのが、いわば気持ちにはあまり依存しなくてよい第一声です。大人どうしの場面でよくみられます。ここでは、いつものしきたり通りに、あいさつと子どもの調子や用件を尋ねるのが一般的ですが、その後に続く一言が、思いもよらず子どもの心を傷つけてしまうことがあります。
 不登校の子どもと廊下でばったり。あなたの第一声は、「こんにちは。元気でやっている?」ですか、それとも「あら!久しぶりね。どうしていたの?」ですか。
「普通の状況では普通に語りかける」のが原則ですね。それでなくとも、子どもは普通でなく見られるのを極度に恐れているはずですから。それを増強するような後者のような語りは禁物です。

●話し方のコツ
 第一声に続く話し方は、状況に応じてさまざまですので、ここでは、一人の子どもに何かを説明する状況を想定して、そこでの話し方のコツを4つほど提案してみたいと思います。

① 自分ひとりで話す時間を短く
 どんなテーマにしても、話す材料は、教師の方が圧倒的にたくさん持っています。ついつい一方的に話すようになってしまいがちです。会話とは違いますから、話のやりとりはそれほどなくてよいのですが、それでも、理解の確認を随所でしながらの語りをした方がよいと思います。
② 一度に説明する量も少なめに
 一度にどうしてもあれもこれもとなりがちですが、これも、子どもの理解能力を超えたものになりがちです。量を減らすだけでなく、紙に要点を書いて手渡すくらいまでやらないと、せっかくの説明もうまく伝わらないことになります。その際に、「わからないことがあったら、また来て」の一言も忘れずに。
③ ほめ言葉を豊富に
 ほめられれば誰しもが気持ちよくなります。話すほうも、ほめ言葉を使うことで気持ちよくなります。安直なほめ言葉の乱発はただちにその嘘っぽさを見抜かれてしまいますが、気持ちが本気ならそれを言葉で表現できればそれに越したことはありません。
 あなたは、今ただちに、どれくらいのほめ言葉が思い浮かびますか。
昔いた大学の知り合いの女性教授は、すべてにわたりエレガントなのですが、もう一つ、ほめ言葉が実に豊富なのです。お会いするたびに、気持ちが浮ついてしまいました。
ほめ言葉の語彙を豊富にする努力をすることです。さらに、表現全体をポジティブなほうにバイアスをかけるようにしておくことです。ポジティブ・コミュニケーションの項を参照してください。
④ 対面より90度の位置で
 一番よくあるのは、180度の位置に座って話すことだと思います。この位置だと、お互いに相手のことがよく見えます。
しかし、説明してわかってもらうような状況では、相手が見えすぎてしまうのは、説明内容のじっくりとした理解には、ノイズになってしまうことが時にはあります。視線、ジェスチャー、表情などが気になってしまうのです。それに資料などを見せるときには、対面では具合がよくありません。そこで、90度の位置に座って、資料や紙に書いたりして一緒に見ながらの話も時には効果的です。

最後に、カウンセラーの東山紘久著「プロカウンセラーの聞く技術」の目次から、話し方のコツを挙げておきますので参考にしてください。
 
・自分のことは話さない
・聞かれたことしか話さない
・情報以外の助言は無用
・言い訳しない
・話には小道具がいる
・沈黙と間の効用を知る
・評論家にならない


説得を効果的なものにするための7か条 」10年前の今日の記事

2019-06-19 | わかりやすい表現
●説得を効果的なものにするための7か条

・親しみを見せる
・実益を先に示す
・知的好奇心に訴える
・情報を少なめにする
・議論する
・人、状況をみて説く
・広告宣伝の手法(アイドマの法則)も使ってみる   
 注意を引く(Attention)  利益に訴える( Interest )   欲求を刺激する( Desire) 記憶してもらう( Memory)   買いにきてもらう( Action)

会話力アップ」表現力アップ

2019-06-19 | わかりやすい表現
会話力アップ

●会話にも決まりがある
 「たかが会話、されど会話」である。
グライスという言語学者が、かつて会話が成立するための公準を提案したことがあります。
①適度の情報量
 会話では、必要とされている情報よりも、多すぎても少なすぎても、よくない。
②真実性
 ことわりのない限り、あるいは自明でない限り(自明なら嘘は一つの修辞表現)嘘を言わない。
③一貫性
 会話の流れに関連したことを言う。それをそれる時は、「話は違うけれど、」といったヘッジ(枕言葉)を入れる。
④明瞭性
 簡潔にはっきりと話す。

 この公準、至極当たり前ですが、よくよく自分の会話や周りの会話を観察すると、公準違反があることに気がつきます。
自分の知っていることを長々と話したり、確かめようのないうわさを話したり、平気で話題を変えてしまったり、専門用語をも造作に使ったりといった会話です。
会話をしてどっと疲れたりストレスを感じるのは、こうした公準違反に原因があることが多いはずです。

●言葉のキャッチボールをする

 誰と会話するにしろ、会話は、言葉のキャッチボールというくらい、思いや感情が相手との間で頻繁にいったりきたりします。
 ところが、時にはピッチャーが投げキャッチャーがとる関係になってしまう会話もあります。
 電車で遭遇した光景。
3人の中年女性が賑やかに会話しているのですが、真ん中の女性がひたすらしゃべり、左隣の女性がもっぱら聞き役。右隣の女性は我関せず。これが下車するまで30分も続いていました。こうなると会話を装った演説ですね。
 会話を分析するときの一つの指標に、ターンテーキング(turn taking)というのがあります。
 攻守ところを変える会話のキャッチボールが何回行われたかを数えるのです。それが、会話の質、さらには会話参加者の相互関係作りに大事ということです。

●会話には癒し機能がある
ただ、会話には、話すことでうっぷんがはらせる、という癒しの機能もありますから、お互いさまで、「今日は私の話を聞いて」ということで会話をすることもありだそうです。会話(おしゃべり)好きの女性から聞いたことがあります。
  「ものを言わぬは腹ふくれる業なり」です。でも、そのお返しは必要です。次にあなたが聞き役を引き受けることです。大きな流れの中でで、公平なターンテイキングにするのです。
カウンセリングではここに注目して、クライアントにもっぱら話させて、カウンセラーはもっぱら聞き役という会話場面をあえて作ることもあります。
保健室では、子どもからの一方的な訴えをひたすら受け止めるような会話が多くなります。ストレスが溜まりますが、職務としてたんたんとこなすことになります。

●会話の知的機能を活用する
 会話にはさらに大事な機能があります。それは、情報を収集したり、相手に情報を提供したりすることです。
 今はコンピュータの検索機能やメールが、かつては会話でしていたことのかなりの部分を代替するようにはなってきていますが、それでも、対面会話から得られる「生の」情報には捨てがたいメリットがあります。
 メリットその1は、会話では、情報のその人なりの評価、それも明示的な評価だけでなく、その情報を言ったり聴いたりした時の表情や声の調子などの言外の評価情報が生のまま得られることです。
 メリットその2は、会話での知的触発です。会話の最中に、突然、何かを思いついたという経験はなかったでしょうか。あるいは、会話内容を後で思い出して、「そうだ! そう言えば」といったことはなかったであしょうか。相手のちょっとした言動がそうしたことのきっかけになっているのです。

●表情と視線は、会話の潤滑油
 対面会話では、言葉以外の情報も否応なしに相手に伝わります。なかでも、表情・ジェスチャーと視線の役割は重要です。相手の話に同意、不同意も表情やジェスチャー、時には視線で即座にフィードバックできます。
 にこやかで応答的な表情は、相手の話を促すし、不機嫌な表情は、会話を抑制します。
さらに また視線は、主に会話でのターンテーキングの調整をしていることが知られています。自分が話す時には相手から視線を避け、終える時は次はあなたの番とばかりに相手を見るのです。
 表情・ジェスチャーと視線はいずれも、あまり意識的にコントロールされていないのが特徴です。それだけに、本音が出ます。それだけに、意識的なコントロールのもとにある言語情報との整合性が問われることになります。
これに関連して、「二重拘束」というおもしろい概念が哲学者・ベイトソンによって提案されていますので紹介しておきます。
 たとえば、保健室登校をしてきた子どもに、本当は教室にいってほしい気持ちを押し隠して元気で「おはよう」の挨拶を交わすような光景を想像してみてください。子どもは、あなたの2重の矛盾した気持ちを瞬時に読み取り、戸惑います。本音と建前のギャップにとまどうことといってもよいかと思います。
 表情・ジェスチャー、そして視線がこんな大切な役割を果たしていることをまずは知ってください。その上で、それなりの配慮ができるようになってください。項をあらためて、考えてみます。

●会話では、知的共感性が大事
 1章で、共感的理解の話をしましたが、それはもっぱら感情的共感についてでした。共感には、それに加えて、知的共感性も会話も含めたコミュニケーションでは大事です。
 知的共感性とは、以下のようなものです。
・相手の立場にたって物事を考えることができる
・反対意見も尊重する
・どんな問題でも対立する意見や考えがあることを承知している。
・批判や悪感情を持つ前に、相手の立場を考えられる
これらは、桜井茂男氏が作成した共感性をはかるための項目から抜粋したものです。
知的共感性とは、このように、相手の頭の働きや知識の思いをはせられることです。
会話だと相手が目の前にいますから、この知的共感性が直接試されることになります。

プレゼン力アップ」表現力アップ

2019-06-18 | わかりやすい表現
プレゼン力アップ

●プレゼンテーションとは
 口頭でのコミュニケーションには、たくさんの聴衆を前におこなうプレゼンテーションと、それとはいろいろの点で際立った対照をなす会話(おしゃべり)とがあります。本項ではプレゼン、次項では会話を取り上げます。
 文書によって伝えるのは間接的ですが、プレゼンも会話も、相手が目の前にいます。コミュニケーションが直接的です。
 この伝達の直接性が、プレゼンと会話のメリットでもあるのですが、時には、さまざまな面倒な問題が発生します。

●数に負ける
 余談になりますが、昔、3年間、付属高校の校長を兼任していたことがあります。年に10回くらい、朝礼台から700人余ほどの子どもたちに話をしてきました。
 これは今でも不思議に思うのですが、ただ聴衆の数が多い、というだけで、猛烈なプレッシャーを感じました。「頭真っ白、目が点」とまではいきませんが、最初は、話す時間が近づくと胃が痛くなる思いでした。回を重ねるにつれて次第に慣れてはきましたが、慣れるまでの間は、話す内容は、メモにしてそれを見ながら話すことでしのぎました。
 「聴衆はかぼちゃと思え」という忠告も思い出しましたが、あまり効果はなかったようです。
 講義でも、50人を超えると、しんどくなります。別に聴衆と戦うわけではないのですから、それほど緊張することも恐れることもないとは思うのですが、こればかりはどうにもなりません。
 準備万端でいくしかありません。
 
●聴衆を分析する
 というわけで、聴衆の数がどれくらいかもあらかじめ知っておいたほうが無難です。さらに、どんな人が聴衆なのかの分析も大事です。視点は2つです。
 一つは、関連知識の有無です。
受け手が、これから話す内容についてどれくらい知識を持っているかです。学校なら子どもの知識レベルや内容はだいたいわかりますから、この点は有利です。
もう一つは、聴衆があなたのプレゼンを聞きたいと思っているかどうかです。
 一番楽なのは、プレゼンの場に自分から望んで来てくれている動機づけの高い聴衆の場合です。
 こういう時は、内容勝負のプレゼンでよいのですから、気持ちよいプレゼンができます。
 プレゼンとは違いますが、寄席のお客さん。みずからお金を払って笑いにきてくれています。
一番困るのは、大学で言うなら必修の授業の受講生。単位取りだけがねらいの聴衆相手のプレゼン(授業)はとても疲れるし、うまくいかなかった後のストレス(PTSDならぬPPSD;post-presentation stress disorder)に悩まされます。
しかし、動機づけが低く、関連知識の少ない聴衆相手のプレゼンこそ、プレゼンの醍醐味かもしれません。いくつかの工夫を紹介してみます。

●聴衆の注意を管理する
 人の話を一方的に聞く時の注意の持続は、大人でも高々90分程度です。その間にも、注意は絶えず変動します。集中度が変わります。会場全体の注意レベルには、絶えず、意を配る必要があります。
 まずは、注意を引きつける工夫です。
付属高校で「校長先生の話」をする時には、模造紙にへたなイラストを描いて見せたり、ちょっとした実演をしてみせたり、クイズを出したりと、大学ではあまりしたことのないことをやってみたりしました。それなりに効果があった(と思っています)。
 次に考えるべきことは、プレゼン全体を通しての注意レベルです。これを一定レベル以上に保っておかないとたちまち聴衆は寝てしまったり、飽きてしまいます。
 このためには、一つは、マルチメディア提示を心がけることです。
口頭だけに頼るプレゼンではなく、スライド(パワーポイント)と文書、さらには演台でのジェスチャーをフルに使うことです。
 最近、パワーポイントによるプレゼンが普及してきて、演者が脇に置かれた演台のうしろに隠れてしまう形が一般化してきました。でも、これは、おかしいと思います。演者あってのプレゼンです。
 注意レベルを保つために有効なのは、聴衆とのやりとりを入れるのです。お説拝聴モードばかりが続くと注意レベルがどんどん低下します。そこで、対話モードにして注意レベルを上げるのです。随所でこれをやるとよいのですが、聴衆のほうからすると、迷惑。せっかく良い気持ち? で聴いていたのに、なんでそんなことするの、というようなところもあります。対話モードよりやや弱い、回答は期待しない問いかけモードを随所に入れるくらいのほうがよいこともあります。
 あとは、一時休憩です。90分を超えるようなプレゼンでは必須である。休憩すればまた注意のレベルは確実に上がります。
 90分の授業でも、私は、最近は、3分割授業をしています。
最初の15分くらいは「目で見る視覚心理学」、ついで本題に入り、途中で5分間、リラクセーション訓練、そして、また本題に戻るのです。

●わかりやすくする
①概要を配布する
 A4一枚くらいの概要を配布することは必須です。これによって、全体像がつかめるし、どこまで話が進んできたか、今の話は全体とどのように関係するかがわかるからです。

②スライドや資料は配付しない
 これを配布してしまうと、プレゼン会場が講義調になってしまいます。聴衆の顔が資料に向いてしまい、資料を逐一読むようなプレゼンになってしまいます。
最近は、パワーポイントを使うためか、特にこうしたプレゼンが多くなってきています。
しかし、せっかくお互いの顔が見えるプレゼンの醍醐味が味わえないのはもったいないと思います。場合によっては、事後配布という手もあります。

③相手の知識に配慮する
 聴衆分析のところで出てきた視点です。
これを具体的に実現するには、相手がよく知っている知識世界をうまく使うことである。
「たとえる」
「実例を使う」
といった工夫です。

●熱意も大事
 熱意と内容と方法とが三位一体になったとき、素晴らしいプレゼンになります。内容と方法にばかり意を配るだけでは十分ではありません。伝えたい、訴えたいという熱意を生で見せることも大事です。
 明るく、堂々と、はっきりした声で楽しそうに話すのです。
 それが内容と方法のまずさを補ってくれることさえあります。
 

ビジュアル表現力アップ」表現力アップ

2019-06-17 | わかりやすい表現
ビジュアル表現力アップ 

●文書のビジュアル化とは
 文書のビジュアル(視覚)化には、大きく分けて、文字情報にかかわるものと、イメージ情報にかかわるものとの2つがあります。
 一般には、ビジュアル化というと、絵や図表などのイメージ情報のほうを思い浮かべます。
しかし、文字情報にかかわるビジュアル表現、つまり、文字形(フォント)やサイズ、表記の仕方、さらに、レイアウトも、文書のビジュアル化の要素として重要です。
なぜなら、それが、読みやすさだけではなく、読み方をガイドする暗黙の表現にもなるからです。

●文字情報をビジュアル化する
 文字情報のビジュアル化の領域の代表的なものは、以下の4つです。いずれも、ワープロが一般化してきた最近では、誰もがそれなりにTPOに応じて適切なものを選んで活用できる力(ドキュメント・リテラシー)が求められるようになっています。
①フォント
 
②表記
 日本語の表記は、漢字、かな、カタカナを使います。視覚的には複雑ですが、それがメリハリ効果をもたらしていることは、前述したとおりです。

③行間、字詰め
図のように、文字情報のビジュアル化には、行間、字詰めもあります。ここでも、その活用能力が試されます。
 

④レイアウト
 これにはさまざまなものが含まれます。版面、インデント(書き出し)、段落などに加えて、前項で紹介したメリハリ表現もその一つです。

●写真、絵、イラストを使うーーイメージ情報

 以下は、もっぱらイメージ情報にかかわるビジュアル化の話になります。最初は、写真、絵、イラストです。
 この3つの共通点は、世の中にあるものをイメージとして伝えようとするところにあります。
しかし、それを写真にするか、絵にするか、イラストにするかによって、伝達効果には、微妙に違いがあります。

写真のようにあまり現実を具体的かつ写実的に見せると、何が大事かを伝えにくいというところがあります。見るほうからすると情報過多になってしまうのです。
逆に、多くの絵表示(ピクトグラム)のように、あまりに抽象化したイラストで伝えようとすると、現実のイメージが伝わらなかったり誤解されたりしてしまう恐れがあります。
 かくして、「適度に具体的なビジュアル化」が、とりわけ、絵やイラストでは最適表現ということになる。
 ここで、「適度に具体的」とは次のようなことに配慮した表現である。
①伝えたいことがはっきりわかる
  例:大きくする 囲う 色をつける
②全体も示す
 例:全体を小さく、伝えたい部分を大きく
③細部情報は省く
  例:形状は示すが、その中は空白
④シンボル(約束で決めたもの)はできるだけ使わない
  例:△や×も誤解されることがある


●図表を有効に使う
 図表は、伝えたい内容に、実証的な論拠を付与するために使われます。
小学校の高学年くらいから、図表の描き方、読み方は教えられるので、伝達手段としては至極便利です。ただ、次のような点には注意する必要があります。

① 図表には情報が豊富過ぎるところがある
伝えたいことは、図表の一部なのに、それ以外の周辺的な情報も入れ込んで描くのが普通である。その冗長さが説得性にもつながるので悪いことではない。
しかしながら、その冗長さが伝えたいことを隠してしまう情報ノイズになってしまうことがあります。
これを防ぐには、一つは、適切なキャプション(図表のタイトル)をつけること、もう一つは、本文で言いたいことを述べる、最後は、伝えたい箇所を強調することです。

②訴求力のある図表にする
図表は実証的であること示すために、えてして、数値の羅列や無味乾燥な棒や線になってしまいます。
正確な実証データの表示が大事な学術論文ならそれでよいのですが、子どもにわかってもらいたい図表では、それでは見てもらえません。棒を人の姿で表示したり、スケール(目盛)を変えたり、色をつけたりして訴求力のある図表にする工夫も必要です。

③図表の描き方の基本を知る
 図解は、描く人にとって実に難しい作業です。表現したいことを精選し、それを図解の決まりごと(リテラシー)に従って表現するのは、どちらもそれなりの努力がいります。
 最近は、パワーポイントが普及してきて、誰もが簡単に図解表現ができる環境になってきたのは、コミュニケーション環境としては結構なことです。多いに利用したいものです。
 図解の基本は、「囲む」「配置する」「線でつなぐ」の3つです。
 構想の単位を囲み、それを紙面に配置して、線でつなぐ。図解はこれにつきます。囲みを四角にするか円にするか、配置する場所は真ん中か上下左右どちらか、線は、矢印か点線か、といった表示上の細工は、描く人の芸術的なセンスにかかっています。
 最後にまとめの意味で、一枚のイラストを挙げておきます。
 参考にしてください。

文章表現力アップ」表現力アップ

2019-06-16 | わかりやすい表現
文章表現力アップ

 なお、以下、コミュニケーション力アップのすべてにわたり、その基礎には、受け手の頭の働きのくせに配慮したコミュニケーションという観点――私は、これを認知表現学と称していますがーーがあります。
 
●メリハリ表現をーー文章表現力アップその1
 図の左側に示したのは、バスの非常口の開け方です。実例です。しっかりと読めば、内容的には正確で情報的にも充足しています。しかし、いざというときに、こんな表示を読んでもらえるでしょうか。

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「実例」
非常のときは、レバーをまわし、座席を前に倒し、
非常ドアをあけて、外に出る。

「メリハリをつけた表現に改訂」
非常のとき
(1)レバーをまわす

(2)座席を前に倒す

(3)非常ドアをあける

(4)外に出る

 かりに文字ばかりで書かれた文書であっても、図右に示したように、メリハリのある書き方をすれば、それなりの表示効果を期待できるはずです。
 メリハリ表現とは、意味のまとまり(区別化)と大事さの程度(階層)が、一目でわかるようにしたものです。

●意味のまとまりが見えるようにする
 メリハリをつけるためには、まずは、意味のまとまり(チャンキング)の可視化が必要です。
 さきほどの例なら、箇条書きの形で「1文1動作」になっているところです。
 さらに例をもう一つ挙げておきます。

 文書は、読んでわからせるのが王道なのですが、見ただけで読み方がわかるようにすることもまた大事なのです。
 お遊び例を一つ。次のひらがな文はどうでしょうか。
 「うらにわにはにわにわとりがいる。なかにわにもにわにわとりがいる」
 「うりうりがうりうりにきてうりうりのこしうりうりかえるうりうりのこえ」
 
 見た目では、なかなか理解しにくいですね。
 日本の通常表記である漢字かな混じり文にして、読点を入れれば、正確かつ迅速にわかってもらえるはずです。
 文書作成でよく使う小見出しにも、大きな意味的まとまりを見せる効果があります。
 一定の長さの文書になると、内容的にもいくつかのユニットに分かれます。その分かれ目に小見出しを入れます。 
 なお、小見出しをつけるようにすると、書くときにも、より一層、内容の精選をするようになる副産物もあります。

●大事さを見せる
 意味的なまとまりの可視化の次は、内容の大事さの可視化です。
 話は簡単です。大事さの程度に応じて、目立ちやすさを変えるだけです。
 たとえば、本書では、部―>章―>節―>小見出しの順に活字の目立ちやすさを変えています。

 これを階層化と呼んでいます。
 目立つものには注意が向きます。注意されたものは、深く処理をされます。ですから、大事なものを目立つようにしておくのです。

●適切なタイトルをーー文章表現力アップその2
 一定の長さの文書には、タイトルを付けます。そのことは誰もが知っているのですが、どんなタイトルを付ければよいかについては、意外に無頓着なところがあります。
 まず、タイトルは、文書をわかりやすくする要(かなめ)であることを知っておく必要があります。
 ここでまたお遊び。下に示した文書を読み、これが何のことを述べたものか考えてみてください。

「その手順はまったく簡単です。まずものをいくつかの山に分けます。もちろんその全体量によっては、一山で十分でしょう。もし次の段階に必要な設備がないためどこか他の場所へ移動する場合を除いては、準備完了です。一度に沢山やりすぎないことが大切です。沢山にやりすぎるより、少なすぎる方がましです。すぐにはこの重要さがわからないかもしれませんが、めんどうなことになりやすいのです。」
(ブランスフォードによる)
 
 この文書にタイトル「洗濯をする」を付ければ、たちどころに内容が理解できるようになってくるはずです。試しにもう一度、読んでみてください。
 どうしてこういうことになるかと言うと、タイトルを見ると、それに関する頭の中の知識が活性化するので、文書に書かれたあいまいな内容が取り込みやすく(既有知識と関連づけしやすく)なったからです。
 そこで、タイトルをつける際のポイントを一つだけ紹介しておきます。
それは、具体的でイメージのわきやすい内容にすることです。
 多くのタイトルは、マクロで抽象的なものになりがちです。「かぜの予防」「かぜをひかないように」といった類です。
これはこれで、文書全体で言いたいことをおおまかにわかってもらう効果はあるのですが、それが、かえって、「そんなこと自分は関係ない」「また風のはなしかー」となりがちです。
それよりも、「うがいでかぜを防ごう」「冷えすぎによるかぜに注意」のように、その文書で言いたいことの核心をずばりタイトルにもってきたほうが、読み手の注意を引く効果は大きし、場合によっては、タイトルだけしか読んでくれない人にもそれなりの効果を期待できます。
マクロで抽象的なものをサブタイトルとして使うと、なお効果的です。

●読ませる工夫もーー文章表現力アップその3
 文書は作る側からすると、かなりしんどい仕事になります。そのためもあってか、自分の作った文書は受け手に読まれて当然との錯覚をしがちです。
 しかし、考えてもみてください。読み手も、読んで理解するのは、かなりの努力がいるのです。努力に値する文書かどうかをタイトルや小見出し、さらにはレイアウトなどから瞬時に判断することに長けています。その点の配慮も必要です。
時には、「ぜひ、この文書は読んでほしい」との気持ちを文書に込めることも必要なのです。それには、広告宣伝で使うアイドマ(AIDMA)の法則を知っておくとよいかと思いますので紹介しておきます。

Attention 目立たせて注意を引く
  例;大事なところに色を付ける
Interest 興味、関心、利益に訴える
  例;「かぜの予防はクラスを救う」

Desire 欲求に訴える
  例;「かぜのつらさよりうがいをする ほうが楽」
Memory 覚えてもらう
  例;手を変え品を変えて何度も繰り返して伝える
Action 行動してもらう
  例;先着順です
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わかる力をつけるための7つの原則

2019-06-14 | わかりやすい表現

わかる力をつけるための7つの原則

・わかりたいと思う
・関係づける
・たとえてみる
・例を見つける
・使ってみる

・わからないものを常に頭に抱えておく
・わかるための道具を有効活用する

『心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ』書評

2019-06-09 | わかりやすい表現
MIE KAMIYA<<PickUPs」2019年4月24日より

認知心理学から「わかりやすさ」に迫る
文章は、一にも二にもわかりやすさが大切です。私のようなライターはもちろんですが、そうでなくとも、職場では企画書、報告書、業務マニュアルといった様々な書類がやり取りされており、わかりやすい文章を書けるかどうかで仕事の質が決まると言っても過言ではないでしょう。

ですが、これほどわかりやすさが求められているのにもかかわらず、「わかる」とはどういう状態なのかと問われると、つい考え込んでしまいます。誰もが毎日何かについて「わかって」いるはずなのに、なぜか上手く説明できません。「わかる」あるいは「わからない」時、私たちの頭の中で一体何が起きているのか。本書はこの疑問からスタートし、認知心理学の観点から文章表現の“なぜ?”に迫ります。
 

わかりづらさはどこから
文章術の解説書で必ずと言って良いほど挙げられているのが、「一文を短くする」というテクニックです。しかし、文章を書くにあたって私たちが本当に知りたいのは、「どうして一文が長くなってしまうのか」ということではないでしょうか。文章を書いていると、一文にもっと情報を詰め込まなくてはいけないような気がしてきて、「~ので、…」「~ため、…」「~し、…」「~が、…」などと、つい延々と文章を繋いでいってしまう。――このような書き方を、本書では「構想優先症候群」と呼び、分かりづらい文章の特徴的傾向として説明しています。

「構想優先症候群」は、構想(書きたいこと)を早く吐き出してしまいたいという書き手の焦りによって引き起こされるのだといいます。あわてて書き連ねられた文章は無理やり直結されていて、係り受けもあいまいです。しかし、読み手は、文頭から順番に意味的な単位でまとめて処理しようとするため、体制化(意味や内容でまとまりを作ること)が不十分な文章は読み手の情報処理に負担がかかります。この読み手の負担こそが、わかりづらさの正体というわけです。
 

良き書き手となるために
文章のわかりやすさ(わかりづらさ)は、書き手と読み手の情報処理システムのギャップをどれだけ埋められるかに懸かっています。そして、そのためには、伝えたいという自分自身の動機に思いを巡らせると共に、読み手のメンタルモデル(その人なりの仮説や考え方)に対して常に最大限の配慮がなくてはなりません。これまで文章術はセンスや小手先のテクニックばかりが論じられてきました。しかし、本書では良き書き手としての振る舞いが示されており、文章表現に悩めるすべての人にとって必携の書と言えるでしょう。
 

書籍情報
『心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ』
著者 :海保 博之
出版社:講談社

くたばれ マニュアル(再々掲)

2019-06-07 | わかりやすい表現
ル 

はじめに 

1章 くたばれ マニュアル  
1.1 「ヒルキモをピラッコしてください」     ---専門用語が無造作に使う
1.2 「紙の右隅をちぎってください」     ---言葉だけに頼りすぎ
1.3 「絵に示す黒い部分を折ってください」  視点変更     ---どの場所かがわからない
1.4 「レバーを引いて椅子を前に倒してドアを外に押してください」     ---一つの文でたくさんのことを言いすぎる
1.5 「フロッピーをセットしてください」     ---たくさんのことを一言で言い過ぎる
1.6 「     ---まちがった文で表現している  文法違反

2章 なぜ、こんなマニュアルになってしまうのか 
                
2.1 機械が問題
2.2 書き手が問題
2.3 表現が問題
2.4 あなたが問題     認知志向か状況志向か

3章 こんなマニュアルなら安心
3.1 操作ができるマニュアル
3.2 情報を探したくなるマニュアル
3.3 わかるマニュアル
3.4 読みたくなるマニュアル
3.5 覚えたくなるマニュアル

4章 賢くなろう  
4.1 コンピュータは怖くない    コンピュータ不安テスト
4.2 知識は至る所に
4.3 クレームのすすめ

5章 どこへ行く マニュアル
5.1 マニュアルレスに向けて
5.2 オンライン・マニュアルに向けて
5.3 新しいマニュアル文化の醸成に向けて

おわりに 

自家製本「 わかりやすい表現――認知表現学への招待

2019-05-31 | わかりやすい表現


わかりやすい表現――認知表現学への招待

全9章


海保博之

2017/04/01



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目次
第1章 わかりやすさの認知心理学 p1
第2章 わかりやすい表現のための7つのポイント p13
第3章 効果的な研修を実施するための表現 p21
第4章 操作の説明は難しい p27
第5章 なぜ、人は、マニュアルがわかりにくいと言うのかp47
第6章 絵表示のわかりやすさ p52
第7章 効果的なプレゼンをする p55
第8章 わかりにくさに耐える p58
第9章 ネーミングは広告のトータル・メモリー・デザインの核で
    ある p60
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こんな資格制度があります!

2019-05-30 | わかりやすい表現
●NPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)専門資格認定センターが、2009年度から実施している「人間中心設計専門資格」の2018年度(第10期)試験が完了しました。既に合格者の発表は3月末にすんでいますが、今年度は76(昨年比+22)名の方々が「人間中心設計専門家」として、また2014年度から新設された「人間中心設計スペシャリスト」として82(昨年比+30)名と昨年比かなり多くの方が認定されました。
*早川 誠二 2009年からスタートし、現在は1,000名近い人が認定されています。

●3級 テクニカルライティング試験[TW]
使用情報の作成に携わる人々だけでなく、実用文の作成に役立つ日本語の文章表現技術を高めたいすべての方々を対象とする試験です。
営業やエンジニアなど文書を仕事の対象としてなくても、文書は作成します。仕事で扱うすべての文書は、必ず誰かに向けて発信されるものです。しかし、文法や文の知識だけでは文書は作成できません。何のために、何を、どう説明するか、もう一度日本語を見直し、伝わる文書力を磨きましょう。
*たとえば、3級受験者219名。合格率は、男28% 女53%