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日本語検定(ネットより)

2020-07-14 | わかりやすい表現
きょうの日本語検定 正しいのはどれ?
【貿易―外国】と同じ関係になる言葉の組み合わせは?[4級]
  1. 料理―来客
  2. 勉強―学校
  3. 診察―患者
@@
2が正解かなー
貿易するのは外国。
勉強する「に」は学校?
いや3かなー
診察するのは患者
うーん???



「マニュアルとともに、20年」(平成18年3月、筑波大学退職に際して)

2020-07-13 | わかりやすい表現
「マニュアルとともに、20年」
●研究だよりでお許しを
平成18年三月末日で筑波大学を定年になります。
「定年まで5年を切った教官は大学院生をもたない」という専攻内の申し合わせのため、次第に院生が減りつつあり、現在は、日本学術振興会のPD1名と2名の院生、卒論生1名になりました。否が応にも、研究室の店仕舞いの態勢に入りつつあります。こんなときに研究「室」だよりはないでしょうというわけで、自分の研究だよりでお許しいただくことになります。
そうはいっても、ちょっとだけ、研究「室」だよりを。
 これまでの研究室のポリシーとして、認知心理学という大枠は掲げてはいるものの、指導できる範囲内であれば、基本的に、「来る者こばまず、去る者大歓迎」「研究テーマはやりたいものをやってよい」ことにしてありましたので、今いる5名の院生の研究デーマは、次のようにかなりバラエティに富んでいます。
・人工物を介した対話の特性と最適化
・心的演算をめぐる諸現象とその認知メカニズム
・ワーキングメモり(作業記憶)の個人差と言語情報処理
・記憶検索における抑制と促進
・読書時のオンライン自動的情報処理
このうちのいくつかのテーマは、それなりに指導はできると思ってはいるものの、「そんなテーマで研究して何がおもしろいの?どんな役に立つの?」と思ってしまうようなものも実はあります。でも「やめたら」とまでは(できるだけ)言わないようにはしています。自分も30代終わりまではそんな研究をしてきましたし、もしかすると、彼らの中から第2の田中さんがでてくるかもしれないからです。研究評価は本当に難しいですね。

●マニュアルとともに、20余年
 さてでは、「研究だより」それも「回顧(自慢話?)編」です。
 次の2冊の本の出版が、それまでのほぼ20年にわたる基礎的・実験室的研究から応用研究のほうに軸足を移すきっかけになりました。これは、自分の研究生活の上で、劇的な変化でした。
・1987年「ユーザ読み手の心をつか  むマニュアルの書き方」(共立出版)
・1988年「こうすればわかりやすい  表現になる---認知表現学への招待」  (福村出版;絶版)
 いずれも、ユーザ、読み手、聞き手の頭の働きのくせにあった表現とはどのようなものであるべきかを考えてみたものでした。
この本の出る5年前頃から、ワープロが急速に普及してきました。それに比例するかのように、そのマニュアル(取扱説明書)がわかりにくくて困るという苦情がメーカーに殺到してしまい、弱り抜いていたようでした。
そんな時でした。日本IBM(株)の大和研究所の人間工学のセクションでマニュアル評価の仕事をしていた加藤隆氏(現在、関西大学教授/総合情報学部長)から、認知心理学の立場から、これを解決する方策がないかと相談されたのがきっかけで、マニュアルの世界に足を踏み入れることになりました。
どんなことをしたかというと、認知心理学をベースにして、「ユーザはマニュアルをこんな風に読んでいる」「マニュアルを読んでいるときにこんなことを頭の中でしている」だから「こんなふうにマニュアルを書いてくれるとわかりやすくなるはず」という提言をしてみたのです。



●図表を有効に使う」わかりやすい表現

2020-05-20 | わかりやすい表現

●図表を有効に使う
図表は、伝えたい内容に、実証的な論拠を付与するために使われる。小学校の高学年くらいから、図表の描き方、読み方は教えられるので、伝達手段としては至極便利である。 
ただ、次のような点には注意する必要がある。 
図表には情報が豊富過ぎるところがある。伝えたいことは、図表の一部なのに、それ以外の周辺的な情報も入れ込んで描くのが普通である。その冗長さが説得性にもつながるので悪いことではない。
しかしながら、その冗長さが伝えたことを隠してしまうノイズになってしまうことがある。これを防ぐには、一つは、適切なキャプション(図表のタイトル)をつけること、もう一つは、本文で言いたいことを述べる、最後は、伝えたい箇所を強調することである。
最後にもう一点。図表は、文字通り描くと数値の羅列や無味乾燥な棒や線になってしまう。正確な実証データの表示が生命の学術論文ならそれでよいが、子供にわかってもらいたい図表では、それでは見てもらえない。棒を人の姿で表示したり、スケール(目盛)を変えたり、色をつけたりして訴求力のある図表にする工夫も必要となる。

●図解は慎重に使う
 図解は、描く人にとって実に難しい作業である。表現したことを精選し、それを図解の決まりごと(リテラシー)に従って表現するのは、どちらもそれなりの努力がいる。
 最近は、パワーポイントが普及してきて、誰もが簡単に図解表現ができる環境になってきたののは、コミュニケーション環境としては結構なことである。さて、その図解表現のコツを2つだけ紹介しておく。
1) 論理的に考える習慣が必要
 図解する前の構想の洗練の段階で、表現要素として何かあるか、それらの関係はどうなるのかを考えられる習慣をつけておかないと、図解表現は無理である。理工系的頭脳を持った人々が得意であるが、これからは誰もがそれなりにできなければならない。図解のリテラシーの基本を知る
2)図解の基本は、「囲む」「配置する」「線でつなぐ」の3つである。
 構想の単位を囲み、それを紙面に配置して、
線でつなぐ。図解はこれにつきる。囲みを四角にするか円にするか、配置する場所は真ん中か上下左右どちらか、線は、矢印か点線か、といった表示上の細工は、それぞれの芸術的なセンスにかかっている。

●最後に
2つほど、蛇足を。
一つは、ビジュアル化は、ピンからキリまで巧さに段階がある。ここでの話はすべて、ピンのほうのビジュアル化についてである。
 もうひとつ。今回だけは、あえて、絵や図表などビジュアル化の趣向を入れなかった。いかがであろうか。ビジュアル化に意をくだいたこれまでと比較して、ビジュアル化の威力を感じていただきたい。

わかりにくい表現例

2020-04-17 | わかりやすい表現

0.1 「ヒルキモをピラッコしてください」

    ---専門用語を無造作に使う

0.2 「紙の右隅をちぎってください」

    ---言葉だけに頼りすぎ

0.3 「絵に示す黒い部分を折ってください」 

    ---場所の示しかたかたがへた

0.4 「レバーを引いて椅子を前に倒してドアを外に押してください」

    ---一つの文でたくさんのことを言いすぎる

0.5 「フロッピーをセットしてください」

    ---たくさんのことを一言で言い過ぎる

0.6 「機械を落とすと壊れます」

    ---注意喚起になっていない注意書き

0.7 「エレガントでコンパクト、プロフェッショナルソリューション」

    ---めくらまし表現は無用


心理学者が教える読ませる技術、聞かせる技術」講談社ブルーバックス キャッチコピー

2020-04-16 | わかりやすい表現
心理学者が教える読ませる技術、聞かせる技術」講談社ブルーバックス
キャッチコピー
わかりやすい表現技法とは?
それは、表現する心とわかる心が共振すること。
心理学が挑む認知表現学の世界
文章技法の本ではありません!!
相手の心を動かすわかりやすい表現を提案する本です。
どうしてそう表現すれば、わかってもらえるのか。
認知心理学の知見を総動員して考える!!
表現を通して心が見えてくる。
表現の心がわからずして
表現のエキスパートにはなれない。
書き手と読み手
話し手と聞き手
両者の心が共振するところに
「わかりやすさ」が発生する。
その技術に、心理学をベースに挑戦する。


マニュアルはなぜわかりにくいのか(再掲)

2020-03-14 | わかりやすい表現
01/9/15海保
 マニュアルはなぜわかりにくいのか 200ページ
  ---IT時代のわかりやすさ革命---
  
海保博之著 「くたばれ、マニュアル」
概要*************************************************************** マニュアルがわかりにくいという声は、至る所で耳にする。ときには、「くたばれ、マニュアル」という怨嗟の声さえ聞くこともある。なぜ、こんなことになったのであろうか。コンピュータに、書き手に、表現に、教育に、ユーザ・状況に、そして文化のどこに問題があるのかを考えてみる。
********************************************************************
はじめに 1枚
序章 くたばれ マニュアル  40ページ ワープロ換算で17枚
  
 あなたの怒りをかうであろうマニュアルの事例をいくつか挙げて、その内容を解剖してみる。後に続く章の導入的な役割を果たす内容である。なお、本章の節の小見出しは、ほかの章とは違って、事例そのものを使っている。
0.1 「ヒルキモをピラッコしてください」
    ---専門用語を無造作に使う
0.2 「紙の右隅をちぎってください」
    ---言葉だけに頼りすぎ
0.3 「絵に示す黒い部分を折ってください」 
    ---場所の示しかたかたがへた
0.4 「レバーを引いて椅子を前に倒してドアを外に押してください」
    ---一つの文でたくさんのことを言いすぎる
0.5 「フロッピーをセットしてください」
    ---たくさんのことを一言で言い過ぎる
0.6 「機械を落とすと壊れます」
    ---注意喚起になっていない注意書き
0.7 「エレガントでコンパクト、プロフェッショナルソリューション」
    ---めくらまし表現は無用
0.8 「     」
    ---まちがった文で表現している  文法違反
1章 コンピュータが問題---不自然な操作をさせる
 
1.1 コンピュータのわかりにくさを解剖する
コンピュータの次の4つの特性がわかりにくさを構造的に作り出している。
1)直接性の欠如   操作がただちに仕事の変化とはならない。
           操作が正しいのが間違っているがわからない。
2)同型性の欠如 操作することと仕事との間の関係が同型でない。
3)先取り性  ユーザがするであろうことをあらかじめ取り込んで手順         化しておく。何がどのように取り込まれているかがわか         らない。
4)多機能性  どんな人でも多彩な仕事ができるように、また、仕事のや        り方の多様性に対応できるようにしてある。結局、太郎に        は、選択可能性がわけがわからない。OHP
1.2 操作デザインを軽視する
システムの制作過程で操作デザインが軽視されている
1)システム・デザインと操作デザイン(インタフェース・デザイン)と販売にかかわる人のねらいの間の葛藤が未解決のまま出荷されている。(クーパー*による)OHP
    プログラマは、「what's capable」
 操作デザイナーは,「what's desirable」
 企画マンは,「what's viable(現実的)」
2)操作デザインの軽視
3)操作デザインが製作の下流工程に押しやられる
*アラン・クーパー著 1999 「コンピュータは、むずかしすぎて使えない!」 翔泳(しょうえい)社
1.3 品質評価が難しい
システムの製作後の品質検査が十分ではない
1)ユーザビリティ(使い勝手)のチェックが不十分
・ユーザは異義申し立てて者としては有能。しかし、それだけであってそれ以上ではない。    
2)ハードの品質と違って、ソフトの品質は、チェック規準が不分明。
・ISO13407でも、チェックした、という記録だけでよい。OHP
2章 書き手が問題---よき書き手がいない
2.1 説明力がない 
1)技術の理解力、文や絵による表現力だけでは十分ではない。読み手の状況や知識や読み方に配慮した説明ができる力が必要。OHP
 ・設計者は、論理志向。ユーザはわかりやすさ志向
 ・心理学的素養が説明力のベースに必要
    知識として  
    知的共感能力の開発のため OHP
2)よく知っている人が、必ずしもよく説明できるわけではない
 ・機械・システムの設計者(技術者)は、表現のタレントがないことが多  い。 OHP
 ・知りすぎていると、正確さが気になり、書くことが多くなりがち。
  多く書かれると、読み手にとっては、大事なところが見えなくなり、
  わかりにくいとなりがち。
2.2 TWが育っていない
1)設計者とユーザとをつなぐTWが必要
2)TC技能検定が4年度目をむかえ順調。しかし、TWの人材プールの形成にはまだまだ。
 ・現在、3級合格者が約1000名
 ・2級も2月頃には始まる
3)育てる制度がない
 ・大学でのコースも日本では皆無
   例 カーネギーメロン大学では
       認知科学 レトリック 言語学 人間工学
       グラフィックデザインの分野を組み込んだカリキュラムで
       教育されている。 
 ・木下是雄氏の言語技術研究会の試み 
3章 表現が問題---説明力がない
3.1 操作説明は難しい
言葉や絵で操作を表現することには、構造的な難しさがある
1)実際の操作には自由度に幅がある
  ・操作デザインで解決できないところがマニュアルに押しつけられる。
  ・理屈/意味のない決まりに従わせるのがマニュアル??
2)現実の操作はアナログ的だが、表現はデジタルなため、齟齬がでてくる
  ・ビジュアル表現を多用しても限界がある
  ・VTRマニュアルが有効だが、参照性や伝達力に問題がある。
3.2 日本語が不適切
日本語表現の中に、わかりにくい表現を作り出す原因の一端がある
1)用語に馴染みのないものが安易に使われる。
  ・機能名称が不適切。
  ・初心者には、カタカナ用語、漢語が理解のバリアーになる。
    例「クリアーする」「起動する」「領域指定をする」といった表現      ができてしまうことが問題
2)日本語文章技法が守られていない。OHP
3.3 わかりやすくする工夫がなされていない
1)技術の民主化により、ターゲット層が絞りにくくなった。
  ・誰にもわかりやすくが、誰にもわかりにくく OHP
  ・山田太郎さんをターゲットとして表現することのリスクが大きい
1)内容の精選と取捨選択が不十分
  ・ユーザの知識とマニュアルを読む状況への配慮がなされていない
  ・正確さ志向から過剰な情報提供になりがち
2)表現にわかりやすさの作り込みが不十分 
  ・操作の手順説明のみに限定
  ・機能の記述ばかりで、仕事の目標達成の記述をしない
    例 機能の記述 「ストップ」は-----ときに使う
      仕事の記述 テープを止めたいときは、「ストップ」を押す
  ・解説的要素が少ない
  ・減り張り表現をしない
-----------------------
操作ができるマニュアル
情報を探したくなるマニュアル
わかるマニュアル
読みたくなるマニュアル
覚えたくなるマニュアル
----------------------
  
4章 義務教育が問題---必要な教育がなされていない
4.1 情報活用能力の育成が遅れている
情報活用能力の育成が教育目標の一つになっているが、教育界でのイ   ンフラ整備が遅れている。
1)学校教育がまだまだ不十分
 ・情報基礎の単元が、中学「技術科」に用意された。
 ・情報活用能力の育成が教育目標として登場してきた。OHP
2)インフラ整備がやっと緒についた
4.2 理系・文系の分離が問題
理系、文系の早期分離教育が技術との付き合い方に2極分解を起こさ   せてしまった。
 ・ユーザ教育という点でも、技術者教育という点でも問題。
 ・現実社会は、文系も理系もない。
 ・ただ、性格特性としての理系的性格-文系的性格はありそう。ただし、
  役割性格か、社会化された性格かもしれない。
4.3 国語教育を改善する
1)作家、詩人養成がねらいのごときカリキュラム
2)説明文教育が手薄 
5章 ユーザ・状況が問題---知識不足と読む状況が悪い
5.1 高度技術の民主化が速すぎる
コンピュータ技術の民主化の速度がはやく、新規参入のユーザが急速   に増えてきた。
1)関連知識がない
  ・操作(手続き的知識)もまったく新しいものが必要
     例 タイピング クリック&ペースト
2)複雑化隠しのインタフェース技術である、コンピュータ内部への関心を削いでしまった。
  例 ブラックボックス化、グラス・ボックス化 OHP
5.2 頭の悪い自分が問題と考えてしまうのが問題
わからない自分が悪いと思いがちな日本人心性がマニュアルから遠    ざける。
 ・わからない事態に直面すると
    逃避---状況から逃げてしまう
    認知志向---頭が悪い
    状況志向---状況のほうが悪い
    攻撃---状況を攻撃する(クレーム)
5.3 じっくりマニュアルを読んでいられない
マニュアルを読む状況が悪い
1)機械を早く使いたいのに、あれこれ事前準備を要求される。
2)わからないことだけを知りたいという切迫した状況でマニュアルを読まざるをえない。
3)読み物としておもしろくない。
6章 マニュアル文化が問題---マニュアルを軽視する 
6.1 マニュアル文化が育っていない
ドキュメントとしてのマニュアルの背景にはマニュアル文化が必要
1)決まり通りに動くことの大切さの認識
2)したがって、決まりを明示したドキュメントはきちんと読む
6.2 マニュアルより自分でが問題
日本の組織は、暗黙知とハイ・コンテキスト(状況規定性が高い)で   動くのでマニュアル不要 OHP
1)長期間のOJTで学べ
2)明示的な知識の典型であるドキュメントとしてのマニュアルが育たない
6.3 育つかマニュアル文化
マクドナルドにみられるマニュアル文化の浸透
1)即戦力が必要になり、仕事のマニュアル化が必須
2)「マニュアル通りに」が一義的な重要性を持つようになってきつつある
終章 マニュアルでドキュメント・リテラシーを身につけ   る
8.1 コンピュータは怖くない
   コンピュータ不安テスト
8.2 知識は至る所に
8.3 マニュアルから学べること
おわりに 

ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り」旧原稿

2019-10-27 | わかりやすい表現


       ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り
             ----認知心理学からの提案----

             海保博之(筑波大学心理学系)

「概要」                                    
 ヒューマンエラーを防ぐための仕掛けの一つとして、マニュアル(仕事の手順書)を位置づけたとき、マニュアル作りではどんなことに配慮すればよいかを考えてみる。まず、ヒューマンエラーを、「使命ー”計画・実行・評価サイクル”」の枠組で分類して、それぞれのエラーを防ぐためのマニュアル作りの指針を、認知心理学の立場から提案してみる。    

はじめに----マニュアルの5つの役割
 マニュアルには、仕事の手順書と、道具・器械の取扱説明書とがある。いずれも、次の5つの支援機能がある。なお、本講演では、手順書の意味である。

○操作支援 決められた操作が確実にできるようにする
○参照支援 必要な情報がどこにあるかを示す
○理解支援 操作の意味や目的がわかるようにする
○動機づけ支援 マニュアルを読んでみたいと思わせる
○学習・記憶支援 必要なことを覚えてもらったり、学んでもらう

第1 使命ー「計画・実行・評価のサイクル」の枠組で多彩な
   ヒューマンエラーを分類する

○やってはいけないことをしてしまう
 「使命の取り違えエラー」
  例 ノルマを達成するために手順を無視して効率化をはかってひやり
○勝手な思い込みをしてしまう
 「思い込みエラー(ミステイク)」
  例 モニターの警報が鳴った。いつも
    の警報の不具合と思い込んでいつ
    もの操作をしたが、圧力が限界点
    に達してしまいひやり。
○やるべきことをしない/余計なことをしてしまう
 「うっかりミス」
  例 同僚と話をしながら、機械操作を
    していたら、あやうく機械に巻き
    込まれそうになった。
○やるべきこと/やったことを確認しない
 「確認ミス」
  例 確認「行為」はしたものの、きちんとしなかったために、工具を置き忘れ
    てしまいひやり。

第2 使命の取り違えをさせないためのマニュアル作り
 人はエラー、事故を起こさないことを目標に生きているわけではない。安全という制約(上位の使命)の中で仕事上の目標を達成することになる。ところが、しばしば、仕事上の目標が安全の制約をはみ出てしまったり、両者が葛藤したりすることがある。それが事故を発生させることにもなる。
指針2-1「使命(mission)を明確に書く」
指針2-2「そうする(how)のはなぜ(why)を書
     く」
* 慣れると、whyは意識から消えてしまい
 がち
   例 T社のミッション・ステートメントの例 
        ***ppt 未決
指針2-3「適度の具体表現で書く」
   例 「安全第一」では抽象的、「手順書通りに」
指針2-4「目標の葛藤の発生を防ぐために、安全の下に仕事のミッションを書く」
   例 「速く、確実に」は危険

第3 思い込みエラーをさせないためのマニュアル作り
 状況の中にある顕著な手がかりだけに基づいて、その時その場で活性化している知識だけが使われてしまい、思い込みエラーを起こさせることがある。          とりわけ、即応を要求されたり、状況の激変のために、何が何やらわけがわからなくなってしまうような事態では、その時その場で目立つ限定された手がかりだけに基づいて駆動された知識だけを使って状況の解釈モデル(メンタルモデル)を構築しがちである。それが状況とのかかわりにふさわしくないとき思いこみエラーとなる。

指針3-1「目標をわかりやすく先に書く」
 例 大文字のTを逆さまに描いて、その上に三角形を描く」
指針3-2「妥当な状況認識を支援する書き方をする」
 例 こういう時は(what)、こういうことだから(why)、こうする(how)

第4 うっかりミスをさせないためのマニュアル作り
 うっかりミスのほとんどは、注意管理不全から起こる。人の注意資源には限界があるからである。また、注意資源の活用の仕方も、いつも適切であるとは限らないからである。注意管理のくせを知った上での最適化が必要となる。

指針4-1「マクロ化表現に注意」
 例「フロッピーをセットしてください」はだめ
指針4-2「1文1動作で書く」
 
指針4-3「操作の説明はビジュアル表現を使う」
 実習 紙を切る
指針4-4「予想される危険、エラーは、あらかじめ書き、かつ、起こりそうなところにも書く」

第5 確認ミスをさせないためのマニュアル作り
 エラーをおかすのは人間である限りしかたがない。とすれば、エラーをしたかどうかを確認して、事故につながらないようにすればよいということになります。
 ところが困ったことに、確認という行為にも
○確認行為そのものを忘れる。とりわけ、確認行為が習慣化してしまっているときが怖い。ストーブの火を消したかどうかなどのように、実際にやったこととやったつもりとの区別ができなくなる(現実モニタリングの混乱)ことがある。
○確認そのものにミスが起こる
となると、確認忘れ、確認ミスは起こるという前提で、うっかりミスとおなじような仕掛けを作り込んでおくことをまず考えておく必要がある。

指針5-1「操作の結果を示す」
指針5-2「確認行為も、手順の一つに入れる」
 例「指さし呼称で確認すること」
指針5-3「参照しやすくする」
例「目次、索引を充実させる」
 「本文中でも、メリハリをつける」

おわりに----マニュアルの理解支援機能を強化する

 エラーを防ぐには、マニュアル通りにすることが最低限の要件となる。しかし、現実世界では、想定外の事が起こる。そのとき、「マニュアル通り」に固執すると、事態をさらに悪化させてしまうことがある。
 それを防ぐためには、マニュアルに理解支援機能を作り込むことである。
 ・「いかに」に加えて、「なぜ」を書き込む
 ・知識の高度化をうながす情報を書き込む  
 さらに、「想定外」を減らすための努力も必要となる。
・ ベテラン、エキスパートがもっている暗黙
 の知識を可能な限り形式知化する
 ・マニュアルは現場で作る

海保のマニュアル関係の参考書

1) 海保博之 2002「くたばれ、マニュアル! 書き手の錯覚、読み手の癇癪」新曜社
2)海保博之ら 1987「ユーザ・読み手の心をつかむ マニュアルの書き方」共立出版

海保のヒューマンエラー関係の参考書
1)海保博之・田辺文也 1996 「ワードマップ ヒューマン・エラー---誤りからみる人と社会の深層」新曜社 1900円  
2)海保博之 1999 「人はなぜ誤るのか---ヒューマンエラーの光と影」  福村出版 1800円
3)海保博之 2001 「失敗を”まあいいか”とする心の訓練」小学館文庫 500円
4)海保博之 ○2002年1月より8回連続 「ヒューマンエラー防止のための心理安全工学」 「働く人の安全と健康」に所収 中央労働災害防止協会
○2003年1月より「ヒヤリハットの心理学」を「安全衛生のひろば」(中災防)に連載





「会話力をつける」10年前の今日の記事

2019-10-10 | わかりやすい表現

「会話力をつける」

●会話にも公準がある
たかが会話であるが、されど会話である。グライスという言語学者が、かつて会話が成立するための公準を提案したことがある。
1)適度の情報量
会話では、必要とされている情報よりも、多すぎて少なすぎて、よくない
2)真実性
ことわりのない限り、あるいは自明でない限り(自明なら嘘は一つの修辞表現)嘘を言わない
3)一貫性
会話の流れに関連したことを言う
4)明瞭性
簡潔にはっきりと話す

いずれも至極当たり前の公準であるが、それだけになるほどというところはある。この公準を踏まえて、会話をより効果的なものにするための考えどころをいくつか提案してみたい。

●言葉のキャッチボールをする
 誰と会話するにしろ、会話は、言葉のキャッチボールというくらい、思いや感情が相手との間で頻繁にいったりきたりするのが特徴である。
 ところが、時にはピッチャーが投げキャッチャーがとる関係になってしまう会話もある。
 電車で遭遇した光景。3人の中年女性が賑やかに会話しているのだが、真ん中の女性がひたすらしゃべり、左隣の女性がもっぱら聞き役。右隣の女性は我関せず。これが下車するまで30分も続いた。こうなると会話を装った演説である。
会話を分析するときの一つの指標に、ターンテーキング(turn taking)というのがある。
会話のキャッチボールが何回行われたかを数えるのである。それくらい、会話には、相手とのやりとりが大事ということである。

●会話の癒しの機能を活用する
前述の3人の女性の会話場面で、ひたすら話していた方は、話すことで自分のストレス解消をしていたのかもしれない。
会話の基本からははずれるが、会話には、話すことでうっぷんがはらせる、という癒しの機能もある。「ものを言わぬは腹ふくれる業なり」である。カウンセリングはここに注目する。第2回を参照されたい。

●会話の知的機能を活用する
会話にはさらに大事な機能がある。それは、情報を収集したり、相手に情報を提供したりする知的な機能である。
今はコンピュータの検索機能やメールが、かつては会話でしていたことのかなりの部分を代替するようにはなっている。それでも、対面会話のメリットは捨てがたい。
メリットその1は、会話では、情報のその人なりの評価、それも明示的な評価だけでなく、その情報を言ったり聴いたりした時の表情や声の調子などの言外の評価情報が生のまま得られることである。
メリットその2は、会話での知的触発である。会話の最中に、突然、何かを思いついたという経験はないであろうか。あるいは、会話内容を後で思い出して、「そうだ!そう言えば」といったことはなかったであろうか。
相手のちょっとした言動がそうしたことのきっかけになっているのである。

●表情と視線は、会話の潤滑油
対面会話では、言葉以外の情報も否応なしに相手に伝わる。なかでも、表情・ジェスチャーと視線の役割は重要である。
相手のにこやかな表情は、相手の話を促すし、不機嫌な表情は、会話を抑制する。さらに、相手の話に同意、不同意も表情やジェスチャーで即座にフィードバックできる。
 また視線は、主に会話でのターンテーキングの調整をしていることが知られている。自分が話す時には相手から視線を避け、終える時は次はあなたの番とばかり相手を見る。
表情・ジェスチャーと視線はいずれも、あまり意識的にコントロールされていないのが特徴である。それだけに、本音が出る。意識的なコントロールのもとにある言語情報との整合性が問われることになる。「2重拘束」というおもしろい概念がベイトソンによって提案されたことがある。口で言うことと本音とのずれが相手に困惑を与えることである。
たとえば、母親が子供に向けて「おりこうさんね」と口では言いながら、TVに夢中になっているような光景である。
 表情・ジェスチャー、そして視線がこんな大切な役割を果たしていることを知れば、いくばくかの努力を意識的にしてみてもよい。最初はぎこちないかもしれないが、次第に会得できるようになるであろう。

名言効果

2019-09-22 | わかりやすい表現
名言効果
 格言、箴言など含めて名言の話です。言葉がその力をいかんなく発揮することを実感できる象徴的な使い方ですね。
 自分は名言が大好きです。
 自分の著書にも実によく活用しました。章扉にその章に関連した名言、本文の随所に内容に関連した名言を入れました。
そこでは、どういう効果をねらったかというと、一つは、補強効果です。自説を補強してもらうために名言を使うのです。とりわけ、有名な哲学者や経営者の名言は、効果的です。この場合は、さらに自説の権威づけ効果もねらっています。
2つは、要約効果です。章扉に掲載する名言では、その章を一言で要約する、そして、記憶に残してもらうのです。これは、引用よりも、自分で考えた名言?もあります。
3つは、メリハリ効果です。話が平板になってしまったときに、名言を入れると、引き締まります。
これほどあれこれ効果のある名言。
心元気にするために使わない手はありません。



心理学者が教える読ませる技術、聞かせる技術」講談社ブルーバックス

2019-09-07 | わかりやすい表現
心理学者が教える読ませる技術、聞かせる技術」講談社ブルーバックス
キャッチコピー

わかりやすい表現技法とは?
それは、表現する心とわかる心が共振すること。
心理学が挑む認知表現学の世界

文章技法の本ではありません!!
相手の心を動かすわかりやすい表現を提案する本です。

どうしてそう表現すれば、わかってもらえるのか。
認知心理学の知見を総動員して考える!!

表現を通して心が見えてくる。

表現の心がわからずして
表現のエキスパートにはなれない。

書き手と読み手
話し手と聞き手
両者の心が共振するところに
「わかりやすさ」が発生する。
その技術に、心理学をベースに挑戦する。

@@@@
アマゾン 2019.9.7

おすすめ度: 5つ星のうち 2.8 4件のカスタマーレビュー
Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 217,684位 (本の売れ筋ランキングを見る)
643位 ─ ブルーバックス
468位 ─ 論文作法・文章技術
5820位 ─ 心理学入門

説明力―――わかりやすく説得的に説明する

2019-09-01 | わかりやすい表現

説明力―――わかりやすく説得的に説明する


●日本人の恐縮好き
 次のようなまくら言葉を耳にしたことはないであろうか。
 ・卑近な例で恐縮ですが、--- (具体例を使う)
 ・たとえで恐縮ですが、----  (比喩を使う)
 ・独断と偏見で恐縮ですが、---- (自分なりの意見を言う)
 ・いきなり結論で恐縮ですが、---- (大事なことを先に言う)
 いずれも、説明効果を高めるためには必須といってもよい趣向なのだが、どういうわけか、日本人はそんな趣向を使うときに恐縮してしまう。多分、「わかりやすく話さなくと、聡明なあなたならおわかりだと思いますが、念のため」ということであろうが、そんなまくら言葉を言う時間のほうを節約してほしい。
 グローバル化が進む昨今、表現文化の問題といって片づけてしまうわけにはいかない。我彼の説明力ギャップが厳しく問われる時代になってきている。
 
●わかりやすく説明する
 説明はわかりやすいことがまず大切である。
 そのための基本は、説明したいことの精選である。言いたいことが10あっても、それを3つくらいに圧縮したり、とりあえず大事ではない7つを切り捨てることができないと、わかりやすい説明にはならない。
 その上で、結論や言いたいことの概要を先に示すようにして、相手がこちらの話の受け皿を作れるように支援してやる。
 いつまでも結論を言わないのは、相手をいらいらさせる。概要がないと、今の話しが全体のどこかがわからない不安を与えることになる。
 そして、説明内容は、減り張りをつけて表現する。
 ・一つは----、2つは---、
 ・大事なことは、----
といった類の言い回しに加えて、パネルに要点を書いたり図解して見せるなどの工夫をする。
 最後にもう一度、結論を手短に言う。
 こんなことを実践的に学ぶには、ニュース番組などのコメンテータの説明の仕方を参考にするとよい。短時間でポイントをずばり表現するあの説明の仕方である。パネルや図解も、実に巧みで学ぶべき点が多い。
 
●説明力は相手があってのもの
 やや雑に説明をわかりやすくするための趣向を述べてみた。しかし、説明は相手があっての話である。相手意識を欠いた独り善がりの説明は、闇夜に放つ矢のようなものである。どれほどの趣向を凝らしてみてもむなしい。
 相手が何を求めているのか、どんな知識を持っているのか、どんな状況に置かれているのかに思いをはせる習慣が、真の説明力を養うことになる。
 相手が関連知識が豊富であなたの言うことに強い関心をもっているなら、説明のための工夫より、説明の内容のほうに集中すればよい。
 しかし、相手がその逆のような人々ばかりであることが想定されるときには、説明の仕方のほうを工夫しないと悲惨な結果に終る。

●ときには説得的に説明する
 説明と説得とは違う。 言いたいことを相手に伝えるのが説明、相手を自分の思い通りにするのが説得である。教師は子どもに説明する、営業マンは顧客を説得することになる。
 しかし、説明と説得の境界は微妙である。時には、説得の技法を説明の中に取り込むこともあってよい。
 説得表現で最も大切なことは、相手を説得するに足る自己主張の内容があることである。これがないと、どれほど趣向を凝らしても、それは騙しや空虚な演説になってしまう。
 わかりやすさが説得の前提となるが、口頭による説得のためには、声の調子や手振り身振りや顔の表情などのパラ言語も大事になってくる。さらに、OHPやパワーポイントのようなプレゼンテーション用具の使用も効果的である。
 文書による説得表現を実践的に学ぶには、広告宣伝で使われているさまざまな趣向も参考になる。

なぜ、人は、マニュアルがわかりにくいと言うのか」20年前の原稿

2019-08-26 | わかりやすい表現
00/11/3海保 00/11/18 わかりやすいマニュアルを考える会 講演要旨

   なぜ、人は、マニュアルがわかりにくいと言うのか

   

概要*************************************************************** マニュアルがわかりにくいという声は、至る所で耳にする。ときには、「くたばれ、マニュアル」という怨嗟の声さえ聞くこともある。なぜ、こんなことになったのであろうか。コンピュータに、書き手に、表現に、教育に、ユーザ・状況に、そして文化のどこに問題があるのかを考えてみる。
********************************************************************

第1 コンピュータが問題
 
●コンピュータの次の4つの特性がわかりにくさを構造的に作り出している。
OHP
1)直接性の欠如   操作がただちに仕事の変化とはならない。
           操作が正しいのが間違っているがわからない。
2)同型性の欠如 操作することと仕事との間の関係が同型でない。
3)先取り性  ユーザがするであろうことをあらかじめ取り込んで手順         化しておく。何がどのように取り込まれているかがわからない。
4)多機能性  どんな人でも多彩な仕事ができるように、また、仕事のや        り方の多様性に対応できるようにしてある。結局、太郎に        は、選択可能性がわけがわからない。OHP

●システムの制作過程で操作デザインが軽視されている

1)システム・デザインと操作デザイン(インタフェース・デザイン)と販売にかかわる人のねらいの間の葛藤が未解決のまま出荷されている。(クーパー*による)OHP
    プログラマは、「what's capable」
 操作デザイナーは,「what's desirable」
 企画マンは,「what's viable(現実的)」
2)操作デザインの軽視
3)操作デザインが製作の下流工程に押しやられる

*アラン・クーパー著 1999 「コンピュータは、むずかしすぎて使えない!」 翔泳(しょうえい)社

●システムの製作後の品質検査が十分ではない

1)ユーザビリティ(使い勝手)のチェックが不十分
・ユーザは異義申し立てて者としては有能。しかし、それだけであってそれ以上ではない。    
2)ハードの品質と違って、ソフトの品質は、チェック規準が不分明。
・ISO13407でも、チェックした、という記録だけでよい。OHP


第2 書き手が問題

●説明力がない 

1)技術の理解力、文や絵による表現力だけでは十分ではない。読み手の状況や知識や読み方に配慮した説明ができる力が必要。OHP
 ・設計者は、論理志向。ユーザはわかりやすさ志向
 ・心理学的素養が説明力のベースに必要
    知識として  
    知的共感能力の開発のため OHP
2)よく知っている人が、必ずしもよく説明できるわけではない
 ・機械・システムの設計者(技術者)は、表現のタレントがないことが多  い。 OHP
 ・知りすぎていると、正確さが気になり、書くことが多くなりがち。
  多く書かれると、読み手にとっては、大事なところが見えなくなり、
  わかりにくいとなりがち。

●TWが育っていない

1)設計者とユーザとをつなぐTWが必要
2)TC技能検定が4年度目をむかえ順調。しかし、TWの人材プールの形成にはまだまだ。
 ・現在、3級合格者が約1000名
 ・2級も2月頃には始まる
3)育てる制度がない
 ・大学でのコースも日本では皆無
   例 カーネギーメロン大学では
       認知科学 レトリック 言語学 人間工学
       グラフィックデザインの分野を組み込んだカリキュラムで
       教育されている。 OHP
 ・木下是雄氏の言語技術研究会の試み OHP

第3 表現が問題
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クイズ 次の表現は何を問題にしている表現か?
1.1 「ヒルキモをピラッコしてください」
1.2 「紙の右隅をちぎってください」
1.3 「絵に示す黒い部分を折ってください」 
1.4 「レバーを引いて椅子を前に倒してドアを外に押してください」
1.5 「フロッピーをセットしてください」
1.6 「機械を落とすと壊れます」
1.7 「エレガントでコンパクト、プロフェッショナルソリューション」
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●言葉や絵で操作を表現することには、構造的な難しさがある

1)実際の操作には自由度に幅がある
  ・操作デザインで解決できないところがマニュアルに押しつけられる。
  ・理屈/意味のない決まりに従わせるのがマニュアル??
2)現実の操作はアナログ的だが、表現はデジタルなため、齟齬がでてくる
  ・ビジュアル表現を多用しても限界がある
  ・VTRマニュアルが有効だが、参照性や伝達力に問題がある。

●日本語表現の中に、わかりにくい表現を作り出す原因の一端がある

1)用語に馴染みのないものが安易に使われる。
  ・機能名称が不適切。OHP
  ・初心者には、カタカナ用語、漢語が理解のバリアーになる。
    例「クリアーする」「起動する」「領域指定をする」といった表現      ができてしまうことが問題
2)日本語文章技法が守られていない。OHP

●わかりやすくする工夫がなされていない。

1)技術の民主化により、ターゲット層が絞りにくくなった。
  ・誰にもわかりやすくが、誰にもわかりにくく OHP
  ・山田太郎さんをターゲットとして表現することのリスクが大きい
1)内容の精選と取捨選択が不十分
  ・ユーザの知識とマニュアルを読む状況への配慮がなされていない
  ・正確さ志向から過剰な情報提供になりがち
2)表現にわかりやすさの作り込みが不十分 
  ・操作の手順説明のみに限定
  ・機能の記述ばかりで、仕事の目標達成の記述をしない
    例 機能の記述 「ストップ」は-----ときに使う
      仕事の記述 テープを止めたいときは、「ストップ」を押す
  ・解説的要素が少ない
  ・減り張り表現をしない
     
第4 義務教育が問題

●情報活用能力の育成が教育目標の一つになっているが、教育界でのインフラ整備が遅れている。

1)学校教育がまだまだ不十分
 ・情報基礎の単元が、中学「技術科」に用意された。
 ・情報活用能力の育成が教育目標として登場してきた。OHP
2)インフラ整備がやっと緒についた

●理系、文系の早期分離教育が技術との付き合い方に2極分解を起こさせてしまった。
 ・ユーザ教育という点でも、技術者教育という点でも問題。
 ・現実社会は、文系も理系もない。
 ・ただ、性格特性としての理系的性格-文系的性格はありそう。ただし、
  役割性格か、社会化された性格かもしれない。

●国語教育は、「文系」教師が独占

1)作家、詩人養成がねらいのごときカリキュラム
2)説明文教育が手薄 
第5 ユーザ・状況が問題

●コンピュータ技術の民主化の速度がはやく、新規参入のユーザが急速に増えてきた。

1)関連知識がない
  ・操作(手続き的知識)もまったく新しいものが必要
     例 タイピング クリック&ペースト
2)複雑化隠しのインタフェース技術である、コンピュータ内部への関心を削いでしまった。
  例 ブラックボックス化、グラス・ボックス化 OHP

●わからない自分が悪いと思いがちな日本人心性がマニュアルから遠ざける。
 ・わからない事態に直面すると
    逃避---状況から逃げてしまう
    認知志向---頭が悪い
    状況志向---状況のほうが悪い
    攻撃---状況を攻撃する(クレーム)

●マニュアルを読む状況が悪い
1)機械を早く使いたいのに、あれこれ事前準備を要求される。
2)わからないことだけを知りたいという切迫した状況でマニュアルを読まざるをえない。
3)読み物としておもしろくない。

第7 マニュアル文化が問題 

●ドキュメントとしてのマニュアルの背景にはマニュアル文化が必要
1)決まり通りに動くことの大切さの認識
2)したがって、決まりを明示したドキュメントはきちんと読む

●日本の組織は、暗黙知とハイ・コンテキスト(状況規定性が高い)で動くのでマニュアル不要 
1)長期間のOJTで学べ
2)明示的な知識の典型であるドキュメントとしてのマニュアルが育たない

●マクドナルドにみられるマニュアル文化の浸透
1)即戦力が必要になり、仕事のマニュアル化が必須
2)「マニュアル通りに」が一義的な重要性を持つようになってきつつある

第8 まとめとこれからの展望

●マニュアル問題を広い射程でとらえることで、社会的なインパクトのあるパワーが発揮できる。

●「わかりやすさ工学」の構築をめざすことで、ノウハウの蓄積と普及をはかる。




コミュニケーションは愛である

2019-08-24 | わかりやすい表現
●コミュニケーションは愛である

 どこかの広告コピーのような、歯の浮くようなタイトルである。しかし、子供を慈しむ母子のコミュニケーションをみてもわかるように、コミュニケーションとは、上手に話せるとか相手の気持ちがわかると言ったようなスキルの根底に相手への愛がなくてはならない。
 とりわけ、家庭や教室のように、四六時中顔を合わせている環境では、愛さえあれば、すべてが解決するとまで言ってもよいようなところがある。
 見せ掛けの愛情はたちどころにばれる。相手をたちまち2重拘束状態に追い込んでしまう。

post-presentation-depression」10年前の今日の記事

2019-08-19 | わかりやすい表現

大学HP用に「心を元気にする習慣づくり」の動画を収録している
これがうまくいかない
終わると、ひどく落ち込む
昔、TV出演したことが何度かあるが、そのときも同じ
あるいは、講演などでもしばしばある
post-presentation-depressionというらしい
一回こっきり、やり直し、訂正がきかないプレゼンのときに発生する

これへの消極的な対処は、出来たものを見ないこと
ご丁寧に、DVDにとってくれて「はい」といって持ってきてくれる人がいる

うれしいのは、嘘でもいいから、すばらしかった とほめてくれること
間違っても、あそこはおかしいとか、こうすればよかったというアドバイスは
ご勘弁
だって、もうみっともないところをみられちゃったのだからどうしようもない

あー、やめておけばよかった
今でもやめることはできるのだが、
せっかく撮影につきあってくれた人がいるしなー
後5回分ある

このとしになっても、まだ懲りない
まだまだ死ねないなー
エリクソンの「統合」段階はまださま先のようだ

わかりにくさ耐性も大事

2019-08-17 | わかりやすい表現



●わかりにくさ耐性も大事
わかりやすさをコミュニケーションのなかに作り込めば、受け手が情報を取り込むために使う頭の努力は軽減される。
寝転んで聞いていて/みていても、わかるように作るというわけである。

しかし、そういうわかりやすいコミュニケーション状況に慣れてしまうこと
がいかに教育的でないかにも思いをはせなければならない。
とりわけ、子どもにとって、わからないことは受け付けないという学びの習慣ができてしまうのは好ましくない。

では、その趣向とは、どんなものか。具体的なものはスペースの関係で省くが、心がけとしては、次の3つが必要だと思う。

まずは、なんとしても、わからせたいとの強い思いが必要。
そこには、それが子どもにとって大事なことという暗黙のメッセージも含まれるからである。

2つには、子どもの頭の働きと知識への配慮が必要。
子どものもっている既有の知識を活用できる情報を手がかりに新しいことを教えるのである。たとえや具体例が大事になる。
 
3つ目は、教えすぎない、与えすぎない抑制が必要。
知っていることすべてを教えたい、与えたいとの気持ちは、子どもにとっては重荷になる。少しずつ小出しにするくらいの気持ちがあってちょうど良い。