格別珍しくなくても、分布地が限られている植物の花時にぴったり会えるのはなかなか難しいものです
谷筋や崩壊地、やせ地などに多いフサザクラ:房桜・総桜(フサザクラ科フサザクラ属)などもそんな一つです。
何年か前に、秋、翼果(袋果をつけた木を見つけておいて、翌春わざわざ貴船の奥まで見に行ったのに、わずかなことで花の盛りが過ぎていたということもありました。(‘10年4月17日記事)
今回たまたま出会えたフサザクラは幸運にもちょうど花のさかりでした。3月下旬~4月、花の展開に先立って開花します。短枝の先に5~12個の花が集まってつく花には花弁や萼がなく、垂れ下がった雄蕊がよく目立ちます。花糸は白い糸状で、垂れ下がった暗紅色の葯の先端には葯隔が突出して見えます。花糸の基部にある淡緑色の雌蕊は多数で、柄があり柱頭は広がります。
和名の房桜・総桜は花のつき方からきているといいますが、およそサクラには似ない地味な花といえます。実際に、サクラとは全く関係なく、むしろ花の様子がよく似るヤマグルマやカツラと類縁関係があるといわれています。
崩壊地などにいち早く進出するパイオニア植物の一つで、地崩れなどで横倒しになっても、すぐに垂直になる枝をだすなどして個体を維持し続けます。
谷地に多く葉がクワに似ているのでタニグワの名もあります。